15日目 ダメ医者と美少女

 俺は、あれから杪夏の事が心配だった。

 あの、占い師はやはり本物だろうと思ったから。

 昨日は、否定してたけど……

 だが、今日は二階堂とか言う腕が悪くて失敗し続けて、杪夏の病気を治せなかった医者くる日だ。

 だから、そんなあるかどうかも分からない占い師の話しなんか、鵜呑みにして考えてる場合じゃない。

 それよりも、二階堂の奴に文句を言ったりあわよくば、医者を辞めてもらう為に色々としなければいけない。

 だから、気が立っていた。

 どうにも止められない。



 そして、看護師が現れる……

 こっちに何故かくる。


「とりあえず、斎藤君! 今日から松葉杖を使えるまでに、足が回復したから一人で出かけられるわよ! 良かったじゃない!」


 看護師のいつものお姉さんは言うが、別に大して嬉しくもない。

 だって、杪夏の病気が治らないと言われたから正直喜べないわ。

 それに、俺の足なんて大した怪我じゃないし。

 治って当たり前だろ。

 むしろ、ここまで怪我が治るのにかかるのは可笑しいよ。

 本当に、ここの医療関係者って……

 どうしようもない、ダメな人ばかりではないかと思う。

 その、看護師のお姉さんの喜びぷっりは上記を逸している。

 何が楽しいんだよ。

 大袈裟だわ。

 特に、リアクションとかが。


「何があったんですか……」


「べ、べ、べ、別に特にないわよ」


 明らかに怪しい。

 それも、子供が見ても分かる程度の誤魔化しかたなので、どうもそう言うふうにしか見えない。

 俺は、ジト目で看護師のお姉さんを見る。


「なによ! そんなに怪しいの!」


「いえ……別に……」


 看護師のお姉さんは、不機嫌になり俺はより疑う。

 まあ、しょうがない。

 どう考えても、この人の挙動は怪しかったから。

 何で、それでどうにか誤魔化せると思ったんだよ。

 俺の事を、高校生の子供だからと言ってなめてるんじゃないのか。

 何だか、バカにされているような気がする……


「それより! ご飯食べましょ! うん! そうするといいわ!」


 まあ、動揺していたが。

 話が進まないので、看護師のお姉さんとおばさんに朝食を運んでもらう。

 相も変わらず、大して旨くなさそうで。

 どうにも、ここの食事は好きになれないな……

 だって、いつまでも見た目は悪いし。

 味のほうも変化はなく、刑務所の囚人の方がマシな物を食べてると思えるクオリティ。

 横にいる、杪夏はよく何も思わずたべられるな。

 俺は、一度杪夏と知り合ってないとき。

 文句を言おうと、母親に車椅子で運んでもらって。

 看護師長に、話をしたら怒鳴りちらされて追い返されたってのに。

 そもそも、杪夏はこの病院に入院してなければ、体を悪くすることもなかったのでは。

 そう思うと、何だか理不尽な所に思えてきた。

 俺なら、こんな所さっさと出たいからな。

 杪夏は、本当に性格がいいんだな。

 愚痴を一つ言わず、黙々とこんなクソほど旨くもないご飯を食べ続けられるとは。

 


 そう考えていると、杪夏は既に食べ終えて本を読む。

 その本の表紙には、気になるあの人の心を掴むためのテクニックと書いてある。

 はあ~また、あの看護師のおばさんが要らない事を教えたんだな。

 俺は、本人を見ながら呆れてため息をつく。


「ちょっと~! 失礼しちゃうわね~おばさんだってね! 恋愛の事は分かるのよ! どうせ、斎藤君は杪夏ちゃんの事。一目惚れで、会ったときから好きなんでしょ! 分かるわよ~おばさんをなめたら痛いめをみるわ~」


