21日目 ダメ医者と犠牲の子供
俺は、二階堂の事を考えていた。
それは、別にアイツの事が好きとかじゃない。
正直に言って、人としてもどうかと思ってる。
それより、今日起きてみたら。
何だか、杪夏の様子が可笑しかった。
何処か、不安がっているような震えてるような。
とりあえず、聞くしかない。
「四季さん? どうしたの」
「斎藤君……私……正直……怖い……」
その顔は、何かを恐れている。
俺は、何とかその不安を和らげようとする。
「俺は、杪夏と一緒にいる! 約束する! どんな事があっても!」
杪夏は、泣き出して俺のベッドの方にいき。
俺の腕に、自分の腕を絡める。
「本当に……絶対よ……私も、創の事を話さないから」
俺は、ようやく名前で呼ばれた嬉しさと。
杪夏が、怖がってる姿を見て悲しくなっていくのが、重なっていき複雑な気持ちになる。
その後は、一時間くらいして手を握る。
その、手と手の感触は何だか柔らかかった。
俺は、女の子と初めてふれあい何だか喜ばしいのか、照れ臭いのかよく分からなかった。
だけど、杪夏はいまだに震えていた。
それは、何となく想像はつくが。
自分が、死に近づいている恐怖だろう。
それと……
「大丈夫? 杪夏?」
「ごめんなさい……私怖くて……何でか知らないけど……怖くて」
俺は、杪夏の肩を優しく右手で包む。
杪夏は、安心したのか震えが止まった。
だけど、杪夏の事がどうにかなったわけではない。
だから、俺はこれからも杪夏と決して離れないと誓う。
それが、どんな事を起きて辛かろうと。
暫くたち、大して美味しくない病室食を食べる。
杪夏は、何故か俺のベッドにいて食器を持ってきて食べる。
ずっと、笑って俺の顔を見て。
何だか、別の意味でご飯を食べたくないな。
杪夏といると、やはり緊張する。
看護師のお姉さんは、何だか俺を睨んでくる。
「というか。斎藤君! なんで……杪夏ちゃんとくっついて食べてるの? やめなさい……見てて腹が立つ!」
何で、そんなことで怒るのか分からなかった。
だって、あんたデートすることになったんじゃないの。
何に対して、怒ってんだよ。
わかんねぇよ。
「まあ! まあ! いいじゃない別に~若いから仕方がないのよ!」
それも、別にホローではないからな。
余計に、恥ずかしいし気まずいわ。
だが、俺は杪夏に対してそんな事を言うのはしなかった。
だって、杪夏の事が大好きだから出来ないんだよな。
「それより、今日一人……入院してた子が死んだの……二階堂先生は、失敗したのよ……」
やはり、こうなるとは思っていた。
だって、あの二階堂とか言う医者はただの自信家で実力は大してはない。
それどころか、二階堂とか言うのはどうしようもない性格で、自分の恋人が自分の手で手術して殺しても、何とも思わないからな。
それを聞いた、杪夏はずっと震えていた。
「死んだ子の名前は……
「……菊ちゃん……うう……どうして……」
杪夏は、泣いていた。
どうやら、杪夏と親しくしていた子の一人るしい。
俺は、どうにも杪夏を慰めることは出来なかった。
だけど、俺は二階堂が許せない。
あのボンボン、看護師達の話を盗みぎきしたのだが、この病院のお偉いさんの息子だった為か。
たとえ、手術が失敗しても揉み消されていたみたいだ。
それは、悪どい大人の手口で。
俺はひたすら、怒りがこみ上げてくる。
「……私……うう……菊ちゃんとは、一番仲良くしてもらったの……最初、入院したとき……それからも、私のところにきてくれたわ……だから! 死んでほしくなかったわ! それに、これ以上仲良くしてくれた子供達が。死んでいくのを見たくない! 私は、また一人なっちゃうじゃない……うう……」
「俺がいる! だから、泣かないでくれ! 杪夏と絶対に一緒にいるから! たとえ、杪夏が誰からも相手にされなくても! 俺が、ずっといてやる! だから、一人じゃない!!」
杪夏は、何だか落ち込んでいたが。
俺が、抱き締めて何とか正気に戻った。
その後、菊ちゃんのお母さんと霊安室にいき俺と杪夏は、手をあわせる。
だけど、菊ちゃんのお母さんは泣いていた。
その泣きかたは、尋常じゃないほどだった。
「すみません! 今回は、失敗しました! 申し訳ない」
そんな、二階堂の顔を見て腹が立った俺はつい、思っていたことを言ってしまう。
「あんたのせいだ……また……あんたのせいで……人が死んだ!! 責任とれよ!! 二階堂!! お前さえいなければ……こんなことに、ならない……」
俺は、拳を握りしめて二階堂を殴ろうと構える。
「はあ! きみみたいな、人間は暴力をして物事を解決できると思ってる! そんな、甘い考えでは何も解決できない。ふん! 下らない……僕は、部屋に帰らせてもらうよ」
「おい! ふざけるな!! 謝れよ!! お前が、失敗したせいで。この子は死んだ! それでも、プロの医者かよ!」
俺は、看護師達に腕を抑えられて二階堂を殴れなかった。
「本当に君は……子供だね……」
そう言って、立ち去る二階堂の姿は偉そうに自分が物事を知っているような態度だった。
本当に、二階堂だけはムカつく。
腸が煮えくり返るぐらい。
もしも、杪夏を手術して失敗したら。
俺は、二階堂を絶対に許せないと思う。
そして、夜になり泣いている杪夏を慰めながら俺は一緒に寝た。
その、不安そうな顔を見ては俺は杪夏と離れないと言いながら……
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