004_軍属ロリ巨乳VBちゃん
場面は戻って、十三歳の私です。
今生の両親とは五歳で死に別れ、奴隷商人に捕まったり傭兵に売られたりしながら生きる為の力を身に着け、今の私はフォーマルハウト連合軍に所属しています。階級は二等兵……まあ入隊間もない新兵ですよ。
ここに至るまで、超ハードな人生でしたとも。
前世での真綿で首を締められるようにじわじわ追い詰められていくのと比べ、今生は無数に並んだギロチンの下を、刃が落ちるより素早く全力疾走せにゃならんのです。しかも、今も絶賛疾走中。立ち止まったら即デッド。
想像以上に、この世界はヤバいのです。
表面的には中世ヨーロッパ風の
ですが、その発展した技術を使った戦争・紛争が恒常的に発生しており、そのせいで文化水準が中世ヨーロッパ風で停滞しているのが実状です。地獄か!
レンガ造りのクラシカルな町並みに、地上戦艦(ランドクルーザー)が停泊している光景は実にシュール。これ、どっちかってえとスチームパンクですよね。
一応ファンタジー要素が死んでいる訳でもなくて、獣人とか竜人とか、魔族や天使といった人種も存在してはいます。ただ、それらも白人とか黒人とか黄色人種という違い程度の認識です。ちなみに地球人と同じタイプは「ヒューマン」です。
……これ、別にリベラルな価値観だからではなくて、人間より十倍から二十倍も長生きするエルフや魔族も、戦争であっさり死ぬから区別が無くなっていった、という凄まじく血生臭い事情があります。
むしろ成人するまで時間が掛かる関係で、ヒューマンより寿命の長い人種こそ真っ先に数が激減。連合内では過去百年でヒューマンの総数が推移していないのに、人口分布図上での割合が三割から六割以上になっています。それだけヒューマン以外の種族がバタバタ死んでいっている……ということですね。
私の話に戻りますが、私が所属しているフォーマルハウト連合軍は、エクスペリス大陸に現存するとある一国へ対抗すべく、多くの国家が手を組んだ軍事同盟です。当然、国土も国力も大変な規模……なのですが、敵対するたった一国を相手に何年も一進一退を繰り返しています。
その一国というのが大陸中央北部に位置しながら、陸地面積の半分を占める超巨大国家なんですけどね。
その名も統一帝国カダス。名前の通り、大陸統一を目指しているんだとか。
……ところで「カダス」って夢の世界にあるニャルラトの陣地で、フォーマルハウトはニャルの天敵とされる「クトゥグア」って燃える犬の領域だったハズ。これって何か意味があるのでしょうか。
「ふう。やっと休憩なのです」
森の中をえっちらおっちら、軍靴を鳴らさないようコッソリ移動しているので、普通に歩くより倍疲れます。
五分程度の休憩ですが、しっかり襟とか靴紐とか緩めてから休まないと、節々がガタガタして大変なことになります。手際よく衣服を緩める私……そこへ、男性兵士の視線が集中しました。
部隊の人数は十五人。そのほぼ全員の視線が、はだけた私の胸元へ吸い付いてしまいました。仕方ありませんね、それぐらいなら許しましょう。
何しろ私、大きいですから!
胸が!!
(ちょっと
大地母神が如き寛容さを振りまく私に、一歳年上の衛生兵が耳打ちしてきました。脳が蕩けそうなウィスパーボイス、実に最高なのです。もっと囁いて。
あ、VBというのは私のことです。
ヴァレリア・バニーのイニシャルで「ぶいびー」。他には「ヴァリー」とか、たまに「バニーちゃん」とも呼ばれます。
身長143センチ、天然小麦色の肌に色素の薄い金髪、満月を思わせる金色の瞳をした、自分でもどうかと思うレベルの美少女です。おまけに体格に反して88センチという大・爆・乳! しかもまだまだ成長中ですので、近い将来メートルに達すること請け合いでしょう! むふーっ!
……などと得意げになっていますが、幼少時から美貌と発育の良い体のせいで変態どもから狙われ続け、少しの油断で強引に処女を散らされかけること幾何回! 時には剥製にされそうになったり、ロクな目に遭っておりません。
絶望して顔を焼こうか胸を削ぎ落とそうか、本気で悩んだ事は一度や二度ではありません。美人は死体でも高く売れる……こんな言葉がエクスペリスでは「美人薄命」とだいたい同義語な辺り、本当に酷い世界です。
「VB、聞いてる? どうしてそんな辛そうなの? 泣きたいなら泣く? 胸ぐらい貸すよ?」
おっと、うっかり蘇ってきた嫌な記憶をシャットダウンしようと、意識が吹っ飛んでいました。そんな私の顔を、衛生兵ちゃんが心配そうに覗き込んできました。
この子も私ほどではありませんが、素地はなかなかの美人さんです。赤い髪も綺麗なんですが、額から右頬の肌が火傷で爛れてしまい、右目が失った視力を補う為にマジカルモノクル……眼全体を覆う複眼レンズの義眼に換装されており、可愛さより痛ましさが先に立ってしまいます。ついでに、人に貸せるような胸でもありません。
名前はアニーラ・ホップ。同じ部隊に配属されてから三週間の浅い付き合いですが、唯一の同年代かつ数少ない同性なので、よくつるむようになりました。
「お気になさらず。休めるときは全力でダラけるのが私のスタイルなのです」
「そ、そうなんだ……でも、もうちょっと周りに気を配った方がいいと思うよ? すごい見られてる」
「構いません。見られて損される体ではありませんから」
「ああ、そう……」
自信満々にそう答えると、アニーラは困ったように微笑むのでした。
「確かにVBって美人だものね」
「おや? アニーラも結構な上玉ではありませんか。市場に出てれば言い値で買っちゃいますねぇ、私なら」
「上玉て……VBってさ、外見の割りにガラ悪いよね」
ちょっぴり呆れたアニーラですが、ガラの良い軍人などいるのでしょうか。私の知る限り、オラついていない奴って見たことないのですが。
そういうとアニーラはますます困った顔になり、私を見ていた男性陣もバツが悪そうに顔を背けました。……なんで?
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