第420話 5回戦目の終了
『試合開始!』
「ぜやあっ!」
「っと!」
開幕早々、準々決勝の俺相手が火を纏う剣を振ると、剣から炎の斬撃が放たれる。
(まるで俺の闇魔装をした大鎌だな)
こういうのがあるから俺も闇魔装を使ったが、かなり珍しいため、目の前で見ることになるとは思っていなかった。
しかし、この調子なら俺が闇魔装を大鎌にしても大丈夫そうだな。
「おっ、俺の下位互換の武器か」
「……は?」
闇魔装を見た男がそう言ってくる。
「俺のは炎を放っても消えないぜ?」
勝ち誇った顔で男はそう言うと、見下したかのように鼻で笑う。
「ああ。俺のは焚き火用の武器じゃないからな。ずっと火が灯る効果はないんだよ」
「あ?」
俺が言い返してやると、男は不愉快そうに顔を歪める。
「そう言うならお前をこの炎でじっくり料理してやるよ。焼き加減は選べねぇから覚悟しろよ」
「竈に入れるにはその剣は少し大きくて邪魔そうだから薪みたいに斬ってやるよ」
そう言い合うと、お互いに向かって行き、武器をぶつけ合った。
その結果、相手の男だけ吹っ飛んだ。
「「ちっ」」
しかし、俺達はどちらも舌打ちをする。
まず、相手は吹っ飛ばされたことに対するものだろう。そして、俺は剣の熱で軽く火傷をしたことに対してだ。あの火はかなりの温度を誇るようで、近付いただけで俺の防御力ではダメージを食らう。
「だが、構うか!氷魔装」
俺は自身に氷魔装をし、その上から氷魔装が観客席からは見えないように気持ち闘装を厚くすると、再び相手へと向かう。
そこからは接近戦をしていくが、俺は相手を吹っ飛ばさないように上から叩き付けるように斬ることを意識した。
「おい!どうした!火力が落ちてるぞ!」
「うぅ…!」
2、3分ほど剣を打ち合った頃だろうか。相手の火の勢いが見て分かるほど落ちてきている。氷魔装をしているとはいえ、もう暑さもあまり感じない。
「な、何で…」
さらに、こんなこと初めてなのか、相手は戸惑っているせいで動きも悪くなる。
そして、次にその時はやってきた。
「らあっ!」
パキンっ…!
相手の剣の火が消え、完全にへし折れた。衝撃を殺させないように上から加えた甲斐があった。
「あぁーー!!!俺の剣がー!!」
無惨にも折れた剣を見て男は膝を付いて絶叫しながら泣き始める。
少し不憫に思うが、焚き火用の剣で俺の最高傑作である大鎌の至極と打ち合ったのだからそうなるのは仕方がない。むしろよくここまで持ったほうだ。
「ばびんっ!」
スっと落ち着く前にせめてもの情けで一思いに大鎌で殴って場外までぶっ飛ばした。
『試合終了!』
これで俺の勝ちが決まった。
残念ながら無機物である武器は結界の外に出ても直らないが、高い勉強代と思って諦めてくれ。
それにしても、今回は相性が良かった。同じタイプの接近戦使いかつ、厄介なのも氷魔装で防げる火だった。これが雷や風だったらもっと厄介だったな。
こうして無事に準決勝までは進めた訳だが、次の日、俺の試合よりも前に誰もが気になる試合がやってくる。
『し、試合開始!』
全員が立たずを飲んで見ている中、Sランク対全身ローブの試合が始まった。
ドゴンッ!!!
開幕早々、全身ローブの魔法が炸裂する。
「効かんぞ!」
しかし、Sランクは腕を振り、砂煙を吹き飛ばして無傷で現れる。高威力とはいえ、遠くからでは効いていないようだ。
「しっ…!」
そして、Sランクは全身ローブへ走って向かうと、そのまま拳を顔面に叩き込んだ。
パンっ!
「「「は…?」」」
その瞬間、全身ローブのフードが落ちながら顔面が木っ端微塵に弾け飛んだ。
しかし、驚いたのも束の間、まるで高速逆再生を見ているように全身ローブの顔面が元に戻る。
「しまっ…」
さすがのSランクも自身の思惑と異なる形で突然相手の顔が吹き飛んだら唖然とし、油断してしまった。
その隙に全身ローブの右手がSランクの顔面を鷲掴みする。
「ばーん」
ドゴンッ!!!
その時、Sランクの顔面に0距離から魔法が放たれた。
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