19日目 恋する女の子と好きな美少女

 俺は、何故かあの二階堂とか言う医者の顔が思い浮かんだ。

 しかも、偉そうに夢にも出てきて。

 説教してきて、ムカつく。

 あんな、ボンボンのバカ息子にイチイチ言われたくない。

 俺だって、自分でそこそこやってきた。

 今まで、ほとんど誰にも頼らなかった。

 まあ、受験期ぐらいは親に頼っていたが……

 それでも、二階堂よりか親を頼ってない。

 


 一時間ぐらいたつと、杪夏が起きてきて二階堂の事を話す。

 またかよ。

 確かに、悪い予感はしていたんだ。

 でも、今更そんな事を言われてどうってことない。

 この前、心をボコボコにして二度と立ち上がれないくらいにしてやったと言うのに。

 まあ、懲りるわけないわな。

 あの性格は、死ぬまで直らないかもしれない。

 たとえ、この世が滅びようと二階堂は自分の能力のなさは認めないだろう。

 そんな奴だ、あのダメ医者は……


「……多分、今日子供の治療を始めるわ……もう、始めてるのかもしれないけど……」


「……なんだって!?」


 俺は、二階堂が手術をやっていると思うと何だか、気が可笑しくなりそうだった。

 そう、あの自信とプライドしかない医者はきっとまたやらかすだろう。

 もちろん、杪夏の病気の手術のことだけではない。

 霊安室にいた、幽霊の少年の供述からも言える。

 二階堂が、手術を失敗することは多いにある。

 それに、この病院は二階堂の逆らえない。

 だから、ろくでもないことが起きる予感しかしない。

 それは、死神に自分たち患者の命を任せてるようなものだ。

 普通はあり得ない。

 だけど、この病院の医療従事者達は異常な人間ばかり。

 なくても可笑しくない。



 そう思ってると、朝食の時間になっていた。

 俺は、いつものように大して旨くもない食事をとる。

 本当に進歩しないな…… 

 ひょっとして、二階堂みたいな奴がこの食事作ってんのか。

 どうしたら、ここまで美味しくない食べ物が出きるんだよ。

 ある意味、作ってる奴らに聞きたいな。

 いつもの、看護師のおばさんとお姉さんが運んできたのだが。

 どうやら、まだ看護師のお姉さんの方は機嫌が直ってなくて。

 俺と杪夏を見ると、落ち込むらしい。


「……あ~……恋愛したいな~……結婚したいな~……」


 そう、看護師のお姉さんはぶつぶつと呟く。

 どんだけ、恋愛とか結婚したいんだよ。

 もう、職場とか変えろよ。

 もしくは、そう場を俺が用意してやろうか。

 何か、見てるとこっちまで落ち込んでくるし気分が悪くなりそうだから。


「そう落ち込まない! また、いい出会いがあるわよ!」


「うぇぇん!! せんぱ~い!」


 看護師のお姉さんは、看護師のおばさんに抱き付いて泣いていた。

 それを、看護師のおばさんはヨシヨシと言いながら慰める。

 本当に、ここまでいったら親子だな。

 何か、やっぱり婚活に失敗した娘を慰める母親みたいだな。

 俺にとっては、どうでもいいから。

 こう言う、茶番を見せるのはやめてほしい。

 余計に、飯が不味くなるから。

 まあ、大して旨くないものをどんな状況でも美味しくは感じないんだがな。


「……ねぇ……斎藤君」


 意外だな、杪夏が話しかけるとは。

 最近は、杪夏も明るくなってきたとはいえ。

 結構話すようになったな。

 それほど、気になることでもあるのかな。


「え? 何? 四季さん?」


 深刻そうな面持ちで、手を顎に触れて険しい顔をして話す。

 その姿は、ある意味どっかの名探偵か優秀なデカに見える。


「……ちょっと、気になることがあるの」


「気になることって……なに?」


 杪夏が、気にすることだから何かはあるんだろう。

 だけど、俺は検討もつかないが。


「……病院の、子供達はどうしてるのかしら?」


 そう言えばそうだ。

 前、杪夏の所に集まっていた子供の姿が一人も見えない。

 可笑しい……

 何処へ行ったのか……


「確かに可笑しいけど……それが、どうかした?」


「う~ん……何だか最近見ないから」


 確かに見ない。

 それどころか、一人も来ないのは可笑しい。

 そう思ってると、病室から子供が入ってきた。

 それも、小学生くらい女の子だった。


「お兄ちゃん! 何してるの?」


「え?……ダレ? この子?」


 俺は、突然出てきた子供に困惑する。

 

