第54話 ハッピーエンド3?
あのバイエンが顔をしかめて、話しづらそうにしていた。しばらく口を閉ざしてから、絞り出すように口を開いた。
「特定の胎内で、強引に、ある者を転生させるための禁断の魔法の施設です。」
「それは、ガミュギュンか?」
「はい。」
「それを誰の胎内で?」
「…。」
「パエラ?」
「…。多分…。」
心配そうな、二人の反応の反応を窺うような表情で、顔を上げた。
「発動した二回は、それぞれ何時頃か分かるか?」
アガレスの問いに、
「は、調べたところでは…。」
彼が言うには、ブエルの死後一カ月後と半年後だったという。
「破壊の状況から見ると、十中八九失敗したと思われますが。」
安心させるために高めに言った。彼の見立てでは、7割方失敗したというものだった。
「それなら」
「100%失敗してますわ。安心なさい。」
アガレスが話そうとするのを遮り、パエラが断定したので、バイエンだけではなく、青ざめて心配しているウァサガ達も唖然とした顔になった。
「しかし、どうして分かるのですか?」
真っ先に自分を取り戻したウァサガが尋ねた。すると、パエラだけでなくアガレスも真っ赤になって、しどろもどろに説明し始めた。
「実は…。」
と声がハーモニーした。
最初の時、と思われるが、あの夜、パエラは異常なほど不安にかられていた。
「絶対に私を見捨てませんわよね?」
と言って、アガレスに抱きついてきた。寝室で、ベットの上で、全裸で。本当に震えていた。彼女の異様な状態に、アガレスも不安を感じて、
「絶対に君から離れない!離れたくない!」
と言って抱きしめ返した。そのまま、貪るような口づけから始まり、激しく動き、パエラは激しく喘いだ。その中で、何かまとわるような黒いもの、黒い物が見えた訳ではないがそう感じたのだ、が苦痛にもがき、だんだんと消え失せていくのを感じた。
「それで、4回目で完全に消えたというわけですね?」
ウァサガが呆れたという顔をして確認した。二回目も同様だった。ただ、違うのは第二子を、長男を身籠もってかなり腹が大きくなった頃だった。安定期に入ったとはいえ、いや安定期に入ったからといって二人は…。
「あ~あ、分かりましたとも。お二人の愛の力が勝ったというわけですね?めでたいことですわ。本当に。」
もう嫌だ、という顔でウァサガがまとめた。バイエンが、大笑いして、
「お二人の激しい交あいには、ブエルの禁術も形無しだったわけですな。さすがに、陛下と王妃様ですなあ。」
彼の大笑いは止まらず、腹を抱えて苦しそうになっていった。
「慎重居士のあやつでも、いや、男女の営みを理解できないあやつには、4回も歓喜の交わりとは考えるもしなかったのでしょうな。」
グシオンは真面目な顔で、感心したような表情で、頷きながら言ったが、“閣下!それ以上に!”と期待する、後ろに控えた女達の熱い、期待に満ちた視線を、彼の脇に立つ巨漢の騎士が心配そうな表情を浮かべていた。
「流石、お兄様。義姉様ですわ!」
やはり第二子を孕んで、臨月も近いと思わせる第一王女マルバスアが、目を輝かせて言ったのを、その夫が目を背けながら小さなため息をついていた。
「そ、そうですよ。兄上、義姉上。」
やはり腹の大きい妻と手を組みながら、第二王子ウァレファルは曖昧に笑っていた。彼の妻は、腕に力を込めていた。
「ぼ、僕も頑張るよ!」
という顔を向ける夫セバルを、ウァサガが睨見つけた。ちなみに、彼女は一年前、第一子を産んでいる。
バイエンは、至る所に愛人作っていたが、それを棚に上げたような大きく、そして苦しそうに笑い続けていた。
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