10日目 雨と好きな美少女
今日は、朝から雨だった。
そんなどんよりとした、天気は俺の気分も悪くさせる。
杪夏は、そんな景色を窓から見ながら何処か寂しそうな表情をしている。
「四季さん……何かあったの?」
俺の言葉に反応に、杪夏は何も反応せず。
窓の、雨が降っている景色をボーと見てる。
そして、病院はいつもより忙しそうで慌ただしい。
病院中に、響き渡る声でそれが確認できる。
「今! 患者運ばれてきたました!」
「おい! 早く運べ!!」
その、声と共にこっちも何だか落ち着けない。
「おい! この患者危ないから医務室に運べ! 早くやれ!」
「こっちもやってますが、どうにもなりませんよ!」
いつもより、看護師も医者も余裕がないくらいに忙しく気が荒い。
俺の気分と共に天気は、悪くなる一方だ。
雷は、落ちてゴロゴロと鳴っている。
病院の近くに落ちてる為、音が響き光る。
本当に、ここに落ちるんじゃないかとヒヤヒヤさせられる。
これ、雷のせいで停電とかなったら困るよな。
「……」
ずっと黙りながら杪夏は、窓の方を向き表情一つ変えず見てる。
本当に、杪夏は凄いと思う。
俺は、正直言って怖いしどうなるか分からないからな。
やはり、杪夏はただ者ではない。
その姿は、まさに何処かの王女の風格を思わせる。
「四季さん……よく大丈夫だよね……」
「……それは、大丈夫よ……雷は、高い所に落ちるわ……それに、建物の中に居れば当たらないわ……」
杪夏は、頭がいいからどうにかなるか……
にしても、よくこの音に耐えられるな。
俺は、全然耐えられなくて耳を押さえてる。
「やはり、杪夏には敵わないな……」
「私は……あなたに勝てないわよ……度胸と、鋭い感には……」
始めて褒められた気がする。
俺も意外だった、だって杪夏はあまり人を褒めるタイプではないし。
それにだ、俺は褒める処は大してないはず。
そんな、中身まで分かる杪夏には弱点はない。
ましてや、俺みたいな人間が果たして関わっていいのかと思える。
神様も本当に意地悪だ。
ここまで、凄い人間を病気にさせて苦しめるとは……
「遅くなってごめん……ご飯持ってきたわよ……」
看護師のお姉さんは、遅れて朝食を皆に渡す。
俺は、この時あまり食べられなかった。
杪夏も同じように、食欲がなくて俺の半分も食べてない。
「……モグモグ……お姉さんなんかあったの? 忙しいそうだったけど……」
「……ああ……ちょっと、雷の影響と大雨に巻き込まれて。怪我人が大量でたのよ……だから、今日は大忙しだったわ……」
その看護師のお姉さんの表情は、いつにもなく真剣で医療に携わる者の顔だった。
「ところで知ってた? 雷に撃たれた人が何も怪我がなく。それどころか、病気が治ったって話……」
俺もその話を聞くと、驚いてはいたが杪夏も目が点になり口も開いていた。
はあっとして何か、考えてるらしくて顎を手に当てる。
その様は、まるで何か開発してる教授のよう。
暫く、しんみりした空気が流れる。
それは、俺にも流れてきてようやく落ち着いてきた。
だが、何か嫌な予感がする。
雷が鳴り、今度は病院中の電気が消えてまだ昼にもなってないのに真っ暗になる。
すぐに、停電は直ったが俺と杪夏の気分は暗いままだ。
そして、男の患者が看護師に車椅子で連れてこられる。
「はい~ここが今日入院してもらう。病室です」
「……ああ……そうか」
その患者の男は、眉間にシワを寄せて怒ってる表情で何処か顔が怖くて何かやってそうだ。
俺と杪夏は、そんな患者のオッサンのだす圧力を感じて身構える。
「……ああ……すまない……ちょっと、世話になるな……」
そのオッサンは、見た目より言ってる事は普通なのでとりあえず俺は、構えるのを止める。
「……いいですか……もしかして……あなたが雷に撃たれたのに平気だった人ですか……」
こんなに杪夏が、積極的に話す事は今までなかった。
それも、患者のオッサンに。
「……ああ……そうだが」
この人が、雷に撃たれて大丈夫だったのか。
まあ、見た目的にも何か体つきがいいからな。
「ところで……雷に撃たれて病気が治ったって本当ですか……」
まさか、そんなはずないような。
だって、雷が病気を治す効果はないしありえないよ。