 どんだけ、そう言うことだけは鋭いんだよ。

 仕事では、役に立たないその能力。

 身につける、意味あるのかよ。

 正直言って、無駄すぎて今の職業に役に立たないだろ。


「何で……そんな無駄事は頑張るのかが知りたい……」


 俺は、小声で聞こえないように言うがどうやら聞こえていたらしい。


「聞こえてるわよ。意外と役に立つわよ! この能力も! 見せてやるわ! 私が凄いってことをね!」


 俺は、それより食器を早く片付けてくれ。

 看護師のお姉さんが、ほとんど片付けてるじゃないか。

 まあ、看護師のお姉さんの方が苦手だから俺的にはいいがな。


「二階堂先生を連れてきてあげる! 証明してあげるわ。私が、もつ話術の能力を!」


 何か、変な口調で話す看護師のおばさんに俺は苦笑いをしながらなにやってんのこの人と思った。

 そのまま、病室を出ていって。

 暫くして、何か医者っぽい自信たっぷりそうな人が出てきた。


「ここかい! 僕のような! 医者に憧れてるって言う、少年がいるところは!」


「そうなんですよ~是非、この斎藤創君があなたの数々の手術の功績を知りたいって。言うんですよ~」


 何だ……

 この、古典的なおだてかたわ。

 ここまで、するかよ普通……

 俺は、看護師のおばさんのプライドのなさに呆れた。

 だが、次の瞬間驚く事を言われた。


「さあ! 二階堂先生! 手術の数々の功績の話を! この斎藤君に、してください!!」


「何! この先生が、二階堂とか言うダメ医者なのか!」


 二階堂は、ムッとした表情をする。


「君! 失礼だぞ! 私は、ここの凄腕の将来医院長になる。男だぞ! そんなに人間になんだ! その態度は!」


「……え……こんな、プライドしかない奴が医者とか前代未聞すぎるぞ……だから、ほとんど手術は失敗するんだ! それに! おばさん! これは、杪夏に対してのぼうとくだ! こんな、見るからにダメな医者にみてもらうだなんて!」


 二階堂は、俺を眉間にシワをよせて睨み付ける。


「君は……本当に、自分の身の程をわきまえない人間だね~いいだろ! 明日! 私が、本当は腕が悪くなかったことを証明しよう。そして、この世の中にはどうにもならない事を教えよう……そうすれば、君の下らない考えも変わるだろう。それと! 四季杪夏さんの、体も何故! どうにもならいのかもね! たっぷり教えてあげるから! 僕の部屋にくるといい!」


 二階堂は、さっそうと帰っていった。

 何か、歩き方も去り方も偉そうだったので。

 俺は、威張りんぼのクソ医者と言うようにしようと次から思う。

 しかし、あんな医者だったら。

 誰も、治せないだろ……

 この病院は、本当にどうなってるんだ。

 確かに、昨今の医者不足は俺が分かるくらいには深刻化してるが……

 だからと言って、あんな口だけの威張るだけでプライドしか持ち合わせてない奴に、人の体を手術させるなんてイカれてるとしか思えない。

 特に、杪夏の体を二度と手術してほしくないない。


「……と言うか……何で! あんな医者を、雇ってんだよ! いくら医者不足と言えど! 可笑しいだろ! あれだったらいない方がマシだ!」


 看護師のおばさんは、申し訳なさそうに言う。


「しょうがないのよ……あんな医者でも、医師会の中ではなかなか顔がきいていてね。どうにも、出来ないのよね……今日聞いた話なんだけど……だから、この事は絶対に言わないでちょうだい。私が、クビになっちゃうしね……」


 看護師のおばさんは、そう落ち込みながら病室を出ていく。

 それは、どうしようもない現実を突き付けられた感じだ。


「どうなってんだよ! ここは! 可笑しいだろ! こんな病院!! そんな、ダメ医者を雇うなんて!!」


「……」


 杪夏は、黙って何も反応せず。

 本をひたすら読む。

 俺は、叫んでいたが誰にも届かなかった。

 この日は、二階堂の明日の決戦に備えてちゃんと寝ようと思ったが。

 なかなか眠れず、どうにも落ちかなかった。

 杪夏の事を思うと、いてもたってもいられない。

 そんな事がまかり通るなんて、皆は間違ってる。

 絶対に、あの二階堂とか言う医者が間違ってることを証明してみせる。

 絶対にだ。

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