第10話 アキレス腱?逆鱗?
「パエラ様。最近、図書館に通われているようですが。」
自分は、入学以来、図書館に通い詰めのウァサガが、図書館にいるパエラを見つけて尋ねた。
「国のことを知っておきたいと思ったのよ。」
隣に座ったウァサガに、パエラは曖昧な笑顔を見せた。北辺のことは、一般的な知識以上のことをたいして得られなかった。ついでだから、他の地域のも資料を探しては目を通していた。
北辺大公のことは、父ダビ公爵に質問した。アガレスの話しが確認は出来た。別のある日、
「北辺大公様にとって、資金、物資の供給はアキレス腱ではありませんかを…。」
と彼女はアガレスに言った。アガレスは、難しい顔をして、
「一度は使えるかもしれないけど、大公殿の決起を覚悟しないといけないだろうね。一度は、臥薪嘗胆しても、そのことは絶対忘れないだろう、自分を潰す気だと。」
「そのようなことは考えてませんわ。」
「分かっているよ。」
「でも、理由があれば…、納得できる理由があれば、減らせるのでは?」
“私は、何を言ってるの?夫に不利になるようなことを。”いや、これは全ての可能性を想定して、対策を考えようとしているのだと思おうとした。“出来た正妻の役割!”落ち着いた顔で、茶をすすった。
「君は鋭いね。」
彼は一旦は褒めてくれた。自分のために、彼を抑える方法を考えてくれているとも考えた。過ごし安心し、心に余裕が生まれるように感じていた。
「だけどそれは、国全体が不作とかいう非常事態の場合に限られるよ。そして、速やかに旧に復するように要求するだろう。そうでなければ…後は同じだろうね。」
彼は、しばし目を閉じ、横に首を振った。“あの方は、自分の贅沢のために求めているわけではないわ。北辺領を豊かにするために必要なだけなのよ!”と言いたかったが、口から出てきたのは、
「でも、このままでは、北辺大公はますます巨大な存在となってしまって…。」
「それでもだよ。」
震える手で、ティーカップを持って口にはこんだ。“なんて小心者なの!”と思ったが、同時に、
「すみません、アガレス様。ご苦労も知らず、このようなこと口にすべきではありませんでした。」
と口にした言葉も、本心からだった。国にとって、王家にとって、頭打ち痛い以上の問題なのだ、それを前にした、彼に同情と共感も感じた。“何よ、私は。どうなっているのよ?”頭は混乱していたが、
「どうか一人で悩まれないで。私は、婚約者…。私にも、わけて下さい。」
“あ~、何同情しているのよ!あ~、そうだ、これは、この男を油断させる為よ、そうよ!”手を差し伸べて、彼の手を握った。
「ありがとう。」
彼は、心の底から彼女に感謝していた。“こんなパエラを、不幸にしたくない。”
“アガレス様を助けたい…。何考えているのよ、わたし!”
パエラは、ウァサガに、小さな声で、アガレスとのやり取りを話した。
「そうなんですか?」
考え込んだ。パエラがじっと見つめていることに気がついて、慌てて、
「北辺大公様の、少し強引なやり方は、結構人気がありますわ、確かに。不正をした役人を直接成敗した話しとか、有力者に阿って弱い者に不当な判決をした裁判官を蹴り倒して、逐いだした話しとか、庶民には痛快なこととして聴いていますわ。愛人の持ち方も、好感をもっと人が多そうですが、ロマンに満ちたやり取りも聞こえてきていますね、誰が伝えたのかということもありますが…。」
「え?そうなの?」
「庶民の噂話ですわ、貧乏伯爵家ですから、そのような者達とよく見知っているので。でも…。」
彼の近くにいて、彼の魅力を感じ、そのうちに彼に助けられ、思いを秘めていられなくなって…、そして、彼は温かく受け止めるといパターンだという。“う~ん、あの方らしいけど…。”
それから、思いついたというふうな顔で、
「北辺領から流入してきた者達を知っていますから、話しを聞いておきましょうか?パエラ様が、ご関心があるようですから。」
「いいの?大変ではない?」
「私も、パエラ様のお話を聞いていて、関心が出てきましたから。」
「では、お願いするわ。でも、無理はしないでね。」
そして、そうこうしているうちに、第三王子が産まれたのだった。“あの頃、国王陛下もよくやるわとかお目出度いわ、としか思わなかったものだけど。”
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