俺は、冗談だと思ってとりあえず聞く。
だけど、オッサンに思いがけない事を言われた。
「……本当だ……私もびっくりしたよ……ひょっとしたら、神様が治してくれたかもしれんな……」
その患者のオッサンが、雷に撃たれて病気が治ったのは本当だったらしい。
あの看護師達も、たまには本当の事を言うんだな。
ほとんど、嘘ばかり噂になってるけど。
そう言えば、俺と杪夏が付き合ってるって噂になったわ。
立花があんな事を言ったから。
その時だった。
杪夏は、病室に出て何処かに行く。
「ちょっと! 杪夏ちゃん!」
看護師のお姉さんも、呼び止めるもさっさと何処かに行ってしまった。
その後、母親が病室に入ってきた。
「どうしたの? 杪夏ちゃん何かあったの?」
「母さん! いいから! 俺を車椅子で屋上に行かせてくれ!」
俺は必死だった。
多分、患者のオッサンが言っていた事を真に受たに違いない。
どう考えても、それぐらい患者のオッサンにの話を聞いていたから。
母親は、何が何だか分かってなかったみたいだが、車椅子を押してもらい息をきらしてエレベーターを使ったりして屋上に着く。
そこには、杪夏が立っていて空を見上げながら雨で体が濡れている。
「四季さん! 何をしてるの!」
俺が、大声を上げたらやっと気付いたようだ。
「……病気がこれで治るんでしょ……私は、雷に撃たれて病気が治るんでしょ……」
いつもの、杪夏らしくないその言葉は正気で言ってるように思えない。
だって、あの杪夏がそんな非現実的な事を信じる事はないと思えるから。
「……四季さん……病気はそんな事で治らないよ……残念だけど……」
「……嘘よ……だって、患者の男の人は治ったじゃない!」
杪夏の声は、いつもながら大きく震えながら言っている。
まるで、宗教を信じる信者みたいな感じに見える。
だけど、それはありえないいくら祈ろうがこの世界は良いこと起きない。
ましてや、雷に撃たれて病気が治るなんてない。
あのオッサンが可笑しかっただけだ。
だから、俺は杪夏を止めなければならない。
早くしないと、風邪をひき余計に病気が悪化してしまう。
「四季さん……現実は、そんなに甘くないんだ……だけどね……俺は、どんなに四季さんがなっても一緒にいる! だから! 病室に戻ろう! 風邪を引いてしまっては、病気が悪化してしまう!」
「……本当に? 斎藤君は……私を裏切らない……」
「ああ! 裏切らないさ! 俺は、四季さんいや……杪夏が好きだ! だから! 絶対に一緒にいる! 約束する!」
杪夏は、涙を瞳にためながらこっちを向く。
「……分かったわ……」
母親に引っ張られ、杪夏は病院ないに戻り看護師の持ってきたタオルで水滴を拭く。
そして、病室に戻り。
杪夏の、体調は悪くなる事がなかったので俺は安心した。
先ほど患者のオッサンは、何か申し訳なさそうな顔をしていた。
「すまない……私が、こんな事を言ってしまい……」
「まあ、いいですよ……その代わり、こんな事はあまり杪夏の前では言わないでください……」
患者のオッサンに、とりあえず雷の話しは言わないようにしてもらった。
その後、杪夏は何だか照れていて。
俺も、説得するとき本音を言ってしまいプロポーズみたくなってしまったので、何だか気まずくてなかなか話せない。
「……斎藤君……そっち行ってもいいかしら……」
「あ~あ! いいよ……」
俺は、自分のベッドに座った杪夏の顔を見て緊張する。
顔が綺麗なのもあったが、それよりも好きなこが目の前にいるのだからそうなるだろう。
「目をつぶっていて……」
「……え……」
俺は、杪夏の言う通りに目をつぶり暫くして目を開けると、杪夏がほっぺにキッスをしていた。
俺は、体が熱くなり気が動転する。
「ど、ど、ど、ど、どうして! キ、キ、キ、キ、キッスなんてしたの!?」
「……お礼よ……それに、一緒に居てくれるのでしょ……絶対に、離さないでね……」
俺は、杪夏の大胆な行動に驚きふためく。
今日の夜は、興奮してなかなかな眠れなかった。
杪夏のキッスの事を思い出して……
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