第1話[  転生、そして目覚め  ]

『殺してやる』


自分が"元"人間であったと、そう気づいた瞬間、まだ幼いはずの脳内を埋め尽くしたのはそんな言葉だった。








生まれ変わった時、自分には前世の記憶がなかった。


鮭として生まれ変わった自分は、前世の事など何も知らずに、ただただ鮭としてその生を全うしていく……………………はずだった。

だが、自分の人生…魚生は、唐突に終わりを迎えた。

——"自分の前世を思い出す"と言う形で。


そして、それを思い出させたのは、他でもない奴。

…前世で俺を、そして"アイツ"の人生を締め括った、憎き敵である、奴だった。



『クマの手だ』


襲われた時に自然と浮かんだその言葉は、鮭であるはずの自分に疑問を抱かせた。


クマ


クマ?


クマ



ひれ?


ひれ


……手


手?


なんで?


しってる


知ってる?


何を


それは、ぼくが


おれが


俺?


俺……………









………ああ、"俺って人間だ。"


その瞬間、俺は全てを思い出した。





——俺は、元人間だ。



——俺は、アイツを助けられなかった。



——アイツは、死んでしまっていた。



——俺とアイツは、殺されて、死んだ。



——誰が、俺達を殺した?



——俺達を殺したのは、熊だ。







———俺は、熊を、殺さなければいけない。


怒りと憎悪に染まった眼で、俺は眼前に聳えるそいつを真正面から捉えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【熊殺しのリバーサイド】SS のて @note_note0408

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