テルモノ 第二王子のお披露目式

むかしむかしそれは異世界でのお話。

王子の名はシューランデルス。これは王子と王子を取り巻くものたちの物語




「なんだ、一通りの武術はできるんじゃないか。しかも女の子にしては強いよ」

「当たり前でしょう。一人で運び屋やってるのよ。護身術くらいは身につけてるわよ。それでもいろいろ危険だしサランほどには強くなれないわ」


「いやー俺と居るときは一度もその剣抜いたことなかったから飾りだと…」

「紳士が二人も居るのに淑女が戦わないといけないわけ?」

「俺たちと居るときはいいよ。身を守れることを確認して安心した。ドレスに着替えておいでお姫様に戻る時間だよ。俺も王子に戻らなきゃ」


ここは魔術師王国で知られている小国テルモノ。シューランデルス王子の生まれ故郷であり現在も城で暮らしている。最近はサランと名乗りお忍びに出かけてはいろんな日程を崩しやすいシューランデルス王子も今日ばかりは王子としての役目を成し遂げなくてはならない。王子は16歳になっていた。


その歳から15歳離れた31歳になる二番目の王子シューデムス王子が今夜は目出たく結婚することと相成った。話自体は三ヶ月ほど前からあったのだが今日は披露宴である。国事の祭りごとだった。民には酒と先着1万名様でパンが一つずつ配られる。


既に行列はできあがりパンと酒をまつもので城内の謁見の間から城外まで一列の長蛇だ。金髪長髪深緑の瞳、細面の顔と細身の体はドレスを着せてみたくなるほどの幼顔で瞳は大きく女王似の美しい王子だ。が、性格は父親の血を引いており美しい女と見れば手をつけてしまうことで知られていた。


その王子がひと目で決めたのが最北の小国タダの第六王女カナルナニシティアだ。もちろんそんな北の大地と縁が深いわけもなく見合いで差し出してきた姫君だがこれがまた独特の美しさを持っている白くて白くて白いそしてしなやかな体だ。


このどこまでも白いまだ16歳の少女を次兄の王子はいたく気に入ってしまった。大人しく従順ではにかむところも美しい。当然ただの取引ではない。姫一人差し出す代わり年間1億の暖かき光を納入してほしいとのことだった。


暖かき光とは王国特産品のひとつのランタンだった。もともと北国用に開発されたランタンで一度つければ1週間はその温度を保ち暖炉なみの温かみを放出する。ランタン故にその広さは20畳ほどの広さしか温めないが一般家庭なら充分すぎる。これが温かみだけで熱さがなくどこにでも置けるので重宝する一品だ。


次兄の政治は周到だ。毎年5億はこれを売りに出していた。一国にさらに一億納品してもまだ余裕のある計算で職人を管理している。だからこそあっさりと姫君を頂戴してしまったわけである。魔術師王国として知られるだけあってこのような変り種の特産品を300種類以上扱っている。それの維持管理は次兄の仕事の一つだ。


そしてやっとシューランデルス王子の身支度が出来バルコニーから手を振る。ざわめきが起き、拍手の嵐が渦巻く。月に不思議色に輝く長髪をなびかせこれまた母似の顔はドレスを着せたくなるような中性的な美しさを誇っている。そしてその笑顔は人を虜にしてやまない。この城で大事に育てられた第三王子は人に好かれる。


バルコニーから下がると次は王家の客間だ。各国の王族がそこで談をとっている。

「各国代表の皆様、この国の第三王子シューランデルス王子にございます。失礼ながらもまだ王様、兄王子様は時間が取れそうにありません。このまま披露宴に入ってしまうだろうご無礼を謝りに参りました。真に申し訳ございません。


軽いおやつを用意いたしました。両手をこう広げ落とさぬようお持ちください」

そういうと魔法を唱えると各自に小さな皿が手の上にのる。食べてみてこれまた話題の種になる。魔法の種から作ったクッキーだ。種1粒でちょっとした家が建つ。まさに王族達に相応しいおやつであった。