「あ! 出てきちゃダメでしょ!」


 看護師のおばさんが、子供を叱っていた。

 あの看護師のおばさんが、まさか人を叱っているとは……

 不思議なこともあるもんだ。

 そして、その女の子は俺をずっと見てくる。


「どうしたの? 何か、俺の顔についてる?」


 そう、言うが俺の質問は無視される。


「わたし! お兄さんのこと好き!」


 なんと、また告白された。

 何で、こうも俺は入院してから俺の事を好きな女の子が増えてるんだ。

 どうなってんだよ。

 全く……

 だが、すかさず杪夏の事を指差して意外な事を言った。

 思い出したのだが、杪夏といつも遊んでいる子の一人だった。


「わたしわ! このお兄さんの事を譲らないから! 絶対にね! 分かった! 杪夏お姉ちゃん!」


 おいおいおいおい。

 これは、大変なことになった。

 また、恋のライバルが出現したぞ。

 何か、杪夏も子供に対してはいつも怒ったりしないのに、眉間にシワを寄せながらムキなって言う。


「……何を言ってるの? 斎藤君は私のものよ……」


 両者とも、俺の事を譲らなかった。

 何なんだよ、これわ。

 俺も、訳が分からなくて夢かと思った。

 だけど、夢ではない……


「え? 何で、俺の事が好きなの?」


「う~んとね~杪夏お姉ちゃんに、お兄さんは優しいって聞いて。それに、お兄さんと二階堂先生の話を聞いていて。お兄さんは、優しかったの。誰に対しても、そんなお兄さんは優しくしてくれから。だから、お兄さんに愛されたいの!」


 ませた子供だよ。

 全く……

 子供に、愛だの恋だのが分かるかね。

 まだ、分かってないんじゃないか。

 後、見られていたのか……

 まずいな、これゃあ。

 誰かに、言いふらされたたまったモノではない。


「……絶対にダメよ……私は、斎藤君のもう恋人なの……だから、他の女の子に譲らないわ……たとえ、子供だとしてもよ……」


「あの……相手……子供だよ? 四季さん……だから、そこは遠慮した方が……」


 俺が、そう言うと杪夏と女の子は睨み付けて言う。


「斎藤君……黙っててくれるかしら? これは、石川彩華いしかわさやかちゃんと私の問題よ……」


 杪夏は、眉間にシワを寄せながら俺に対して鬼のような形相で睨み付けて言う。


「そうよ! わたしと、杪夏お姉ちゃんの問題よ! ヴヴ!!……」


 何だか、彩華ちゃんと言う子は。

 犬のように吠えてきた。

 顔も怒っている、犬のように歯をだしている。

 それも、尖った歯を。


「はい……」


 俺は、二人の形相を見ると話に入ってくる余地がないと思った。

 だって、二人ともバチバチに男の事をとられまいと争う女性そのものだ。

 小学生と戦う、杪夏は何処かいつもの冷静な雰囲気と違った。

 というか、小学生と恋のライバルって……

 可笑しいだろ。

 それに、俺は別にロリコンじゃないからな。


「斎藤君……あなたは、ロリコンじゃないわよね? だから、小学生の女の子の事を。好きになれないわよね?」


「でも! お母さん言ってたよ! 年取ったら、モテなくなるって! それと、若い子が好きなんだって! だから、わたしみたいなピチピチの女の子の方が。好きになるよね!」


 いや、小学生相手にロリコンとかよく言えるな。

 それと、彩華ちゃんはもう若いとかの問題じゃないよ。

 俺が、付き合ったら絶対に誤解生んで捕まるだろ。



 そう、言い争っていたら……

 彩華ちゃんの、お母さんがやってきて一緒に俺の病室から出ていく。

 俺らは、その後をついてきていた。

 仕方がない。

 彩華ちゃんが、一緒にきてって言ったし。

 それと、何故か出口の前に二階堂奴もいた。


「やあ! 斎藤君! どうだい! あの子を手術して退院させたよ! 私の腕も大したものだろ!」


「いや……あの子、滅茶苦茶元気だろ。誰でも出きるわ」


 俺と二階堂の会話は、他の人には聞こえていなかった。

 もちろん、そばにいた杪夏にも。


「お兄さん~! 絶対に恋人になるからね~! それと、杪夏お姉ちゃんにわ負けないからね!」


 そう言って、彩華ちゃんは俺に手をふり。

 杪夏には、バチバチの恋のライバルと言うアピールをして、退院して自分の家に帰っていった。

 二階堂は、自慢気で腹が立つわ。

 杪夏は、その後機嫌が悪いのか笑顔ではあったが、俺に対して絶対に私を愛してねと言い。

 俺の事を、目が笑ってない顔を向けて言ってきた。

 何だか、夜になっても眠れなかった。

 ずっと、不気味な笑顔で見てくる杪夏を見たらどんなホラー映画よりも怖くて。

 震えが止まらなかったから……

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