14日目 詐欺師の占い師と本物の占い師

 俺は、いてもたってもいられない。

 そう思いながら、目を覚ます。

 流石に、今まで冷たい父親だからと言って許せない。

 今では、改心して娘を思いやり行動しているのに。

 猫の時も、何だかんだ言って助けてくれたし。

 今は、クズ親なんかじゃないのにそんな酷い目にあうのは可笑しい。

 それよりも、二階堂とか言う子供を死なせたプライドばっかり高くて医者のくせに手術出来ない奴の方が酷い目にあうべきだ。

 そいつは、全く反省してないんだからな。



 そんな事を言っていると、今日も大して旨くもない食事が運ばれてきて一応食べる。

 まあ、こればかりは病院の食事だから旨くないのは仕方ないかもしれない。

 だけど、もう昔と違って時代が違うのだからもうちょっといいものをだしてくれ。

 本当に頼むは、マジで。


「……もぐもぐ……」


 そう思いながらも、お食事タイムを楽しんでいた。

 別に、病院の食事がすきなのではなく。

 杪夏と、食べられるのがいいからだ。

 じゃなければ、こんな残飯みたいな飯を楽しみにとるわけない。


「何か、機嫌悪そうだね。なんかあったの?」


「あ~! ありましたよ! それも、これから占い師ぶってる。詐欺師と話さなきゃならなくなった。しかも、杪夏の病気を理由で騙そうとする奴なんかと。会話してこなきゃいけないと思うと腹が立つ!!」


 何か、部が悪そうに俺のそばから離れて。

 杪夏の所へいく。


「杪夏ちゃん……何かあったの? 斎藤君?」


「はあ~……父が詐欺師に騙されたんですよ……嘘をついている事を認めないから……斎藤君は、それを分からせようと占い師に言いたいみたいです……」


 俺を横目に、コソコソ話をしていた。

 しかも、全く聞こえなかったのでどういう内容かは分からないが、どのみちこの看護師のおばさんが言うことだからろくな事ではないだろうと思う。


「まあ……何でもいいけど……あまり、問題だけは起こさないでね……こっちが、対処しなくちゃならないから」


「しませんよ! 問題行動なんて! それに、向こうに問題があるわけで。俺には何の落ち度もないので!」


 俺は、看護師のおばさんに激しく言った。

 だって、悪いのは占い師のほうで。

 自分は、悪いことを一切してないのに気を遣う必要ない。

 そんな事を思っているが、本当は内心どうなるかドギマギしてる。

 明らかに、怪しいからな。

 占い師の肩書きなんて名乗る奴は。

 これで、もしも変な洗脳とかされそうになったらと思うと、気がきじゃないが。

 それでもやらなくちゃいけない。

 たとえ、ろくな目に合わなくても……

 それが、杪夏の為ならば。

 そう思い、俺は体を奮い立たせる。

 


 俺は、とりあえず食事を済ませた。

 その後、杪夏ふ自分のペースで食べ終える。

 本当に凄いと思う。

 だって、こんないかにも可笑しな奴が来ると言うのに、落ち着いて食事をとるとは。

 流石、俺の好きな女の子だ。

 しっかりしてる。

 その後、張り裂けそうな空気と重苦しい雰囲気の中近藤を待つ。

 緊張感だけが、伝わり俺は汗をかく。

 その汗は、明らかに冷や汗で。

 こう言う事は、やりたくないと本心は思ってるのだろう。

 何だか、精神を削っていたくような感じがした。

 俺は、段々と心が疲弊していくようだ。

 こんな思いをするならいっそ、逃げてしまった方がいいだろう。

 だけど、そんな事をしても杪夏は助からない。

 この複雑な、気の持ちようはなんだろう……

 どうやにかしたいが出来ない。

 


 その時、ドアが開いて近藤が来たようだ。


「……待たせたね……君が、電話をかけてきた……斎藤君か?」


「はい……そうですけど」


 俺は、ひとまず安心した。

 近藤以外、怪しい人間も居なかったことと案外変な格好はしていなかったから。

 だけど、油断は出来ない。

 もしかしたら、洗脳をさせる為の罠の可能性は大いにあるからだ。

 再び、俺は緊張して汗をかく。


「それより……なんで、俺の事を知ってるんですか……」


「それなら、四季さんに聞いたよ……君が、そこの隣のベッドにいる子の事を思って私に言ったこともね」


 あの、杪夏の父親はそんな事まで言ったのか。

 やはり、ダメな親はいつまで経ってもダメだな。

 こんな、怪しげな占い師と言う胡散臭い奴に自分の個人情報を教えるとは。

 全く、本当にどうしようもない父親だよ。

 今回、見直していたが撤廃する。

 とんでもない、バカ親だよ。

 あのクソオヤジわ。


「……まあ……それは、いいんですよ。それよりも、あなたは占い師ですよね? でしたら、今言うことを当てたら信じます……どうですか?」


 少し、近藤は考えていた。

 顎を手に当てて。

 

