Ｚ「スーパーネーチャーは入れたい。なぜならば横溝賞だから」

Ａ「なぜならば、が、接続詞として機能していない気がするのは、気のせいっすかね」

Ｚ「？？？？、？、？？」

Ａ「あー、そうなりますか、そうなりますよね。横溝作品ってスーパーネーチャー、超常現象的なものって少ないですよ、実は」

Ｚ「いやいやいや、八ツ墓村は？」

Ａ「あー、アレはそうですね、じゃあ八ツ墓村以外は？」

Ｚ「犬神家の一族は？　犬神佐兵衛翁は？」

Ａ「あー、映画版に毒されてますよ。それ。蛍光ペン片手に原作を読み直してください。本屋で買ったやつが一つあるなら古本屋で調達した文庫本でいいですから。あの話は無理筋を押し通したからこそ魅力的な見立て本格ミステリの傑作なんですから。犬神家のドンのおしょろしさは徹底的にリアリストな点ですよ。あの遺言状っていじめっコみたいにただ底意地が悪いようでいて、嫌がらせよりも実務的というか、あのジーさんを怨んでいる人たちから×××××を守るためには超効果的ですからね。映画では裏で麻薬をつくることを匂わせた製薬会社という設定になっていたせいでジジイに悪辣な印象が与えられていますけど、原作は製糸会社で、時代背景を考えれば至極まっとうな実業家ですからね、あのジーさんは。写真だか、肖像画だかがガチャーン、死霊の声がワワワワ、みたいなのは映画オリジナル、映像的なこけおどしですから、確か」

Ｚ「おしょろしさってのは、恐ろしさね」

Ａ「スーパーネーチャー、超常現象的なものを応募原稿に入れ込むのは積極的に反対しませんけど、ミステリー、それも本格とあわせるのはハードル高いっすよ。ちょっと今日語りすぎている気がしてコエーっすけど、本格ミステリの整合性をつけられないところの落としどころとして、都合よく非論理を持ち出したと解釈されかねませんよ、それ。よほど効果を考えてやらないと手抜きにしか見えませんって。細部まで伏線はって回収をしまくるよりも格段に難しいと思いますけどねぇ」