(四)-4(了)

 奈々さんは「今回は女性に誤解させちゃったようですね」と続けると、はにかんだ笑顔を見せた。

 私の三歳歳上なら今年二七歳ということになる。それなのに、この笑顔の破壊力……。もしかして元アイドル? いや、現役と言われても信じてしまうかもしれない。これは男でなくても惚れてしまう……。

 同時に私はとても嬉しくなった。私の疑いは徹が言うように、誤解だったのだ。

 今回の件で私の心の中は、今まで徹と付き合っていた中でも一番どす黒い雲に覆われていた。それも夕立どころかゲリラ豪雨並みの土砂降りの雨雲だった。でも、彼女の無邪気な笑顔は、私の心の中の疑いの雨雲を一瞬にして雲散霧消させ、すっかり快晴にしてくれたのであった。


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真夏の積乱雲 筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36 @HarunaTsukushi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