第427話 ヌルヴィス対全身ローブ ③

(闇魔装も魔力を使ってるし、無理な訳じゃないか)


魔力を使う魔法同士を合わせる複合魔法ができるのだから、魔力を使う魔装と付与魔法は同時に使えても不思議ではない。そんなことをこれまで考えてすらいなかった。そもそも付与魔法を積極的に使う場面が少なく、影が薄かったのもあるけど。

しかし、これができるならば……。


「闇を付与し、暗がれ。ダークランス」


「っ!?」


俺の放った魔法を全身ローブは大袈裟に避ける。

それもそのはずで、今の魔法は付与魔法と闇魔法の複合魔法だからな。


「……ん?」


ここで俺はあることに気付く。魔力がこれまでにない速度で減っている。急いで魔力ポーションを飲みながらその原因を考えると、すぐに分かった。


(今の闇魔装は常時魔法を使って消費してる状態なのか)


これまでの闇魔装ならそれ自体に攻撃力が無いため、闇付与をしても全身ローブが慌てて逃げる必要はない。

ところが、今の闇魔装は常時闇魔法を使っている状態となっているため、触れるだけでダメージがあるのだ。逆に言うと、常に闇魔装を消費しているから魔力の消費が凄いことになっている。

何とか闇魔装の出力を弱めることで魔力の消費を抑えることは出来た。その分攻撃の威力は落ちているが、こいつ相手なら威力は低くても問題は無い。


「「………」」


魔装と付与魔法の新たな活用方法が見つかったことで俺が有利な状態になったが、攻めには行かない。その理由は全身ローブがまだ余裕がありそうだからだ。


「仕方ない」


全身ローブはそう言うと、ローブが身体にピッタリと張り付く全身タイツのように変化した。それでもフードは健在のため、少しおかしな見た目になっている。

ここで1番驚いたのが、全身ローブのローブが魔装だったことだ。疑ってなかったのもあるが、形が変化するまで魔力を感じ取れなかった。


「これダサいから見せたくなかったけど…」


全身ローブ改め、全身タイツはそう言うと、高速で俺の前に近寄り、パンチを放ってくる。それを何とか大鎌でガードする。


ガンッ!


激しい音が鳴ると共に、俺は衝撃で吹っ飛ばされる。その威力はさっきの攻撃とは比べ物にならない。


「これがあると全力で近接戦ができる」


闇付与した闇魔装のせいで黒く燃えた拳を自切しながら全身タイツはそう答える。


「…硬くなったな」


魔装が硬くなったことで、さっきまでの砕ける拳でのパンチとは比べ物にならない威力となっている。ただ、自身のパンチの威力と大鎌の硬さにやられて魔装が少し凹んでいたため、大鎌で簡単に斬り裂ける程度の硬さだろう。

あの魔装の能力が分からなかったが、さすがに少し硬くできるだけとは考えられない。

そうなると、これまで見せてきたものであの魔装の能力は察しがつく。


「それのおかげか。その高速再生は」


「さあ?」


はぐらかされたが、あの不死身とも思える高速再生は回復魔法での魔装の特殊能力か。

つまり、魔力が無くなれば勝てる訳だが、Sランクとの戦いを見た限り、無限に再生していたから魔力切れで勝つのはほぼ無理だろう。


「…やることは変わらんか」


「しっ…!」


会話はここまでと言わんばかりに、全身タイツは向かってくる。


「やあっ!」


「くっ…!」


全身タイツの攻撃を何とか大鎌で受け流す。全身タイツは攻撃する度に闇の火を消すために自切する必要があるから連撃はできない。そのおかげで何とか攻撃を防ぐことができている。



「ボム」


「なっ?!」


全身タイツが突然、自爆するかのように魔法を使った。もちろん、俺もその魔法は近くにいたため、食らってしまう。吹き飛ばされながら痛みを堪えてすぐに体勢を直し、大鎌を後ろに振る。

すると、その大鎌は後ろに回り込んでいた全身タイツに当たった。


「魔法忘れてた?」


「そうだよ!」


俺の大鎌をガードして斬られた両腕をさらに自切して再生する間に一言だけ交わし、すぐにまた攻撃を仕掛けてくる。

というか、自爆からの高速再生で追撃なんて普通は考える付かないから忘れても仕方が無いだろ。



(魔法もあるのかよ…くそっ…!)


付与魔法を駆使して全身タイツに勝つ方法は思い浮かんでるのだが、それを実行するための隙と余裕が作れない。

どうにかして隙を作らないといけない。

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