第8話  夏休みと海 二日目はガチ修羅場

 二泊三日の旅行に来た俺たちは一日目を終え栞の別荘にある個室でそれぞれ就寝した。


 そして二日目。何かに押しつぶされそうな悪夢を見て起きた俺の身体の上には美少女が乗っかっていてなんとも不思議な状態だった。


「あの……栞さん?」

「……ん、ん? なんでウチの部屋に零君がいんの?」

「いや、ここ俺の部屋なんだけど」


 栞になぜこのようなことになったのか聞くと、はっきりとはわからないが夜トイレに行った後寝ぼけて俺の部屋に入ってしまったらしい。


「てかこれ琴葉にバレたらやばいヤツだね!」


 いやいや、やばいじゃ済まないかもしれない。

 もしかしたら取り上げられた勉強道具捨てられるかもしれないしもっと酷いと俺自身が海に沈められてしまうかも……


「零くん顔色悪いね。大丈夫?」


 全然大丈夫じゃない。なんとしてもここだけは切り抜けないと……


「零くーん!栞がいないんだけど知らない?」

「し、しらない!知らない!」


 部屋のドアの外から琴葉の声。絶体絶命のピンチだった。すると栞がクローゼットを指差し小声で言った。


「ウチがあそこに隠れるからドア開けて琴葉に俺は知らないアピールしてここから離れさせて!」

「わかった」


 そして栞がクローゼットに隠れたことを確認しドアを開けた。


「おはよう琴葉。どうしたの?」

「いやさっき言ったじゃん。栞がいないんだってば」

「そうだったな、俺も知らないな。買い物でも行ったんじゃないのかな」

「そうかな……そういえば私たちのこと誰にも言ってないよね?」


 うわぁ。災厄なタイミングでこの話題。栞にも秘密にしてるからこの状況はかなりまずい……


「あ、あぁ。その話はリビングで話さない?」

「え、なんで? 栞が突然帰ってきてもまずいしここでいいじゃんよー」


 ガチャ、ソー ガチャ。


「えっ!、栞がなんでこんなところにいるの!?」

「そんなことより二人共ウチに秘密にしてる事あるよね」

「えっ!それは、えっとぉ……」


 やっぱこうなったか……まさかクローゼットから出てくるなんて……

 結局この状況俺が一番不利じゃないか? 二人共の秘密知ってるし。






「で、二人がウチに内緒にしてることってなに? 答えて」

「いやぁ……しょうもないことだし聞いてもなんの特もないよ?」


 なんとかしてまぎらわそうとする俺とその後ろでうなずく琴葉。


「しょうもなくてもいいから答えて!」


 琴葉の方を見ると諦めた顔で頷いた。これ以上仲のいい友達に隠し事をしたくはないのだろう。でも俺たちの関係を知ってしまったら栞は軽蔑けいべつするかもしれないしもっと酷いとこのことを言いふらされる可能性だってある。そんな子ではないと思うけど。


「俺たち本当は付き合ってないんだよ」


 はぁ……ついに言ってしまった。ごめん琴葉、俺……


「へーやっぱしそうだったかー」

「「えぇぇぇぇ?!!!!!」」






「いやいや待て、俺たち誰にも言ってないんだぞ?」

「うん。ウチもはっきりとはわかんなかったんだけどね」

「いつから気づいてた?」

「最初に零君と喋ったときあたりからかな」


 ほんとに最初じゃねぇーかぁ!!!


「でもなんで……」

「だって恋人同士なのに苗字で呼び合ってたしお互いのこと何も知ってなかったじゃん」


 女子の洞察力恐るべし。それにちょいギャル女子だし。


「ねえ、次は私の質問なんだけどさ……なんで零くんの部屋のクローゼットから栞が出てきたの?」


 くぅっ!、やっぱり誤魔化せなかったか……


「そ、それはだな。二人でかくれんぼしてたんだよ!」

「でもなんでそれ言わなかったの?」


 またしても痛い!女子って恐ろしっ!


 そして今朝あったことを正直にすべて話し何故か俺だけこっ酷く叱られる。


「ふーん。二人で一緒に寝たんだー」

「まぁ……そういう事にはなるけど。でも俺たち恋人同士じゃないし」

「ダメなものはダメなのぉ!今日は零くん二時間正座だからね!」

「そ、それはちょっとぉ……」


 こうして二日目は朝から二時間別荘のカーペットの上に正座させられその後は外が嵐だったので別荘の中でダラダラ過ごした。












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