第425話 ヌルヴィス対全身ローブ ①
「おめでとう?」
俺が2人の元へ行くと、まずラウレーナが何とも言えない顔をしながらそう声をかけてくる。
「……良かったのじゃな?」
そして、次にルシエルがそう聞いてくる。
まあ、勝つためにはあれだけ隠そうとしていた魔法を使わざるを得ない状況だったから、魔法を使ったのが不本意だと思われても仕方ないな。
「悔いはないよ」
俺は2人に堂々とそう答える。
「まあ、正直言うと、決勝に勝算が無かったら諦めて負けてたかもしれないけどさ」
決勝に全身ローブが来た時点で俺達が報酬を貰うには優勝以外の選択肢は無くなった。そんな中で決勝で全身ローブに勝てなければ、準決勝で勝っても意味は無い。まあ、3位以上なら賞品として金が貰えるらしいが、金には困ってないからそれは別にいらないしな。
しかし、準決勝で見た全身ローブの能力は俺なら突破できる。むしろ、俺が有利と言ってもいいくらいだ。
「明日は楽しみにしておけよ」
「期待してるのじゃ」
「頑張ってね」
2人の応援を受け、俺は新たに意気込みを入れた。
そして、大会最終日である次の日がやってきた。
まずは前座として3位決定戦が行われたが、予想通りSランクが勝利した。剛剣も必死に食らいついていたが、ラウレーナの方が戦いになっていた。剛剣の攻撃はSランクに片手で止められていたからな。
『最後に決勝戦を始めます!』
このアナウンスで会場が大盛り上がりの中、俺と全身ローブは舞台へと向かう。
『正体、能力全て不明!今大会のダークホースが勝つか!それともSランクから2つ名を貰い、勇者の代役として参加した至極の死神が勝つか!』
最後だからか、司会がテンションを上げて話している。そんな中、俺と全身ローブは舞台の上で向かい合っていた。
俺はいつ始まっても良いように大鎌を構えているが、全身ローブは棒立ちだ。
『決勝戦!試合開始!』
そんな状態で開始のアナウンスがかかった。俺は今まで通り全身ローブからの開始早々の魔法を警戒していたが、魔法を放つ様子はない。それどころか……。
「……何してるんだ?」
全身ローブは両手を広げ、まるで斬って下さいと言っているかのような体勢になっている。
「来て」
「っ!」
初めて全身ローブの声を聞いたが、その声は女のものだった。それも少し幼い少女のような高い声だ。
「……なら遠慮なく!」
どう動くか悩んだが、相手が斬ってと言ってるなら斬ってやろう。身体強化、雷身体強化、闘装、雷魔装、そして闇付与を行い、全身ローブへと警戒しながら迫る。
「はあっ!」
俺が接近しても全身ローブは何もしなかった。だから俺は大鎌をその首目掛けて振る。死ぬ可能性もあるが、その時は反則負けになる覚悟はある。だが、準決勝を見て首を斬っても問題なかったと思ったと言えば大丈夫だろう。
「首は困る」
「っ!?」
しかし、全身ローブはそう言うと、体を斜めに傾けた。その動きかなり速く、首を追うことは出来ず、俺の大鎌は全身ローブの右腕を肩から切断した。
「ははっ…」
「っ!」
肩を斬られたにも関わらず、笑い始めた全身ローブから俺は咄嗟に距離を取ってしまう。
「あははははははっ!!!」
「………」
全身ローブは傷口からボタボタと血を流しながら高笑いをする。
「やっぱりそうだ!その私だけを対策してるかのようなその力はやっぱりそうだよ!いつもくっ付く私をどっかやるために使ってたもんね!」
「…………」
急に訳の分からないことを話し始めた全身ローブに俺は固まることしか出来なかった。
「でも色々といつもと違うよね?何度も繰り返すことに絶望しかけてますたから、何かしようとしてたのは知ってるけど、そのせい?あっ!でも今ならあいつらにもバレずに独占できるね。記憶が無いことなんて魂で繋がってる私達からしたら些細なことだよ」
「なっ!?」
全身ローブはそう言い終えると、残った手で首元から自分の身体を引きちぎる。俺の斬った傷口が身体から無くなると、さっきよりも深くなっているその傷は再生した。
俺の闇付与は付けた傷を回復不可にする能力がある。だが、その部位を切り取ればその能力は無効になるのかよ。そんなの知るはずがない。
「さて、行くよ?」
「っ!?」
さっきとは一転変わってやる気になった全身ローブは俺に向かってきた。
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