20日目 ませた少年と好きな美少女

 俺は、あの石川彩華ちゃんの事を考えていた。

 だけど、それは俺がロリコンで小学生が好きとかじゃないけどな。

 本当に治ったのか。

 病気とか……

 それは、不安になって当然だ。

 だって、あの手術が苦手な二階堂とか言うダメ医者がしたのだから当たり前だ。

 むしろ、不安になったり心配しない方が可笑しいだろ。

 それに、自信過剰な二階堂だからな。

 また、何かやらかすに決まってる。

 俺は、何時にもなく不安がよぎる。

 この病院に入院してからは、ろくなことがない。

 良いことがあったとするならば、杪夏と会えたことぐらいだ。

 それだけが、この入院生活はきつく大して楽しみがないってことだ。

 そう思うと、俺ってこの病院の患者の中で運が良い方かも知れない。

 まあ、死んでる人もいるから本当に恵まれてる。



 そう考えてると、杪夏が起きてきた。

 何か、いつもと違ってぼーとしていた。

 どうやら、あまり寝起きはよくないらしい。

 暫くして、ちゃんと目が覚めて喋るようになる。


「……斎藤君……おはよう」


「……おはよう……四季さん」


 初めて、挨拶された気がする。

 最初は、言葉を交わすこともなかったが。

 この頃は、よく話すようになった。

 それどころか、杪夏からすり寄ってくるようになり俺は嬉しかった。

 ただ単に、やっと自分が行ったことが結果を出始めて、入院生活が楽しくなる。

 ずっと、前からは想像出来ないことだし。

 杪夏から、好きと言われるとは思えなかったからな。

 本当に、今が一番楽しいかもな……

 最初は、怪我をしてサッカーがやれなくて試合にも出れなくなったから、正直言ってクソつまらない出来事しかなくて。

 楽しめないと、思っていたからこうなることはあり得ないと感じる。

 だが、現実ではそうではなかったので。

 何が起こるか分からないな、世の中捨てたもんじゃない、杪夏みたいな可愛い俺のタイプの女の子と出会えて。

 横で、ニコニコ笑顔で俺の方へと見てきた。

 俺は、何だか恥ずかしくなったが。

 それ以上に、その笑顔で癒されたのでよかったと思う。

 そもそも、今まで杪夏の笑顔を見るために頑張ってきた。

 だから、俺は自分の目標を達成したのだ。

 昔から、なにもちゃんとやってこなかったから自分でも驚いてる。

 ここまで、恋愛にはまって女の子と付き合いたいと思うとは……

 そして、ドキドキしながらこの生活を送るとは、どう考えても思い付かない。

 それよか、つまらないし後悔してこの期間はすごすだろうと……

 何の、変化もなく無駄に貴重な夏休みは終わり。

 下らない思い出ができて、二度と思い出したくもない退屈で無駄な時間になると……

 そうなると今までの俺なら思ってるだろう。

 しかし、過去をふり返るとそんな出来事はなく。

 どれも、俺にとっては大切なものだ。

 たとえ、嫌なことがあっても杪夏に繋がるものばかりだから。

 クソみたいな医療従事者達のことも、杪夏のろくでもない親のことも、俺のツンデレ幼馴染みも、バカな同級生達のことも、二階堂のせいで死んでいった少年のことも、ニセ占い師や本物占い師のことも、退院した俺のことが好きな小学生の女の子ことも大事な思い出だ。

 どれも、正直言って良いことではないが。

 これらの事がなければ、今の俺の状況にはならかっただろう。

 杪夏にも、告白されたり。

 嫉妬されたり、今の笑顔もない。

 だけど、二階堂だけはどうとらえても許せない。

 なんせ、これからの杪夏と恋人となってイチャイチャすると言った俺の楽しみを奪った張本人だから……

 それと比べたら、他の人達は大して悪いことはやってない。

 詐欺師もいたが、それも俺にとってはささいなことでしかない。

 この二階堂とか言う、俺の好きな女の子との未来を奪う奴に比べたら天と地のさだ。

 



 暫くたち、看護師のおばさんとお姉ちゃんが運んできた朝食を食べる。

 相変わらず、その進歩しないな味はある意味凄かった。

 多分、俺でも少しは上達すると思う。

 ここまで、何も良くならないとは何かそう言う制約でも、悪魔とかに交わしたのか。

 まあ、実際にそんな漫画みたいな出来事はないがなこの世には。

 そう、不満そうに食べる俺を見ながら看護師のお姉さんは何だか笑顔だった。


「どうしたんですか? 何か楽しいことでもあったんですか?」


「分かるの~お姉さんねー! 最近、あってない学生の時の好きな男性にメッセージを送ったら。なんと! 今度、デートすることになったの! あなた達のおかげよ! ありがとう」