ざわめきながら食する中、シャルファーサ王女をみつけて近寄っていく。

「シャルファーサ王女、このような大任は初めてでございましょう。大丈夫ですか?気分を楽にしてお待ちくださいませ」


「それが緊張のし過ぎでどこか一人で休めるところはありませんでしょうか?」

言いながらウィンクしてくる。王族に囲まれるのが苦手なのはわかるが仮病だ。

「ではこちらに部屋を用意させましょう。ついて来てください」


ひょこひょこついてくる。足取りはしっかりしている。やはり大丈夫そうだ。

「全く、君の王室嫌いにも根がはっているようだね。わたしは呆れてしまうよ。ここはわたしの部屋だから誰も来ないよ。少し歩かせたね。大丈夫ですか姫君?」


「聞きたいことが一杯あるのよ!まず謁見の間なんで市民がずらずら並んでるわけ?それにあんたの髪ずっと聞きたかったの。何色って言うの金かと思えば銀になるしというかじっとして無いじゃない金ベースに赤が乗ったり青が乗ったりともかくコロコロ色が変わる。それから何あの王様ご用達のお部屋豪華にもほどがある」


「この小国は豊かなのが売りだからね。謁見の間で酒とパンが配られるんだよ。それで早くから市民が来て並んでる。わたしの髪は母譲りでね遺伝だと思う。七色髪と言うのだけど実際はもっと色があるよ。最初は光の加減かと思っていたけれど夜も変わるから違うみたいだね。王客間が豪華なのは当然の配慮でしょう?」


「私の国はあんな客間は無いわ。それぞれ個室に案内させてもらうけど。それに謁見の間に一般市民が入ることは許されて無い書面にて所箱に陳情を述べることとなっているしさっきのお菓子だってあれ魔法の種でしょう?うちの城には振舞うほど買えるだけの国家予算が無いわ。七色髪ねぇ、不思議よねずっと気になってた」


「ふーっ、それで少しは気が済んだかい。王族の間に帰る?案内するよ」

「あーここに居ちゃだめ?みんな歳が離れてて話題が合わないし男ばかりだし、気分は悪くまではならないけど緊張して疲れるのは本音なんだわ」


「なら、ここに居てもいいけど大国と言えど王女を結婚式の祝いによこすとは、ちょっとかわいそうだよね。まぁ国政まで手をだしてるアンナリラシア王女みたいな人も居るけど。来てるから紹介しようか?今年で25歳になるけど若い頃はシャルファーサ王女にそっくりだったらしいよ?」


「いい。アンナリラシア王女の話は聞くけど私はあんなに立派にはなれないもん」

「どうして?こうして任務を任せられるくらい王女は自活してるでしょう?」


「私がテルモノに入り浸ってるからついでと任されただけだよ。私のは自活じゃない…反発。今でも王も兄も許せないだけ。だから結婚したくないの。困らせたい」

「前にも言ってたね。お姉様のことだっけ…結婚式が終わったら聞いていい?」


「あ…うん。ごめんね。私一人相手にしている訳にはいかないんだよね。行って」

「あまり無理しちゃ駄目だよ。しっかり休んでて披露宴は眩暈がするよ。それじゃわたしは他の方の接客があるから失礼するね」


それからがシューランデルス王子は忙しかった。一人一人重客に挨拶し、謁見の間に行き市民に礼の言葉をいい、そして失礼のない順、言わば国力を判断し披露宴の場へ一人一人案内した。見事な判断力だと称えられ改めて重客たちに礼を述べる。


それを見ていたシャルファーサ王女は本当に眩暈がしてきた。自分はかなり位の高い席に案内されている。同席の者たちをみれば一目瞭然だ。愛想笑いをし慣れない宮廷言語を使う。話は父や兄は何故来ない。結婚はいつごろだと煩くて仕方ない。


その間、シューランデルス王子は王族達の重客だけでなく豪商や魔術師に職人など特殊な客も案内してくる。時々シャルファーサ王女の元へ来て話題を変えたりして助けてくれる。これを王女だけでなく全客にやってみせてるのだ。


特技は剣術に魔術だけでなく社交術にまで及ぶことをシャルファーサ王女は思い知ったわけである。逆に言えば王子の権力はそこまでだった。政治に関与させないことを条件に女王に養子取りさせた。役どころは多く損な立ち回りがほとんどだ。


