第421話 Sランク対全身ローブ ①

「けやっ!」


Sランクは叫びながら全身ローブから距離を取る。短髪の髪の先は焦げてるし、直撃を食らった顔とその近くには遠くから見てもわかるほどの火傷の跡がある。


「……」


全身ローブはそんなSランクをただ見ている。とは言っても、自分の魔法の影響で消し飛んだはずの手を一瞬で治していたけど。



「…秘密が分かったのじゃ」


「ああ…」


今の一連のやり取りで不明だった全身ローブが自爆攻撃とルシエルの攻撃でダメージを負わない理由が分かった。

その理由は単純で、怪我を負った瞬間に一瞬にして傷を治していたからだ。刀が通り過ぎる間に斬られている部分を治せるため、再生速度は常軌を逸している。


「………」


Sランクはルシエルを警戒しつつも、動かない。


「今大会のルールにおいては全身ローブは強過ぎる」


再生するのも限界はあるはずなので、Sランクが殴り続ければそのうち勝つことはできるかもしれない。

だが、今大会は故意に相手を殺してはいけないのだ。再生限界まで追い込むほどの猛攻をしたら故意と判断される可能性がある。そのため、Sランクは迂闊に攻めれないのだ。



「しっ!」


1分ほど悩んだSランクは唐突に全身ローブへと駆け出す。そして、全身ローブの腕を掴んで投げようとする。

確かに倒せないのなら場外に出せばいいと俺が納得した時だった。何と、Sランクに持たれていた全身ローブの腕が勝手にちぎれたのだ。


「と!」


「ぐっ…!」


自身の腕がちぎれたことを気にしていないのか、残った腕でSランクの顔面を殴り飛ばす。


「【防御】が無いのか?」


「そうかもね」


いくらSランクの力が強いからと、投げようとしただけで普通はちぎれない。そうなると、普通では無い何かがあったことになるのだが、その中で一番有力なのは【防御】のステータスが無いことだ。


「ちっ…」


Sランクが鼻から流れた血を指で拭っているのを見るに、高い【攻撃】を持っているのもわかる。

この全身ローブは普通の物理職と魔法職では無いステータスを持っているのだ。

ただ、ステータスが何個か入れ替わっているラウレーナと違い、全身ローブは物理職と魔法職に共通している【防御】が無かったり、【攻撃】と【魔攻】を持っていたりするため、さらにおかしなステータスになっているだろう。


「残りの1個は何かって話になるけど…」


「【敏捷】だね」

「【敏捷】じゃな」


ラウレーナとルシエルの声が重なる。これまでを見た感じで【防御】と【精神】が無いのを確認している以上、残りは1つのステータスの項目は【敏捷】になる。そのため、自動的に【敏捷】を持っていると分かるのだ。

だが、これまで全身ローブは一度も自分から移動することは無かったため、これは絶対とは言えない。



「しっ!」


なんて考えていると、再びSランクが駆け出し、今度は全身ローブを殴ろうとする。

しかし、それに合わせて全身ローブもカウンターの拳を放つ。


パンっ!

「ぐっ…」


また全身ローブの顔が弾け飛んだが、すぐに再生する。そして、カウンターを持ったSランクも少しよろけた。


「それにしても攻撃力は高いな」


魔法で強化類はしていると思うが、それにしてもこのSランクにそれなりのダメージを与えるのはかなり難しい。確実にラウレーナよりもかなり高い【攻撃】を持っているな。


「仕方ねぇな!」


Sランクはそう言うと、右拳に闘力を大量に集める。そのままSランクへと駆け出す。

全身ローブも魔法の前方に放つが、Sランクはその中をダメージを受けながら突っ切った。


「インパクト!」


そして、Sランクは右拳で全身ローブの腹を殴った。すると、ローブだけ残して、全身ローブは全身が木っ端微塵に消し飛んだ。


「クソが…」


しかし、それでも全身ローブは再生をしようとする。ただ、さすがに全身が消し飛んだからか、再生速度も落ちているし、頭から下へと順に再生させている。


「どりゃりゃりゃりゃ!!」


そんな隙をSランクが見逃すはずがない。再生した瞬間に全身ローブの胸を殴って首から下を何度も消し飛ばした。

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