第419話 4回戦目の終了
『試合開始!』
全身ローブとルシエルの試合の次の日、俺の試合が始まった。
「せいっ!」
踊り子のようなヒラヒラの服を着た相手の男が縦に振ってきた右手のサーベルを横に移動して避ける。すると、今度は左手のサーベルを横から振ってくる。それを大鎌で弾き返す。
「ちっ…」
しかし、俺は舌打ちをする。相手の剣を弾いた時に抵抗を感じかかったからだ。相手はステップを踏むように下がると、再び向かってくる。完全に受け流された。
(やりづらい!)
相手はまるで舞っているかのように双剣を巧みに操っている。初めて戦うタイプのため、攻撃が読みにくい。さらに、大鎌で攻撃してもひらっと避けられる。そして、最初のように大鎌で剣を弾いても全然効果はない。
(埒が明かないな)
相手の動きは難解だが、俺の危険感知と反射神経強化があれば避けることはできる。
そのせいでお互いの攻撃が当たっていない。
また、もう試合に時間制限が無いため、相手が疲れるまで戦ってもいいのだ。立ち止まっている俺に対して、舞っていることで余計に動いている相手の方が疲れるのは早いため、このままだと勝てるとは思う。
(依頼がなければ最悪それでも良かったんだがな)
依頼は優勝か、Sランクに負けても誰もが2位と納得する成績を残すことである。
この相手に1時間も戦って苦戦したものが2位と認められるかと言うと多分無理である。決勝で負けることも考えると、この戦いの勝利に時間を使う訳にはいかない。
(身体属性強化は……)
攻撃力が上がっても、この状況に変化は無い。また、スピードが上がっても多少時短になるだけで相手が疲れる待ちなのは変わらない気がする。防御を上げるのは論外だ。
(仕方がない)
俺は覚悟を決めて、タイミングを伺う。
「サイズ!」
突然、無属性魔法が相手へと襲う。今大会で1度見せているためか、避けられたが、舞うリズムが少し崩れる。
(ここだ)
俺はそこで闇魔装を大鎌だけに発動して、一気に駆け出す。
「しっ!」
「なっ!?」
そして、大鎌の間合い僅か外で大鎌を振って闇の斬撃を放つ。相手は掠りながらも避けることに成功するが、体勢が大きく崩れる。
「らあっ!」
「がっほ…!」
ここで闇身体強化を使い、全力で相手を場外まで大鎌で殴り飛ばす。
相手は意識を持っているが、立ち上がったそこは既に場外だ。
『試合終了!』
「ふぅ…」
何とか勝つことができたが、もう魔力を普通に使っている。魔法を使っていないだけである。
現時点でこの調子では明日以降の準々決勝、準決勝、決勝は大丈夫だろうか。
また、その日は早く寝て身体を休めると、次の日がやってきた。
今日の初戦と2回戦目は危なげなくSランクと全身ローブが即効で試合を終わらせた。これにより、明日の準決勝はSランク対全身ローブの試合と決まった。
現時点の賭け的にはSランクの方がオッズが低いため、やはりSランクの方が強いと思っている者が多いのだろう。
「さて、どっちが勝つと思う?」
観客席にいる俺は左右にいる2人に問い掛ける。
「Sランクの女かな」
「全身ローブじゃな」
そして、2人それぞれ違う答えを言う。お互いが自分に勝った方が勝つと思うと答えた。
「ヌルヴィスはどっちだと思う?」
2人はお互いの予想が違うことを言い争うことなく、俺にも同じ質問をしてくる。
「Sランクに勝って欲しい」
「「なるほど」」
俺の答えに2人が納得したように頷く。
決勝で戦うことを考えると、純粋に強いSランクとよく分からないが強い全身ローブだと、純粋に強いSランクの方が戦いやすいのだ。
能力が不明なびっくり箱のような相手とは一発勝負の場面では戦いたくはない。数回戦って勝利数を競うのなら全身ローブの方がいいかもしれないけどな。
なんてことを言っているが、俺が決勝に行くには後2回勝たないといけないけどな。
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