だがシューランデルス王子はその社交で市民を魅了し王族達をうならせ、見事に立ち回ることで自分の立場を確かなものにしていた。王が頼んでも首を縦に振らなくとも王子が頼めば首を縦に振らざる得ないほどの魅力を発揮して見せていた。


それがまだ16歳のシューランデルス王子の最大の武器である。剣術も魔術も怠ったことはないが何よりも人々に愛されることは大きかった。王子の立場を確たるものとしこの頃既に第三王子は存在無しに国はありえない人気をたもっていた。


全員が客席に座ると王子は恭しく王の前に膝まつきその旨を伝える。決して王や兄上を通さぬ行動を王子と言う立場のときシューランデルス王子はしない。王に報告すれば続いて兄上たちに報告する。次兄に報告された地点で祭りごとは始まった。


祝い事が始まると我先にと祝辞を述べに行く者たち。こんな時にも身分は重要視される。王族、魔術師、豪商、職人の順だ。シューランデルス王子はシャルファーサ王女の手を取ると行列の中に導いた。王女が気兼ねして。


「シューランデルス王子それでは割り込みになります」

「いいのですよ。自分の身分を考え行動をしなさい。最後に挨拶しようものならそれこそ失礼に当たります。慣れぬ任務といえど自分の国の大きさを頭から離さないようにお願いいたします」


「全くだわ。どう見ても10代の娘を他国の結婚式によこすなんて重荷もいいところです。私の前に入りなさい。お辞儀の仕方からなんて喋ったらいいか教えて差し上げます」

そう言ったのは先ほど噂した。アンナリラシア王女だった。


シャルファーサ王女をアンナリラシア王女の前に連れて行くとシューランデルス王子は最高の笑顔を見せて

「それではわたしのご友人を託しますのでお願いいたします」

といい次の戸惑いを見せているものの案内に行った。


「いいお辞儀は深々と座り込んでしまいそうなぐらいに深くよ。それから万を持してのご結婚心よりお喜び申し上げます。王と兄様の都合つかなく私のような若輩者が代表として来た事を深くお詫び申し上げますって言えばいいわ」


そう言うとウインクしてくる。確かに気さくそうだ。シャルファーサ王女は礼を述べてガチガチの体をこすると、後ろから抱きしめられて

「私の名前には意味があるわ。おてんばよ。若い頃はねっかえりすぎたから。おかげで結婚時期まで逃しちゃった」

そうアンナリラシア王女が言う。シャルファーサ王女に使ったのは王宮言葉じゃない。庶民言葉だった。それでシャルファーサ王女は顔を見上げ、笑って見せた。


アンナリラシア王女に言われたとおりに口上をを述べ席に着いたシャルファーサ王女はほとんど腰が抜けたような状態で身動きが取れない。そこへシューランデルス王子がやってきてシャンペンを一杯差し出す。王女はいっきに飲み干すと


「ありがとう。おかげで恥をかかずに済んだわ。後でアンナリラシア王女にもお礼を言わないといけないわね」

「うんお礼にこれを持っていってあげて。無類の菓子好きだからね」


「これも魔法の種?のお菓子?」

「もっと庶民的なものだよ。かぼちゃの種を乾燥させて味付けしたもの。君の分はこれ。食べてごらん。なかなかいけるから」


シャルファーサ王女は一粒食べてみる。びっくりした顔をして

「うそ。これ魔法かかってるの?めちゃ、美味しい」

「家庭菓子だよ。魔法なんてかかってないからね。庶民とはたくましいものだね」


二人は落ち着いたので少し喋っていた。王宮言葉でねと注意されながら。それを見ていた長兄が、王と話をしていた。


「噂を聞く限りシャルファーサ王女はおてんばで婚約者も破棄していると聞き存じていましたが国王よ。あの二人まんざらでもないとお思いにございませんか?」

「全くだ。どこで知り合ったか知らんが王子の配慮ぶりは特別だったな」


「結婚などしないとだだをこねている弟だが王女を押せばもしかもしれませんぞ」

「まぁ5年まて、王子は若い。あの王女の噂なら貰い手もそびれるだろうて」

と勝手な話を父兄はしていた。そう王子も婚約を嫌がっていた。若いのでそれほど問題視はされていなかったが。それよりも次兄の方が問題だったので…


披露宴も終焉を向えるとシューランデルス王子がシャルファーサ王女を連れて結婚式の主役第二王子のもとへやってくる。

「兄上、ちょっと王女をお借りしたく存じ上げますのでシャルファーサ王女に退出の許可を貰いたく存じ上げます。わたしもですがよろしいですか?王女挨拶して」


「この度は目出たく祝宴の儀、無事にすんだことを心よりお喜び申し上げます。お歳も近いですし、カナルナニシティア王女とは改めて北の国の話などお聞かせいただきたく存じ上げますが、今日はこの場にて失礼するご無礼お許しください」


