第6話  夏休みと海 朝から修羅場なんだが……

 夏。それは男のロマンであり一年に一度やってくる四季の中の暑い季節。俺は琴葉とその友達の栞と一緒に海に行くことになり今日はその一日目。リュックには夏休みの課題や勉強道具そして俺の命、ライトノベルをぎっしりと入れこの二泊三日の旅行を有意義に過ごすために必要な準備を施した。他にも持って行った方がいい物を考えているとインターホンの音が鳴る。まだ朝早いのに誰だ? と思いながらも玄関を開けるとそこには俺の仮の彼女琴葉が荷物を持って立っていた。


「零くんおはよう。栞はまだ来てないの?」

「まだ六時過ぎだし来ないだろ」

「でも栞が零くんの家に六時集合だって」


 まんまと栞に騙されてる。栞もひどいもんだな……


 外で待たせるわけにもいかないので仕方なく俺は琴葉を家の中に入れた。


「へぇー。零くんの家初めて」

「当たり前だろ。この間までただの顔見知りだったんだしな」

「そーだったね。零くんのおかげで告白されることもなくなったし私零くんと付き合って良かった」

「そ、そっか……」

「私、告白されるのも最初は嬉しかったんだ。でも好きでも好きでもない人と付き合えないし断ってしまうと勇気を出して告白してくれた人に酷いことしたなって罪悪感感じて……私ってバカだね」

「いんじゃないのか? 琴葉が罪悪感を感じることはないと思うし相手だってフラれる覚悟で告白してるんだ。琴葉はその告白を真剣に考えて返事してあげるだけでいいと思うけどな」

「そーかなぁ。ごめんね重たい話題出して」


 モテたこともないし付き合ったこともない俺でも少しは分かるような気がした。





 それから俺たちは栞が来てから近くのバス停まで歩きお台場行きのバスが来るのを待っていた。


「ねぇ。栞ってなんで零の家知ってたの?」

「それはウチと零君の〜」


 ややこしい言い方するなよ、おかげで琴葉の冷たい眼差しが……


「ふーん。私に隠れて浮気してたんだ〜」

「いや、別に浮気って訳では……なぁ栞からもなにか言ってくれよ」


 そして栞はニタニタ笑いながら言った。


「今回は助けられないな〜ウチは浮気してる気分だったしね」

「へッ!?」


 おいおい、これから楽しい旅行が始まるっていうのに序盤から修羅場なんだが!

 この調子だと俺まじで死ぬぞ……


「あ、バスがきたよ!まだ到着予定の5分前なのにね」


 もう5分ここで待ってたら俺はただでは済んでいなかったかもしれない。

 俺はバスの運転手さんに感謝の気持ちを込めお辞儀してバスに乗った。





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