第9話  休ませてくれないか!?

 ゆらゆらと揺れるバスの中。またしても俺は二人の美少女に挟まれ窒息死しそうだった。いろんな意味で。


「二人が付き合ってないってことは零君フリーってことだよね」

「ちょっと栞!零くん取ろうとしてるでしょぉー」

「別にいいじゃん。だって琴葉のものでもないしー」


 早くこの修羅場から逃げたい。

 なんかこの旅行落ち着きのない2日間だったな……

 バスを降りて解散し家まで帰ってソファーに寝転がる。


「あら、零帰ってたの。旅行は楽しかった?」

「うん。楽しかったけど疲れた」


 エプロンを着けた母がテレビの電源を付けながら言った。


「でも今まで彼女もいなかったあなたがあんな可愛い子たちと旅行だなんてねー」

「可愛い子たちって、母さんあの朝起きてたのか?!」

「うん。琴葉さん可愛かったわよ〜」

「はぁ……」


 俺の母はこういうことにだけには鋭い感を働かせる。

 普段の生活にも生かして欲しいものだ


 ピーンポーン


 ん? こんな時間に誰だろう……

 最近、うちに来る客が多いいなぁ。多いと言っても琴葉と栞ばかりだけど。


「こんばんは、今日からお世話になります!」

「え?」


 ドアを開けたらそこには大きなリュックを背負った琴葉が立っていた。


「いやいや、全然意味分かんないんだけど。何が今日からお世話なの?」

「だから〜今日から私もここに住むの!」

「お引取りください」


 俺はドアを締め鍵をかける。それでも琴葉はドアを叩いて帰らない。


「おいおいうちは母さんと住んでんだぞ、琴葉も一緒には住めないって!それに琴葉の両親だって心配するだろ!」

「私の家は大丈夫なのぉ!二人共いいよって言ってくれたしぃ〜」


 どんな親だ!? 娘が家を出て男の家に泊まるんだぞ?


「ちょっと零、何してるの? お客さんを入れてあげなさいよ」







 結局こうなったかぁ……


「じゃあ琴葉さんはここの部屋使ってね。隣の部屋は零の部屋だけどいいかしら?」

「はいっ!大丈夫です!」

「まさか琴葉さんが零と付き合ってたなんてねー なんで言わないのよぉ零」


 言えるわけないだろ!?脅迫されて付き合い始めた仮の恋人なんだから。

 それに琴葉も、付き合ってるなんて母さんに言ったら栞が来た時面倒くさくなるだけだろぉ……もう。


「琴葉、このことはくれぐれも栞や他の人には内緒だからな」

「うんうん〜」


 もう心配になってきた。旅行の後だっていうのにまた厄介事が増えてしまった。

 俺を休ませてくれないか!?

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