【熊殺しのリバーサイド】SS
のて
第0話[ 記憶 ]
街の喧騒と混ざり合った蝉の声が、身を焼く暑さと共に自分を包んでいる。
落とした買い物袋を気にすることもなく、ただただ開けた扉の前で呆然と立ち尽くした自分の目には、"赤"。
赤……そう、床一面を喰らい尽くさんとばかりに拡がる血、鮮血の赤色が、まざまざと、目を逸らすなとばかりに見せつけられる。
眼前を埋め尽くす鮮血が、身を焼く暑さが、むせ返る程の匂いが、煩わしいとすら感じていた雑音が、その全てがここが現実だと自分に叫ぶ。
頭が何も考えられなくなっているのは、目が覚めるほどの赤故か、鉄っぽさを感じる匂い故か、この暑さ故か。
…それとも、単純に考えなくないだけか。
首をもたげた目の前の獣と目が合う。
体が、動かせない。
早く助けなきゃ こわい
逃げなきゃ にくい
なんで どこに なんで ころしてやる にくい なんで こわい ふざけんな なんで なんで なんで なんで なんで なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!
気づけば、もうそいつは目と鼻の先にいて—
——絶対に、殺してやる
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