「弟が連れて行くのだ王女に無礼はないだろう。そうだなシューランデルス王子もシャルファーサ王女もカナルナニシティア王女と歳が近い何かと力になってくれ」

とてもややこしい話だが王が居る限りその娘息子嫁婿はみんな王子、王女なのだ。


シューランデルスの部屋に来てシャルファーサ王女はベッドにねっころがった。

「それ俺のベッドだぜ。少しは遠慮しろよ」

そう言って王子は隅っこに座る。


「だってーもう疲れた。声も出したく無いくらい。王代理って死にそうだわー」

「だろうな。言葉一つで契約が結ばれたり戦争になったりする重役だからね。今日はもう休むかい?客間を用意してあるよ?秘密の話ならここのがいいけどね」


「面倒だからこのまま寝かせて話すから」

「いや、これでも俺好奇心旺盛な男の子なんだけど襲っていいの?」

「いや、寝るときは客間に行く話しは寝たままさせてって言ってるの」


「まぁ、今日はさすがに疲れたろうしね。いいよ。休みながら話しな」

「私が7歳の時、5歳上の姉の縁談が決まったの。まだ12歳よ。外も知らない。教養も身につけている最中、姉は嫌がった。だけど縁談は決まったわ。


35歳離れた国の豪商だった。結婚式が終わって初夜の朝、夫が起きたら自分の服で首を絞めて死んでいたわ。12歳の少女が自分の首を絞めるのよ。力が足りない。片方をドアノブに結んで両手で首を絞めたの。


夫は自分で殺してないことを証明するために私と兄を呼んでそれを見せたの。目に焼きついて離れない光景よ。それから王が呼ばれ姉は原因不明の病気にかかり死んだことにして一ヵ月後葬儀が行われた。私は毎日朽ちて行く姉を覗いた…


死ぬの苦しかったろうな。一ヶ月も放置されて悲しかったろうな。私は姉がどんなに結婚を嫌がってたか知ってる…それは悲痛なほどに苦しんでた。国の予算を微々たるだけ増やすために姉は早すぎる結婚を強要されたの。春風みたいな人だった。


だから私には結婚話を持ってくるけど、はっきり断ると諦めるの強制はしない。結婚はしないとだだこねてる17歳になった今でも…姉のことを思ったらどんな結婚も、もう耐えられる。それだけの年齢になってる。だけど結婚はしたくないの。


姉の苦しみが無駄になる。最悪な抵抗をした悲しみが薄れられる。それだけは嫌なのよ。あの光景を王から兄から忘れさせるような真似はしたくないの…」


「辛い思いをしてるんだね。結婚が幸せだなんて俺は言えないけど姉上はなんらかの形で君に幸せになって欲しいと思っていると思うよ。俺も結婚に疑問をもってるくちさ。生まれてすぐ離された母上のことを考えるとね。一人の女性を愛したい。


でも、兄上のように他に好きな人ができたら?結婚は一人の女性を思い続けるものだと思いたい。でもそうすると母上を否定していることになる。正直、結婚なんてしたくない。どうせ政略だろうしね。愛する人を結果愛人にするくらいなら…


最初から政略結婚なんて蹴っていたほうがいい。次兄の兄上もきっと一年と持たずに愛人をつくるんだろうなと思うと気が重たくなる。俺だって第三王子としてでなく、ただの息子として母上に会ってみたかったよ。結局顔も知らないけど」


