13日目 エセ占い師とバカな父親

 俺は、あの幽霊の子供が言った事が忘れずにいた。

 杪夏を治療した、二階堂と言う医者の存在は俺にとっては最悪なものだ。

 結局、治せず今の夏までしか生きれないと杪夏を作ってしまったのだから。

 それと同時に、杪夏と会わせたと言う所業はあるがそんなもので許されるわけない。

 二階堂がしたことは、医者としても罪が重いし人としても最悪な行為だ。

 どんな理由があろうとも、手術が出来ないクセにやって人の人生を潰すような事は良くない。

 ましてや、あの死んだ少年なんかそれ以上に生きれなかった。

 その、原因を作る二階堂には嫌悪感しかない。

 多分だけど、杪夏の優しくない時の父親みたいな奴だと思う。

 プライドばっかり高くて、自分の事しか考えてない人間それが二階堂。



 そんな事を考えてると、朝食が運ばれる。

 俺と杪夏は、黙々と大して旨くない食事をとり。

 看護師のおばさんは、皿をかたずけようとしていた……

 だが、俺は昨日の死んだ少年が言った事を質問する。


「おばさん! 本当何ですか……二階堂先生は、手術に失敗して。杪夏は夏までしか生きれなくなったって……」


 看護師のおばさんは、動揺しながら俺の問いに答える。


「何で知ってるのそんなこと! まあ……仕方ないか……本当の話よ……しかも、霊安室の山田たけし君も……二階堂先生が、あまり手術が上手いわけではないのに……やって失敗したは……何故か……マスコミとかには報道されなかったけど……」


 やっぱりか、二階堂と言う医者が手術を失敗して杪夏が余計に体が悪くなり、今夏までしか生きれなくなったのわ……

 俺は、二階堂と言う奴が許せない。

 杪夏の事もあるが、大して腕もないのに患者の手術をして失敗するようないい加減さに。


「……いいわよ……斎藤君……もう過ぎた事はどうにもならないんだから……」


「良くないよ! 杪夏の体を傷つけて。しかも、霊安室の少年を殺したんだよ! そんな事を許す、あんたら病院関係者も許せない!! 今すぐ、二階堂と言う医者を出せよ! 責任とらせてやる!」


 俺は、ムカついていた。

 それは、杪夏の事もあるが今まで二階堂のせいで傷つけられて死んでいった患者の事を思うと許せるわけなかった。

 そんな俺を見て、看護師のおばさんは折れたのか真意を話してくた。


「……ごめんなさい……うう……私も無理だと言ったわ……いち看護師の意見が通ると思わないし、頼んでみたの……だけど何故か、病院側はそれをなかったかのようにしたわ……それから、二階堂先生のみた患者の人は……次々死んでいったわ……どうにもならなかったの……」


