第3話
最初は思いつきすらしなかった。
自由に世界を見てみたい。
5歳くらいのころから「仕事」をひたすらし続けていた。
今思えば5歳でなんてことをしていたんだろうと思う。
命の危機なんて割とあった……ことはなかったなー。
資料によれば4歳のころから巨人の姿に変化できるうえにしっかり会話をしていたらしい。
ちなみに5歳からと言うのも資料から。
その頃のことはほとんど覚えていない……はず。
壊してきたもの以外は。
拳銃、戦車、戦闘機、潜水艦、戦艦、ミサイル、見上げても先が見えないビル。
体に受けてきた衝撃も覚えている。
電気ショック、鞭、銃弾、爆破、毒、車の特攻。
別に痛みはなかった。
ただ、学んだことはそう簡単には忘れないと思う。
あの頃はただただ戦うことしかやってこなかったし、算数や漢字を学ぶ頃には相手をどうやって殲滅できるか体で学んでいった。
10歳くらいになるとゲームが欲しがる事があった。
実は妹に携帯ゲームをあたえていたから、試しにしてみた。
ロード画面やレベル上げに時間がかかったが、結構楽しめた。
それでも「仕事」で稼がなきゃいけない時もあった。
だから、自分でゲームのようにルールを考えた。
どれだけ犠牲を出さずに敵を制圧できるか。
人は死ねば生き返らない。
それくらいならすでに分かっていたし、難易度が高いほどゲームのしがいがあると考えられた。
結果、犠牲をださずに「仕事」をこなすことは簡単だった。
でも、「仕事」の結果に不満を持つものも多く、子供だからと罰を与えようとしてくる奴らがいた。
唯一の妹の命や「仕事」の評価もある。
賢いワタシはすぐに奴らを殲滅した。
殺したりはしていない。
3ヶ月くらい巨人の姿で生活を崩壊させただけだ。
稼ぎのいい大人たちは家を壊せばよかった。
荒事が得意な奴らの場合商売道具を目の前で溶かせば良かった。
簡単だったのは身内を大切にするやつに対しては子供でお手玉をすれば、頭を下げて泣きわめくのもいた。
14歳のころには小説、漫画、絵画の本をよく購入するようになった。
何か刺激が欲しかったのかもしれない。
刺激は簡単に得られた。
綺麗な景色を人の手であらせる絵。
一人一人のキャラクターを一言では表せないほど複雑に、でも、共感できるような小説。
恋愛や冒険を分かりやすくまとめられた漫画。
自分にはないものが貪欲に欲しくなった。
この時期は一番「仕事」が鬱陶しかったのを覚えている。
子供のまま大きくなって、脅せばなんでも言うことをきくと思う。
「仕事」の先輩から言わせてもらえば甘ちゃんどもが特うざかった。
16歳になるころには妹が「仕事」をこなしていた。
独断で。
ショックを受けたのは「仕事」をするなと言ったのに、
「嫌だ! これ以上お姉ちゃんだけに負担はかけたくない!」
という一言だ。
ストレスは溜まっていたがそこまで大ごとじゃないのは今でもわかる。
何でも出来るが取りえだったのに、妹に言われたのはやばかった。
ミサイルが直撃しても味わえない衝撃だった。
あの一撃から、まるで膨らんでいく風船のように無気力な日々を過ごしていた。
ちなみに風船に例えたのは簡単だ。
大きくなればいずれ破裂するから。
ふと旅に出たくなった何処か綺麗な場所に飛びたくなった。
気づいたからには直行していた。
無我夢中だったからどこに飛んだかは覚えてない。
まずかったのは無気力に生きていたことだ。
食事すらとっていない生活から力を使ったから当然のごとく燃料は殻になった。
で気づいたら明日華とあった屋上に言葉どおり不時着していた。
あの日も風が強かったなー。
明日華と出会ったのは運命としか言いようがないことだった。
……ちょっとキザっぽいかな。
それくらい衝撃的出会いだったってことだな。
餓死寸前で好みの顔だったから食べようとしたことがあった。
性的に。
恋愛漫画を読みあさってた影響からか美少女に弱くなっていたんだと思う。
正直、不思議な印象を与えてくるんだな。
明日華って。
その証拠にワタシの姿や力を見ても、驚くどころか目を輝かせてた。
……悪い気はしなかったけど。
ほんの少しだけ、明日華と遊んでいたい。
妹も成長したし。
少しだけ。
自由を楽しんでみよう。
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