「会ってみたかったって会ったこと無いの?もういないの?」

「うん。養子に引き取られた時から会ったこと無いし、もう死んでる。病死らしいけど詳しいことはわからないんだ。


そろそろ客間に帰ったほうがいい時間だよ。案内するからついておいで」

部屋をでるとカロルが壁にもたれかかっていた。

「カロル…聞いていたのかい?」


「失礼は承知で、寝室から話し声が聞こえたもので一応近衛ですから…そのまま聞かせてもらいました。始めてですね。王子が母君のことで弱音を吐くのは。おそらく王女も始めてですね。姉君のことを詳しく話すのは」


「カロル今日の話は内密に頼むよ」

「承知してます。俺はなにも聞いていなかったことでいいですね。ただ王室に連れ込んでいる以上誰なのか確認がいったまでです。これもおおやけにはできませんね。

寝室に女性を連れ込むもんじゃないですよ王子」


「とは言え、二人だけで話す場所なんて他には思いつかなかったんだよ」

「王子の立場なら当然でしょうね。俺も思いつかない。自由のない人たちだ」

それでたけ会話するととりあえずシャルファーサ王女を客間に案内する。お休みの挨拶をして戻るとカロルがため息をついてシューランデルス王子を自室に呼んだ。


「王子、本来女性を寝室に呼び込むことは相手にしろ貴方にしろ互いに覚悟がいることなのです。貴方たちは若い。だからこそ許されるかもしれませんがそれだけはご承知ください。王子の母君のことは処罰覚悟で調べてみてもいいがどうする?」


「それは止めといてくれカロル。どんな結果が出てもわたしは愛人の子で母君はもう死んでいることには変わりない。それで処罰をうけてカロルが私の側を離れるようなことがあったらわたしは悔いてもくいきれないから」


「でも王子。ならばそんなに意地になるほど悲しまないでください。女王からも王からもこれほどまでに愛されて育った子供はそうはいません。悲しいことも気になることもそして自分の立場を考えれば戸惑うこともわかります。


ですがこれほど民に愛され王子という立場を全うし、立派にご成長される方もまた珍しい。決して母君は貴方を手放したことを後悔しないような成長を王子はなされていますよ。だからあまり苦しまないでくださいね」


「カロルにそのように言い含められるように言われるとはな。本当は誰にも話す気などなかったんだ。シャルファーサ王女があまりに辛そうだったから、釣られてしまったんだろうな。もう弱音ははかないよ。王女と違い私は周りに愛されてる」


「気になりますか?王女が?」

「気にならないわけないだろう。初めて外に出た時に知り合った仲間だ。ましてやあんな話を聞いて気にならないわけがない」


カロルはそういう意味で聞いたわけではないのだが歳の割には幼さの残る二人を今しばらく観察していくしかないかなと思う。二人には結婚したくないそれそぞれの理由がある。それは恋愛さへ拒むものなのだ。


だが、しかし、このまま友人のままであったとしても二人はいずれ大国と魔術師王国を結ぶ架け橋となろう。カロルはそう考えられてならない。なら二人に最上の結びつきと喜びをしってもらいたいとおもうのだった。


カロルはシューランデルス王子の頭をぽんぽんと叩く。

「何、カロル子供みたいな扱いをして母君のことはもうわり…きっ…て…る」

泣き出した王子を抱きしめ、シャルファーサ王女のほうは根が深そうだとため息をつきながら今は子供に返った王子の心を慰めるのだった。しばらくして


「王子、恋愛結婚するんだ」

「はぁ?いきなり何言い出すんだよ。第三王子には政略結婚しかないと以前は言っといて」


「それは今も変わりないけどさ。どうせ結婚自体を拒否してるなら、結婚する時は恋愛相手にしろと言ってる。父親と同じ結果になって母親を重ね苦しむよりはずっといい。そもそも王子は愛人をつくる柄じゃない」


「作らないよ例え政略結婚で愛する人ができたとしても自分に縛り付けてていいことなんて一つもないだろう」

「愛がそれほど簡単に割り切れるなら世の男たちは愛人を作らずに済むかもな」

「半分は色好きだろう。女のことなんて考えてないのさ」


「手厳しいな。まぁ確かに一理あるが。すっきりしないでしょう一戦どうかな?」

「ああ、頼むよ。今日は案内ばかりで緊張で体が縮こまってる」

二人は武道習い場に足をはこんだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る