 確かに、よく考えるとこの看護師のおばさんにはどうすることも出来ない。

 それに、決めるのは医者で看護師はその方針に従うだけ。

 それが、この人の立場だとそうするしかない。


「……止めてちょうだい!……私はいいわよ……それより、おばさんの事を悪くいわないで」


 そうだ、この看護師のおばさんを責めては意味ない。

 それに、看護師のおばさんはそんなに悪い人ではない。

 ただし、デリカシーとかプライバシーとかは守らないけど。


「……分かった……ごめんなさいおばさん」


「いいわよ……分かってくれたのなら……それに、あなたが怒るのは当然よ……杪夏ちゃんの事を思ってだもの……今度はちゃんと協力するわ……何でも言ってちょうだい」


 俺は、とりあえず二階堂とか言う医者がいつ来るのかを聞く。

 そうしないと、事のてんまつは分からないからな。

 流石に、本人にちゃんとした真実を教えて貰わなければ。


「……二階堂とか言う医者は……いつここに来るんですか」


「……明後日よ……ここにきて、ここの子供の手術をする準備を整えるわ……だけど、手術の日は二階堂先生が決めるみたいで。何時になるか、分からないけど……」


 あさってか……

 俺は、その日になったら絶対に文句とか言ってやろう。

 そうしないと、これからも二階堂の手術の被害者が出てしまうからな。

 それに、杪夏の手術を二度とさせないためにも……

 そう考えていると、急にドアが開いて。

 杪夏の父親が入ってきた。


「杪夏! 治るかもしれないぞ! 病気!!」


 明らかに、あり得ない事を言いながら上記を逸していた。


「……治るわけないでしょ……何を言ってんの? お父さん?」


「治るんだよ! 占い師の方に聞いたんだ! それも、運良く! 何事もなかったように!」


 その表情は、可笑しかった。

 何かに、取り憑かれたような顔をしていて何だか意味不明な事を言っている。


「この、病気を治すお守りを付ければ。あっという間に、治せるみたいなんだ! ほら! 付けないさい」


「どうしたの! お父さん!」


 何があったのか、分からないし何を言っているのかも分からなかったが。

 一つ言えることは、まともな状態ではない事は分かった。

 だから、俺は杪夏の父親の話を聞く。

 どう考えても、そのお守りと占い師は怪しいしな。


「杪夏のお父さん……占い師って……何かあったんですか?」


「よくぞ! 聞いてくれた。先日、私は杪夏の体を治せる医者を探してたんだが。そこで、有名な占い師を紹介してもらってな……なんと! 占った結果……このお守りを付ければどうにかなると言うんだ! 驚いたろ!」


 いや……

 あんたの、人を信じる純粋な性格に驚いたよ。

 前まで、人をあんだけ信用しなかったのに。

 ここまで、変わるとは思わないし。


「お父さん……それ、嘘よ……しかも、古典的な霊感商法のたぐいね……」


 杪夏の父親は、顔が青ざめて震えている。

 いかにも、部が悪そうだ。


「何を言ってるんだ? 大丈夫なんだよ……これで、どうにかなるんだよ! 杪夏の病気わ!」


 今回は、杪夏の父親はあまり悪くないのだが。

 だけど、惨めすぎる。

 やっと、娘を大切にする為にした行動が良くなる処か、逆に他の人に迷惑をかける詐欺師の手助けをしてるだなんて……

 本当に、哀れで悲しすぎる。

 愛があっての行動だとしても、無様で前のような威厳も風格もない。

 俺は、仕方がないので一応杪夏の父親にそれは詐欺だと分からせる事にした。


「……はぁ~……いいですか! そう言う、自分は特別に人の未来が見えますとか! 分かるとか! 言う奴らわ! 大体、詐欺ですよ! それに、そんな能力あるなら。自分で使って儲けるでしょ! 何騙されてるんですか! いい加減、年なんですから! 分かってください!」


「私は……うう……杪夏の為を思って……うう~……」


 確かに分かる。

 だけど、少しは人を疑ってほしい。

 

「とりあえず……その人の、連絡先とか分かりますか……」


「あ~あ……これなんだが……」


 先ほどまで、うづくまって泣いていた杪夏の父親は連絡先の名刺をだす。

 俺は、とりあえずその電話番号にかけてみた。


「こちら、占い師事務所ですが?」


 何だ、その事務所はと思うがそれはどうでも良かったので、この名刺の名前に書いてある。

 近藤龍地こんどうりゅうじがいるかどうか訪ねる。


「すみません……そちらに、近藤龍地さんはいらっしゃるでしょうか?」


「……はい! 近藤龍地ですね? 今呼んできます……少々お待ち頂いてもよろしいでしょうか?」


 俺は、はいと答えてとりあえず近藤龍地とか言う、詐欺臭い占い師を呼び出して貰う。

 その後、数分で近藤が出てきた。


「はい、近藤龍地ですけど? どう言った、ご用件で?」


「はい……あなたの占いの事ですが……正直言って、うそですよね?」


 俺は、とりあえず切り込みしかない。

 それ以外出来ないし。


「あ~そう言われる。お客さんも、要るんですよね~ですけども! 私は、ちゃんとした占い師すよ? それに、占いは当たらぬも八卦! 当たるも八卦! 必ず、当たるとは言いきれないので~」


 俺は、この近藤の発言にカチンときた。

 騙したことも腹が立つが、それより杪夏の病気を利用して金を儲けようとするとは……

 どうしようもない奴だ。

 だが、今はそんな事で怒ってる場合ではない。

 それよりも、どうにかこの近藤と言う。

 ペテン師を、呼び出してやって自分が詐欺をやっているクズだと分からせなきゃいけない。


「でしたら……こうしましょう! 俺を占って全部言い当てられるのなら! 俺と今回占って貰った人は、あなたの事を占い師として認めましょう! ですけど……もしも、ハズレた場合……あなたを詐欺として逮捕してもらいます!」


「分かりました……何処に行けばいいですか?」


 俺は、明日病室に来るようにいい。

 近藤と、約束して電話をきる。

 その後、杪夏の父親は俺と杪夏に謝っていたがもういいと言い帰らせた。

 こんな事が、起きるなんて夢にも思わない。

 まさか、嘘とは言え。

 娘の為に、病気を治してやろうと思っているとは……

 俺は、この日なかなか寝付けなかった。

 それは、あの近藤と言うエセ占い師があんな弱った父親を狙う、その考え方といかにも嘘つきのくせに自分正しいと思ってる言動が腹が立ってしょうがなかったから……

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