語り部?いいえ、違います。私も霊障被害者です。

嵩枦(タカハシ) 燐(リン)

プロローグ

 

「ごきげんよう、皆様」

 

 黒く綺麗な1冊の本を持ちながら、わたしは眼の前に座る方々へ挨拶した。

 

「本日の語り部を担当します。高橋タカハシ リンでございます」

 

 会場の観客達へ丁寧な声音で私は自己紹介した。

 この夜会、〘Speak-Horror‐Space〙のホストとして。

 

「本日、語ります恐怖話は皆様が良く知る"怪談"や"都市伝説"ではございません」

 

 そう…私が語るのはただの怖い話でも噂話でもない。

 

「語るは真実。一切の誇張も偽りもない体験」

 

 私がこれから語るのは紛れもない本当の恐怖体験。

 そう誰かからの又聞きではなく、私自身が経験した霊障体験談。観客の皆様方は、私の言葉を嘘とでも思っているようで、口元に笑みを浮かべている。

 私も内心でそんな観客の反応にほくそ笑んだ。

 

「ただの怖い話と侮らぬようご注意を…」

 

 私はそう言って、近くに置かれた椅子に腰掛けた。

 黒い本のページを開き、捲る。

 そこに記されているのは、本来語られる事のない物語。

 

「それでは、皆様ご静聴をーー」 

 

 私が語る最初の怖い話。

 それはーーー。

 

「これは、私が4歳の頃の話です」

 

 その時の恐怖を思い起こしながは。

 私は言葉を紡いでいった。

 

 これより明かされる本来知られぬ恐怖体験。

 題名はーーー

 

 

 STORIA〘1〙 シロイヒト

 

 

 私、高橋 燐に生まれて初めて起こった。

 本当の"霊障現象"だった。

 

 

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語り部?いいえ、違います。私も霊障被害者です。 嵩枦(タカハシ) 燐(リン) @rin20200813

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