第8話 取り調べ

「お嬢ちゃん若いのに、何でこんなことしちゃったんだい?カツ丼食べる?」


昭和ドラマの取り調べ的に、そっとエアーカツ丼を差し出しながら、エアーメモ帳にエアーメモをする。


「いや、犯罪は犯してませんから!!…………私、この見た目だから舐められることが多くて。だから、高校に入ってから少しキツめの口調を使って舐められないようにしようと思いまして…。」


下をうつむきながら、指をもじもじして話すゆっちゃん。


何かな?ここの床にバンクシーのアートでもされてんのかな?

俺は気になってゆっちゃんの下の床を見てみる。


なになに、『あっくん♡ゆりえ3/20』

ッチ!リア充じゃねぇか!!

お前ら年度末に何書いてくれちゃってるわけ!!?

これを夜な夜な消すハゲ頭の教頭ティーチャーの気持ち考えたことあるの!!?


まぁ、消えてないってことはハゲ教頭は気づいてないんだろうけど。

てか、うちの教頭ってハゲてたっけ?

まだ若かった気がするんだが。


「…あのぉ、じん君聞いてくれてますか?」


今度は俺がジト目で観られてしまった。

だからやめて!

俺の奥底のアレがアレしちゃうから!!

目覚めちゃうのよ!!!


「あっあん、聞いてるよ。もうバッチリ聞いてるよ。ほら、その山手線で乗り過ごして一周回ちゃったって話だよね?」


俺は出来る男。

英語で言ったら、スマートなメンズ。


なんかそれっぽい話をして誤魔化せるのだ。

中学の頃、梨川なかわが爆笑したこの話題ならば、ロリっ娘一人や二人くらい、意識をそらすことなんてどうってことないさぁ!!


「ちがいますぅ!!そんな変な話してませんよっ!!」


…………怒られた。

ダメだった、逸らせてなかった。バリバリにストレートゾーン入ってた。

王貞治もビックリの内角高めだった。


ゆっちゃんは腰に手を当てて、頬を膨らませてプンプンする。

なにそれ、かわいいかよ。めっちゃ萌えたわ。


「ごめんごめん、ちゃんと聞いてたから。ロリっ娘って実は苦労してるんだね。」


奥義、共感を発動!!

というか、普通に話は聞いていたんだけどね。


E判定だけど別に地面の模様を見るだけで、他人の話が聞けなくなるほどの馬鹿ではないし。


「そうなんですぅ!制服着てるのに迷子と間違われたり、電車の料金安くされたり、やたら頭撫でられたり、見下されたり、後輩に敬語使ってもらえなかったり………。って、ロリっ娘じゃないですって!!!同年代ですから!!!」


早口&高音でまくし立てたゆっちゃん。

話し終わったら、はぁはぁと息を荒くしちゃってるくらいにマジに話していた。

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