「……分かりました……あなたに、私の能力を見てもらいましょう……それで、納得するはずです……」


 俺は、近藤の目を睨み付けて。

 近藤に対してする質問を考える。

 とりあえず、とびきり分かりにくい奴でどうだろう。

 まあ、最初は簡単な奴でいくが。


「……とりあえず、五回質問します……それで、三回当てられたら……あなたの事を信用します……」


 近藤は、俺の顔を真剣に見ながら大量の汗をかいて緊張する。

 俺も、つられて汗をかく。


「まず……俺と四季さんは、どう言う関係?」


 近藤は、腕をくんでう~んと考えている。

 すると、何か思い付いたのか答える。


「……病院で入院して出会った関係だ

……だけど、つい最近進展したね……」


「……まあ、正解ですね……」


 正解するわな。

 だって、こんな質問の答えを知っていても可笑しくない。

 多分だが、杪夏の父親がその事を言っていたのだろう。

 そう頷きながら、俺は次の質問にいった。


「……次です……四季杪夏さんの元飼っていた猫の名前は?」


「……確か~たまか何かだと~……言って言った気がするが~……」


 俺は、これはチャンスだと思い。

 カウントダウンをする。


「……ご~よん~さん~に~いち~……」


「分かった分かった! マロンだ!マロン! 茶色猫だと言ってたし! 四季さんが!」


 俺は、コイツやはりだめだなと思ったが。

 一応、話しには最後までつきあうおうと思う。


「不正解ですね! 次!」


 俺は、苛立っていた。

 こんな、明らかに人の事を分かっているのなら答えれそうな事に答えられないなんて。

 ある意味凄い占い師だと思う。

 その自信が凄い。

 別に、褒めてないからな。


「……杪夏は、俺の幼馴染みと喧嘩をしました……その幼馴染みの名前は?」


「……多分! 加藤!恵美理!」


 それは、俺が中学の時に好きだった女子の名前だよ。

 普通、占い師って。

 ある程度調べてから、来るよな……

 この人、どんだけ準備出来てないんだよ。

 それぐらいは、調べるものだぞ。


「不正解です……次!」


「くっそ~!……佐藤ひとみだったか~」


 それは、俺が中学生の時に嫌いだった女子の名前だ。

 アイツキツいからな~

 特に、当たり障りのない話をしても言い方キツかった覚えがある。


「……この、四季杪夏さんの手術をして失敗した。医者の名前は? それと、事故で失敗しましたか? それとも、腕が悪くて失敗したか?」


「……名前は、二階堂秀次……」


 まあ、流石にここまでは聞いてるだろう。

 だが、失敗した理由は答えられるか。

 どうも、この近藤とやら。

 杪夏の父親から、情報を得てるみたいだ。

 じゃなければ、全部他の人に聞けば答えられるしな。


「……事故かな? この、彼女のお父さんも言っていたし……」


「……不正解です……」


 近藤……と言うかもうダメ何だよな~

 この質問は、三回正解しなければいけないし。

 一応、聞いてみますかね。


「……質問いきます……ここで死んだ子の霊が出てきたと看護師にきいて……俺と四季さんは肝試しをしました……さて? その子の名前は?」


「……え~と……」


 俺は、チャンスをくれてやろうと思った。

 

