第4話  早朝からのボランティア

 月曜日の学校は憂鬱である。成績優秀な俺でも2日ある休みが終わってしまうと気持ちも下がるのだ。まぁもうすぐ夏休みなんだけど。


「零君おはー」

「おはよう栞」


 先週のバイトの後琴葉に『彼女がいるのに他の女の子と仲良くしすぎるのはダメなんだからね……』って言われたものだから自分からは話しかけずらい。


「この間はありがとね!次の日から店長があの子は良かった、また来て欲しいって何度も言ってたよ。零君はやっぱりすごいや」

「いやぁ栞が居なかったら俺緊張して何もできなかっただろうから……」


 最初はどうなるか心配だったけど栞がリードしてくれたおかげで俺も安心して仕事がこなせた。それに栞が誘ってくれなかったらあんないい経験できなかっただろうし。


「零君は優しくて頼りになるね!」


 彼女は笑顔でそう言うと学校の方へ走って行った。





「お前らツベコベ言わず東大へ行けぇ!」


 そう言いながら生徒に圧を飛ばしまくっているのは俺のクラスの担任をしている西園寺元帥さいおんじげんすい先生だ。

 日曜の夜に放送されているテレビドラマの影響なのか最近『東大に行け』としつこいほど言っている。

 勉強を教える才能はあるのだがやたら熱い熱血教師だ。


「おい!氷高!」

「は、へい!」


 突然名前を呼ばれ変な声が出る。


「来週の土曜に先生とボランティアに参加しないか?!参加賞にアクエリが二本ももらえるぞ!」

「いや〜遠慮します」

「おいおい!じゃぁ俺のアクエリもやる!これでどうだ?」


 いやいや、別にアクエリが少ないから参加しないって訳でもないし俺ポカリ派だし。

 まぁポカリでも行かないけど。


「仕方ねーな。だったら長谷川、お前一緒に行かないか?社会経験だ!」

「え?なんで私なんですか?」

「お前はボランティアに向いてそうな顔してるからだ!」


 なんて無茶苦茶なおっさんだ……


「先生ー琴葉が行くなら私も行きたいです〜」

「そうかそうかなら決まりだな」


 ほぼ強制参加じゃないか。良かった〜俺は休みの日を有効に使うことができる。


「「零くんも行くよね!」」

「えっ?!」






 土曜日の朝5時。

 朝早くから俺は寝過ごすつもりで居たのに母さんが栞を家の中に入れてしまい俺は叩き起こされてしまった。ボランティアって、なんでこんなに早い時間からするんだよ。


「さぁ、お前ら!東大…いやボランティアに行く準備はできたかぁ!」


 今の間違えわざとだろ。それにもう集合の公民館着いてるし……


「おはよう零くん!」


 そう言って俺の前までやって来たのは俺の彼女(仮)の長谷川琴葉はせがわことはだ。肩まで掛かった綺麗な髪。今日は白いカーディガンに合わせた黒のパンツといういつもより大人っぽい雰囲気の服をきていた。まぁ美少女はなに着ても似合うんだろうけど。栞はと言うと七分袖のパフスリーブ、ロンTには思い切ってミニ丈のショートパンツを合わせていて生脚が美しい夏コーデ。


「あっ!この間買った服!ちゃんと着てるんだ……」

「まぁな、買ったものは使わないとだし……」

「スマホのキーホルダーも付けてるんだ」

「琴葉も付けてるじゃん」


 なにテレてんだよ。嘘の恋人なんだから……


「こらこらそこでイチャイチャしてないでラジオ体操するよ!」

「「してない!!」」






 ラジオ体操が終わり俺たちはグループに別れ近所のゴミ拾いを始めた。タバコの量が多くて面倒だなぁ。きちんと灰皿やゴミ箱に捨てて欲しいものだ。俺のいるグループは知り合いは琴葉だけであとの人はほとんどが高齢の方ばかり。でも皆優しくて休憩時にアメをくれたり気さくに話しかけてくれる人ばかり。意外と楽しいかもしれないと思った。


 この日のゴミ拾いコースはすべて周りまた公民館に帰ってきた。栞は先生とだったので楽しくないかな? と思っていたのだが楽しそうに話しながら帰ってきた。


「そっちはどーだった?」

「うん、沢山ゴミも取れたし少し楽しかったかも」

「そっか!」


 こうして俺たちのボランティアは終わりアクエリをそれぞれ二本(俺は四本)もらって家に帰った。




 その夜、風呂から上がり頭にタオルを被せスマホを手に取る。すると三件の通知がきていて一つは栞からの『今日はおつかれ!』というメッセージ。もう二つは琴葉からだった。


『ボランティア楽しかった。零くんが横に居てくれたおかげかも』

『でも次、栞のことエロい目で見てたらこの間のことバラすからね!』


 あの時のバレてたのか……

 ん?俺また脅迫された?!








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る