第53話 ハッピーエンド2?

 舞姫衣装の女ベレトアが、アガレスとパエラの前に立ち、防御結界を展開させながら、衝撃弾を魔法で放つと、大薙刀を振りかざした女騎士シュトレア、まずは大剣を手にした武器をいくつも持った巨漢の戦士エリゴルと勇者イボスがチームワークよく斬りかかる。それを、アガレスの近衛兵の何人かが、弾の早込めで発砲、魔法修道士・女、エルフの士官が魔法攻撃を放った。グシオンはというと、化け物妻の攻撃を巧みに避けながら、ここかと思えばまたまたあちらというように、変幻自在に攻撃を加えた。アガレスとパエラは、彼らに支援魔法を使う。ウァサガは、駆けつける将兵を、混乱なく配置させてゆく。

「ぎゃあ!」

 勇者イボスの聖剣が、化け物妻の腕二本を切り落とした。

「再生などさせるか!」

 いつの間にか、女魔王アウマも参戦していた。

“おや、いつの間に?”“あらあら?”

「別に…、そんな訳では…寂しいから追って来たなどということなどは…。」

 こんな場面にかかわらず、彼女は顔を真っ赤にして、必死に弁解をした。

「はい、はい、分かりました。」

「恥ずかしがっても、動きは止めない!」

 勇者イボスも照れ隠しで苦笑して見せた。そのやりとりを見てか、化け物妻は怒り狂ったように、傷を負うのも無視した、捨て身のような動きで攻撃を始めた。しかし、それ故に隙ができた。

「今です!撃てー!」

 ウァサガの言葉に、アガレスとパエラの支援魔法を受けての銃砲、魔法の一斉射撃。さっと、皆が避け、全弾直撃。さすがに、化け物妻もひるんだ。

 そこにグシオン達が一撃を加えた後、勇者イボスと女魔王アウマの渾身の魔法を纏った聖剣と魔剣が突き刺さった。さらに、二人が必死で魔力を注ぎ込むと、ついに体が裂け、ついに倒れた。するとボロボロに体が崩れて、異臭を放った。

「ハイエルフの作った化け物じゃないの?」

「ダークエルフのではないの?」

 エルフが二人争っている中、魔法で燃やし、強い酸で片付けた。部屋が焼けただれるのも、酸で汚れるのも構わずに。さらに、この部屋を魔法で浄化し、しばらくの間要注意場所として、使用を禁止して警戒地区にした。

「全く、私の偽者を見つけて、しかも陛下のもとにいくのを見て、私のところに来るなんて、どういう頭をしているのですか?」

「だって、お前が心配で…。」

 ウァサガと彼女に叱られる彼女の夫セバルの間に立って、宥める役をアガレスが買って出た。侍女達に死者が出なかったが、重傷者が多数出た。化け物妻の従えていた女達も魔獣化して、駆けつけるウァサガやグシオン達は交戦、倒さなければ、進めなかった。

「魔界でもおらんぞ。聞いたこともない。どこから連れてきたのだ?」

は女魔王の言だった。

「本当に、これで終わったのね。」

 パエラが一瞬、またふらつきながらもしっかり抱き抱えた赤子を見つめながら、呟いたのは、その事件から1年、ガミュギュンの死後4年後のことだった。ブエルの死後1年少し後のことだった。

 ガミュギュンの死後3年、ブエルは亡き主の息子を支え、北方の遊牧民を初めとする人間亜人諸国・部族さらには魔族までとの提携を維持し、国内の統一、安定、さらには亡き主の無念を晴らすための大遠征の準備、そのための国力増強に八面六臂、昼夜兼行で活躍していた。ことあるごとに、隙あらば敵となる相手、元々貧しい、本国からの膨大な支援でその繁栄を維持してきた地域、バイエン、グシオン率いる軍との要地争奪戦をしながらの中でのことである。困難を極めたが、彼は何とか実現したのだ。

 そして、南伐軍の大軍の前でその正当性を、ガミュギュンへのあくなき純粋な忠誠心をちりばめた演説の後、現在の主に一礼し、彼から言葉を賜り、それに答えるため頭をあげようとして、倒れ、そのまま、その生涯を終えたのだった。

 彼の妻が、その正体を現して(?)アガレスとパエラを襲った理由は、まさにそれだった。ブエル亡き後、彼の代わりを担う者はいなかったからだ。何百人まとめても無理だったのだ。まとまって何とかなる体制を作れなかったのだ。彼を助けるためにも、彼の後をになうのにも。そのため、彼は過労で倒れたのだった。

「ガミュギュン様が、陛下がおれば…。」

 ブエルがガミュギュンに策を提言すれば、ガミュギュンの一声で採用され、実行されたものだった。それが、彼なき後の3年間は、何度も説明、説得をしなければならなくなった。説明、説得、根回し、裏工作はやっていたが、彼が、いなくなってからのそれとは質が異なった。少なくとも、彼にはそう思えた。それも、過労のの原因の一つだった。

 ブエル亡き後、もはやガミュギュンの帝国は、瓦解するしかなかった。それでも、ブエルが準備した軍団は、大きな存在だった。ブエルの遺志を守り、侵攻しようとする者もいた。彼らの主張に抵抗出来ず、その軍団は進発した。

 その軍団は、グシオン、バイエンを初めとする軍に大敗した。それを見て、ガミュギュンの息子は、投降してしまった、抗戦派の非難の嵐の中で。彼は無能で、ガミュギュンの血が入っていなかったのだと噂され、赦されてそこそこ広い豊かな領地を与えられると、妻と妹と穏やかな、静かな生活を送り、生涯を終えたのだった。しかし、彼の行為が平和を速くもたらしたと言える。

 大部分は、彼に従ったが、抗戦派は各地に拠って抵抗を続けようとしたが、数ヶ月で一掃された。そして、内乱も、外国勢力の侵攻も終焉し、内外ともに平穏がもたらされた。

 王都に帰還したバイエンが、ブエルの館の地下に奇妙な施設を発見したと、アガレスとパエラに報告した。ブエルが造らせた魔法、禁断の魔法施設である。彼が発見した時には、破砕していたが、関係者を探し、捕らえて自白させたところ、彼らも目的、性格は分からなかった、知らされていなかったことが分かった。二度発動されているが、一度目で壊れ、かなりの期間をかけて修理をし、再度発動して、また壊れ、国軍の侵攻が進み、施設の管理者達も逃げ出して、壊れたままで放置されることになったのである。

「工事に従事していた者達も、動かしていた者達も分からない物を、禁断の魔法施設だとどうして分かったのだ?」

「禁術にも携わったこともありましたし、錬金術も極めましたから。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る