「……因みに……ここで正解すれば、三回正解したことにしましょう! スペシャル質問です!」


 俺は、どっかのクイズ司会者のようにサービス問題的な物を用意した。

 まあ、こうしないとこれを質問する意味なくなるからな。


「………因みに! 江藤君ではないですよ!」


「……分かった! 山田太郎君だ!!」


 どんな名前だよ……

 今時の、名前じゃねぇよそれ。

 まあ、近いと言えば近いが。

 間違ってるから、どのみち同じ何だよな~


「……みごとに、不正解です……あ~あ! あなた……やっぱり……詐欺師でしたか……」


「違う! これは、可笑しいだろ! こんな質問! 占い師が答えられるわけない!」


 でたよ、大して実力もない奴らがする言い訳ってのを。

 そもそも、この質問はある程度占い師として実力があれば答えられるように出来てる。

 それに、この程度ならリサーチして前に調べてどうにか出来るんだがな。

 俺は、近藤を疑う表情で睨む。


「……違う! 違う! 私は、タロット占いの方が得意でね……だから、今すぐ起きる事を占うよ!」


 俺は、そんな近藤を呆れた細い目で見ながら、杪夏の父親に来てもらう為にライムでメッセージを送る。

 そして、近藤の事も次いでに調べてもらう。

 暫くたち、近藤はタロット占いで結果が出たようで、自慢気にその今起きる事を言う。


「君! 今すぐ! 逃げなさい! 良くない事が起きるよ! 例えば……看護師に悪さをしていた事がバレて。怒られるとか!」


 その瞬間、ドアが開いて杪夏の父親が出てくる。

 杪夏の父親の隣には、警察が大勢いて。

 待ち構えている。


「お前!! よくも騙してくれたな! 逮捕しろ!!」


「ちょっと待ってください! 私は悪いことをやってませんよ! 別に!」


 近藤は、まだしらばくれていた。


「お前には……何のへんてつもない壺を、運が良くなると言って。売った容疑がかかっている! それに、子供の病気を利用して商売するとは言語道断! キツイ罰が下るように! してもらうから、覚悟しておけよ!!」


 一斉に、警察に捕まった近藤はいいきみだ。

 あんな、人の弱みに漬け込むような輩は重罰を受けるのは当たり前だ。

しかも、優しい杪夏を使って金を得ようとするなんて俺は許せねぇ。


「私は! 嘘なんか付いてな~いいい!!」


 警察二人に、腕を押さえられ連れてかれてもそう言っていた。

 何と言う奴だ。

 何処まで懲りないんだよ……

 こう言う、犯罪者ってのはよ。


「……すまなかった……」


 杪夏の父親は、俺に謝ってきた。

 しかも、深々頭を下げて。


「いいですよ! 今回は、別に杪夏のお父さんが悪いわけではないので……」


 まあ、騙されるほうも多少は悪いけどね。


「と言うわけで……本物の占い師を見付けてきた……入ってくれ」


 そこには、いかにも怪しげな格好をした。

 占い師の被りそうな、フードと衣装をしていた。


「もういいですよ! そんな、冗談わ……あはは……」


 俺は、苦笑いをしてまた杪夏の父親が騙されてると思ってしまう。


「……とりあえず……斎藤創さんは……医者になりますね……それで、そこの彼女死んででしまいます……夏の終わりぐらいの……八月三十一日……」


 俺は、また嘘で騙されてると思った。

 杪夏の父親が、騙されていると……

 

「嘘でしょ! 嘘って、言ってくださいよ! 杪夏のお父さん!!」


 杪夏の父親は、黙っていて何の反応もない。

 それどころか、本当に杪夏が占い師が言っていたように死ぬような反応だ。


「嘘だ! 嘘に決まってる!! おい! 何とか言えよ! な!」


 俺は、杪夏の父親の腕を掴み体を揺らすが何の否定もなく黙っているだけ。

 その雰囲気は、杪夏が夏の八月三十一日に死んでしまう事が本当にあるかのうに思えてくる。


「帰ってください……帰ってください! その、占い師と一緒に!!」


「分かった……」


 杪夏の父親は、落ち込んで歩く。

 背中は、何処か悲しそうだった。

 だが、占い師は何故か残っていた。


「斎藤君……とりあえず、そこにいる彼女に。好きな思いだけは、伝えなさい……じゃなければ……一生後悔するわよ……」


「うるさい!! さっさと、あんたも帰れよ!!」


 俺は、つい占い師の婆さんに当たってしまった……

 この事で、本当に後悔するとはこの時は知るよしもなかった……

 そして、占い師の本物の婆さんも。

 杪夏の父親の、後をついていくように帰っていった。



 そして、夜になり……

 俺は、興奮してなかなか寝つけなかった。

 あの、本物の占い師の婆さんが言っていた。

 杪夏を、好きな思いを伝えなければ後悔することになると言うことを……

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