第5話 シャーレイ視点
私はその瞬間、運命という物がこういう事を言うんだと、そう思った。
あの忌々しい者たちが作った聖物に追われていた。敵意がバレてしまっていたのだ。あの異常者のせいで人々は苦しむばかりだ。それも姉様の件も絶対に許さない。けれど彼は強い。勝てない。一般人でも。かろうじてS級相当の冒険者で五分五分といったとんでもなく異常な能力の持ち主だ。普通に作ったゴーレムですら生きている扱いになるのだ。とてつもない能力。努力じゃ追いつけない。そんな状況で私は縋るように二年前、異常者達が来たその数十分後に起きた謎の絶望の怨念騒動の元凶があるとされている絶望の森に近づいた。そこならなぜか聖物の動きも遅くなったり弱くなったりするからだ。だがそれでも膠着状態が続いていた。
だがそうして数分後。とうとう痺れを切らした聖物が私を狙ってきた。私は兵士の内の一人が守ってくれて無事だったが馬車が倒れてきてその上それが壁となって抜け出せなくなってしまった。もうここまでなのかと思った瞬間、声が聞こえたのだ。
『アァ、モッタイネェナァ。モット気張レヨ?状況ハモウスグ改善サレル』
幻聴かと思った。けどその声はこういった。
『ソコノ隙間カラ外ヲ見テミナ?』
言われたとうり上を見ると…。
上から人が落ちてきた。
その人は手から青い何かを出すと、たちまち聖物を溶かしてしまった。
何だ。あの人は…。鋼鉄よりも硬いあの皮膚を…あの青い液体だけで…。
「ここです!ここにいます!誰か手を貸してください!」
「お嬢様は無事だ!だが瓦礫に埋もれている!応援頼む!お嬢様!待っていてください!すぐに救出します!」
「さっきの男の人は引き止めておいてください!話がしたいんです。」
「え…?あっ、はい!」
早く男の人と話してみたかった。
助け出された私はすぐにお礼を言いに行った。その人は言葉使いが綺麗で凄く優しそうな人だった。幾つかの会話をしていると、こんな質問が飛んできた。
「“救世主”共ってどこに居ますか?」
「「「「「「「「「「……………………………………。」」」」」」」」」」
その瞬間、私は疑ってしまった。この人もあの異常者達と一緒なのではないかと…。だがそのあとの彼の言動で私は……私は…。
彼に従属したくなった。
私の家系は運命の相手が現れるとその人に従属したくなるという不思議な血筋を持っている。私はこの時ほどこの能力をありがたく思った事はなかった。
そして私は必ず彼の力になると決めた。
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