俺、私は偽彼氏(ニセカレ)偽彼女(ニセカノ)です

さい

第1話

 北三原高等学校にはモデル並みの学年一の美少年、美少女がいる。

 名前は楠木くすきしゅん白橋しらはし千鶴ちづる

 そして、彼、彼女には一つ秘密がある──


 ***


「ねぇ、今日も春くんかっこいいね!!」と一人の女子生徒が春の袖を引っ張りながら言う。

「ありがとな!!」


(うわー女子と話すのは苦手だなぁ……)


美穂みほばっかりずるい!! 私も話たい!!」

「なら、私も!!」

「私も!!」とどんどんと女子生徒たちが春に話しかける。

「ねぇねぇ、春くんと遊びたいなぁ……」

「春くん、今回のテストも一位!! 勉強教わりたいなぁ……」


(お前ら、共通の話をしてくれぇ……俺は聖徳太子じゃないんだ……あと、袖を引っ張らないでくれ!! ドキドキするだろうが!!)


 春は作り笑いで。はははと笑った──


 楠木春には秘密がある。

 その秘密とは美少年のくせになのだ。


「春くんかっこいい!!」

「春くんと今度遊びたいなぁ!!」


 春はその外見と内面のスペックにより、めちゃくちゃモテている。

 もしかしたら、全校女子生徒の三分の一ぐらいから。

 だけど……春は女子が苦手だ。

 そのため、いつもこういう状況には──


 すると、一人の美少女、千鶴が春の手を掴む。


「これから、私たち行きたいところあるからどいてもらえる?」


 彼女がそう言うとさっきまで群がっていた女子生徒たちは道を開ける。


 千鶴が春を助けてくれる。


 春はホッとした顔で。


「ありがとよ……助かった……」

「いいよ、別に……も大変だしさ」


 二人は早歩きで消えて行った──


 残された女子生徒たちは。


「仕方ないよね……相手は学年一の美少女なんだし」

「そうだよ。そうそう!! 私たちじゃ勝てないよ……」

「やっぱり、私たちじゃ春くんは無理かぁ〜」

「そもそももんね」


 ***


 二人は人気のない空き教室へと逃げてくると向かい合うように椅子に座る。


「ねぇ、楠木くん?」

「なんだよ、白橋?」


(いや、マジ助かったサンキューだわ)


「そろそろ、、慣れなきゃいけないと思うの!!」

「何に?」

「そんなの、女子、男子によ!!」


 すると、春は首を横に振り。


「冗談を!!」と鼻で笑う。

「いや、本気だから……」


(はぁ……私も早く、男子慣れしなきゃな……)


 そう、彼女もまた、春と同じ美少女なのに男子が苦手な少女なのだ。


 二人はお互い、そのことを承知した上で偽物の恋人として生きることを決めたのだ。

 というのも、そうしないと毎日のように告白してくる。

 それに耐えられないからだ。


「それなら、白橋さんが試しに話してみろよ!!」


(ぐぬぬ……楠木くんのいじわる……いいわ!! やってやる……男子に話しかける→テンパる→『学年一の美少女』の称号剥奪)


「いいえ、試しに楠木くんが……」

「はぁ!? 俺か?」


(そうきたか……白橋さんこいつめ!! ……やってやる……女子に話しかける→テンパる→『学年一の美少年』の称号剥奪)


「いやいやいや!! 無理に決まってるだろ?」

「そんなことないよ!! だって、楠木くんイケメンだもん!!」


 そう、堂々と言う千鶴に動じない春。


(こいつ……今のやつ、恥ずかしくないのか!? くそ、やられたらやり返してやる!!)

(は、恥ずかしい!! 偽物の恋人でも、『イケメン』とか言っちゃった!!)


「そんなことない。白橋さんの方こそ、宇宙一可愛い!!」


 そう、堂々と言う春に動じない千鶴。


(楠木くん……今のやつ恥ずかしくないの!? 私だったらこんなのっ──私、『イケメン』って……)

(なにこれはっず!! 死にたい死にたい死にたい!! 恋人でもないやつに『宇宙一可愛い』とか、勢い余って『宇宙一』とかつけちまったよ!!)


 すると、二人は同時にゴホンと咳をして。


「白橋さん!!」「楠木くん!!」


(なんだよ……そろっていっちまった……なんだよ、この胸のドキドキはっ──!!)

(た、たまたまだよね? 息があったのはたまだで別に好きとかね!?)


「「さ、先にどうぞ!!」」


(ま、まただ……)

(たまたまなの!?)


「じゃ、じゃぁ、俺からいくね……」

「う、うん!!」


 そして、春は千鶴に話をした──


 ***


 次の日──


「ねぇねぇ、LINE交換しませんか? 白橋さん!!」

「そんなことより、勉強教えてください!!」

「いやいやいや、千鶴さんは俺とこの後学校デートだ!!」


 などと、千鶴を中心に群がる男子生徒たち。


(ははは……ほんと、苦手なんだよなぁ……男子)


 千鶴は作り笑いで。


「ははは……」


 その千鶴の表情を見て男子生徒たちが。


「今の笑顔可愛い!!」

「おい、写メ撮ったか!?」


(いや、苦手というより怖いなぁ……)


 すると、そこに──


「なぁ、そいつは俺の女だ。返してもらうぞ……」と一人の美少年……楠木春が千鶴の手を掴んで歩き出す。


(は、はず!! 何が俺の女だよ!!)

(ナイスタイミング!! 楠木くん!!)


「くっそ、やっぱり、白橋さんはあいつと付き合ってんのかよ!!」

「まぁ、当たり前って言えば当たり前の事だよな!!」

「そうそう……だって、春くんとか今日キャラだもん……」


 などと、諦めを見せる男子生徒たち。


 ***


 一日前──


 空き教室で。


「俺はさ、この関係で今はまだいいと思う……」


 そう言う春に、え!? と驚きの表情をする千鶴。


「だってさ、これはゲームと一緒で徐々に経験を積み重ねなきゃ解決しないと思うんだ。ほら、魔王とかレベル一で倒せねーだろ?」

「うん……」


(そっか……楠木くんの言う通りだ。早くこの関係を終わらせるんじゃなくて……徐々に終わらせるんだ……この関係もそして、克服も)


「だから……」


 すると、千鶴は立ち上がる。


(え………)


 それに釣られて、春も立ち上がる。


 そして、千鶴は笑顔で。


「これからもよろしくね!!偽彼氏ニセカレさん!!」


 その言葉にホッとする春。


「こちらこそ、よろしくな!! 偽彼女ニセカノさん!!」


 ***


 だから、俺(私)は今日も演じ続ける──


 "彼氏(彼女)"を──


        ──完──


───────────────────────


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俺、私は偽彼氏(ニセカレ)偽彼女(ニセカノ)です さい @Sai31

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