 俺は、困惑した。

 自分は、何もやってない喜ばれるとか奇妙で仕方がない。


「どう言うことですか?」


「あなたと言うか、あなた達のおかげよね! 詳しく言うと。思い出したのよ! 大事な人を! それをきっかけに、私も今回デート出来るようになったから。あなたには感謝してるわ!」


 まあ、どうとらえようが自由だが。

 前みたいに、余計な恋人候補に参戦しなければいい。

 正直言って、あの時が一番困ったからな。

 何よりも。

 本物によかった~


「ところで……また、二階堂先生手術に成功して。男の子退院してくるわよ」


「え?」


 俺は、困惑していた。

 それは、あの二階堂が手術を成功したからだ。

 その他には、何か嫌な予感がする。

 特に、男の子と言うワードに。

 確か、杪夏と一緒にいた子供の中には男の子供もいたはずだ。

 だから、俺の事を好きになった女の子もいたとすれば……

 滅茶苦茶な想像をしたが。

 まさかな……

 杪夏の事を好きってわけではないよな……

 多分……

 とりあえず、俺は杪夏に聞いてみた。


「……四季さん?……もしかして、その男の子って奴は。君の事が好きだったりする?」


「……う~ん……そうね……」


 俺は、緊張感が走った。

 何だか、汗もかいてたしこのパターンでいくと、同じようになるんじゃないかと……


「……あ~……多分、違うわよ……何か、好きって言ってたけど……別に、何かお姉さんみたいな人が好きって言ってたから」


 それは、杪夏の事が好きって意味だろ。

 どうとらえたら、好きじゃないと言えるんだ。

 ちょっと、杪夏の感覚は他の人とずれてるわ。

 本当に、何だか心配になってきた。

 


 そんな事を考えてると、子供が現れた。

 それも、この前会った小学生ぐらいの歳の男の子だった。


「杪夏お姉ちゃん! こんな、冴えない男より。僕みたいな、ちゃんとした。頭の良さそうな人選ぼうよ!」


 何か、失礼だな。

 この子供わ。


「……落ち着きなさい……迷惑かかるから」


「はい!」


 この子供は、本当にムカついた。

 俺に対しては、滅茶苦茶酷い言葉を浴びせるからな。

 これこそ、クソガキでませてると言っても過言ではない。


「それに……」


 杪夏は、ずっと睨み付けてその男の子に言う。


「……私は、好きなの……この、斎藤創君が……だから、迷惑をかけるのやめなさい」


 何だか、子供に対して始めてこんなにも言うのは新鮮だな。


「ちょっと! 斎藤!! 僕の杪夏お姉ちゃんをとるんじゃない!」


「お前のじゃねぇだろ! それに、ませて女子高生と恋愛しようとするんじゃねぇよ!! 流石に、杪夏はショタコン違うぞ! 多分、ただ子供好きなだけだ!」


 俺は、そう思いたかった。

 だって、ショタコンとかまずすぎる。

 俺は、杪夏を細目で見ていたら眉間にシワを寄せながら怒っていた。


「違うわよ……この子、何処かませてるのよ……私は、もちろん斎藤君のことが……」


「いー! いー! 別に、それ以上言わなくて! 分かってるから!」


 そうと、言って杪夏は顔を赤らめていた。

 それを見た、名札をつけていた石橋哲也いしばしてつやと言うクソガキは、泣いて絶対にお前に負けないからなと言っていた。



 その後、暫くしてお母さんが向かいにきて。

 一緒に、病室にでる。

 それから、二階堂とがきてまた自慢する。


「どうだね! 私の腕は凄いだろ!!」


「別に、あれだけ元気だったら治るだろ……どんだけ、自信過剰なんだよ! あんたわ」


 うんと言って、二階堂は立ち去る石橋を見て顔を赤らめる。

 正直言って、キモかったので本当にどうしようもない奴だと思う。


「斎藤!! 俺! 絶対に、杪夏姉ちゃんを嫁にする! それまで、杪夏お姉ちゃんを泣かすなよ!」


「ああ! まあ、お前と杪夏が付き合うことはないがな! 幸せに勝手に、なるから安心しろよ!」


「くく! 絶対に、斎藤なんかよりカッコよくなってやるー!!」


 俺は、この石橋とか言う失礼なクソガキは本当にムカついたが。

 まあ、子供の言うことだ。

 所詮、ただの憧れだろう。



 その後、石橋は見えなくなり完全に姿がなくなり家に帰っていたんだろう。

 夜になり、何故か杪夏が俺と目をあわせて見つめあう。

 そして、お互いを見ながら俺は絶対に一緒に居ようなと言い。

 ドキドキしながら、今日は終わる……

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