第2話 初めてのデート
俺には彼女がいる。
それも美少女で友達も多く男子からモテモテ。
そんな子が俺の彼女なのだが、恋人というのはただの設定にすぎない。
放課後、俺と
たまたま帰る方向が一緒だったので好都合だ。
「ねぇねぇ、今度の日曜日って空いてる?」
「うん。たぶん空いてると思う」
ま、まさかデートのお誘い?
まさかな……
「この前オープンした駅前のショッピングモールに一緒についてきてもらいたいんだけど」
「え、それって…デート?」
「まぁそんなところかな」
そんなあっさりと認めていいの?
もしかして俺のことが好きだとか?……
調子に乗るな俺!この子は告白されるのが嫌だから……でも俺とデートする方が面倒くさくないか?
「この
そういうことか……
俺たちの関係は嘘の恋人。
付き合っているとはいえお互い好き同士ではない。
「それで証拠ってどうするんだ?」
「ペアのキーホルダー買うとか2ショット写真を撮るとかかな」
「まぁそれだけの証拠があれば大丈夫だろうな」
「それじゃあ日曜の1時に駅の横にあるコンビニ集合で」
「わかった」
そう約束し俺と琴葉は別々の方向へと別れた。
日曜日。
朝起きてからずっと俺はソワソワしていた。
デートって何着て行けばいいんだよ!
ダサいとか言われたら泣くかも……
結局俺はクロいTシャツにクロのチノパンといつも身につけている服を着ることにした。
約束の場所に着いたのは言われた時間の10分前。
俺はコンビニで気に入っている紅茶を買ってから外で琴葉を待っていた。
すると琴葉の姿が見えこっちに向かって歩いてくる。
「おはよ」
「おはよう……」
今まで制服姿しか見たことがなかったので少し新鮮に感じ言葉を失う。
琴葉の私服はとてもおしゃれで、センスのない俺とは大違いの着こなしだった。
それに近づくといい香りがする。
むちゃくちゃ可愛い、なんか悪いことしてるみたい……
「じゃあ行こ!」
そう言って琴葉はショッピングモールの方へと歩き出し、俺はその後ろを追いかけた。
彼女とのショッピングが始まり、まずはブティック・ショップ《服屋》に入る。
それから琴葉は服を棚から取り俺の方を見て言った。
「零くんって服それしか持ってないの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……」
「分かった〜センスないんでしょ」
「ど、どうだろうね〜」
「図星みたいなので私が零くんのために服を選んであげましょう〜」
なんかデートぽくなってきたし琴葉もノリノリだな。
案外嘘の恋人というのもいいのかもしれないと俺は思った。
メンズファッションコーナに入ると琴葉は派手そうな服を持ってきて言った。
「これ着てみてよ!」
「え、今?」
「今しかないでしょ!ていうか今着てるその服ダサいよ?」
「え……」
やっぱり言われたぁ〜
服のセンスなくてすみませんねッ!
「零くんいつもどうやって服選んでんの?」
「マネキンが着てるやつ買ったり古着屋行ったりかな……」
「だからだよぉ〜。さぁ!早くこれ着てきて!」
そう言われ俺は試着室に入る。
うわぁ、派手だな〜
渋々俺は琴葉の選んだ服を着てカーテンを開けた。
「おぉ〜。似合ってるじゃん!私ってセンスいい〜」
「自分で言うな。それにしても派手すぎないか?」
「いやいやコレが普通だから」
その後も買い物は続き俺はもうクタクタだった。
「あの、琴葉さんそろそろ帰りませんか?」
「え〜まだ買いたい物あったのに〜。仕方ないなぁ」
4時間以上買い物袋をもたせられている俺の腕は限界を迎えていて
これ以上持ってたら肩が粉砕するレベル。
それからショッピングモールの外に出た俺たちは歩いて帰ることにした。
永遠に続くような長い道のりを歩き、そして俺の腕も末期をむかえていた。
するといつもの分かれ道が見えてくる。
はぁ、もう少しだ。
すると少し前を歩いていた琴葉が立ち止まり俺の方に振り返って言った。
「今日はすんごく楽しかった。今日の零くんは恋人としても100点だったよ」
「うん。俺も楽しかった」
「そーいえば私、零くんのRINEもってないから交換したいんだけど」
RINEとはメッセージや通話が無料でできて誰しもが使っているアプリである。
「でも俺たち特に話すこともないような……」
「だけどRINEもってないのバレたら色々とめんどくさくなるしな〜」
「それもそーだな」
万が一のこともあるだろうし俺は琴葉と連絡先を交換した。
こうして俺たちのデート(仮)が終わりそれぞれの家に帰っていった。
家に帰ってスマホを確認すると琴葉からの着信があった。
トークルームには二つのメッセージがきていた。
『今日撮った2ショット。一応送っといた』
『(写真)』
写真の中の二人は本当の恋人のように写っていた。
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