第413話 2回戦目の終了

『試合開始!』


そのアナウンスがあってもどちらも動かない。

ただ、お互いの状況は違く、片方はわざと動いていないのに対し、もう片方は動くに動けないのだ。槍を持っている手がプルプルと震えている。


「つまらんな。終わらせるぞっ!」


わざと動かなった方がそう言い、その場で正拳突きをする。すると、拳から衝撃が放たれる。


「かほっ…!!」


想像していなかった攻撃に相手は場外まで吹っ飛ばされる。


『試合終了!』


「まあ、こんなもんか」


こうしてSランクの試合が終わった。

Sランクの戦い方が近接の格闘ってことと、拳から衝撃波を生み出せることくらいしかこの戦いから得られたものは無かった。


「じゃあ、頑張ってくるね」


「おう」


「応援してるのじゃ」


そして、この次がラウレーナの試合だ。

また、この試合に勝利すると次の試合でSランクの女と戦うことになる。


『試合開始!』


対戦相手は魔法職で、試合が始まった瞬間に魔導具で大きな土の壁を作り、詠唱の時間稼ぎを行った。魔導具をこうして使えるから本戦出場者に魔法職は意外と多い。

ラウレーナは歩きながら巣の詠唱を行った。

相手が放ってきた魔法を巣を利用した高速移動で避け、詠唱の合間に攻撃してラウレーナが勝利した。



また、次の日には全身ローブとルシエルの試合があった。

全身ローブは相変わらず開幕早々の高威力の魔法で勝利していた。全身ローブに勝つにはまずあれをどう乗り切るかを考えないといけないな。


そして、その次の次にルシエルの試合があったが、ルシエルは光魔装を使い、相手の攻撃を避けながら隙をついて攻撃を繰り返し、勝利していた。ルシエルは何とか魔法は使わずに勝ち進んでいる。ただ、ルシエルは次に勝利すると、その次の相手はあの全身ローブになる。その時も魔法を使わずに戦えるか?



『試合開始!』


ルシエルの試合の次の日、俺の試合がやってきた。今回の相手は前回のように相性が悪いということは無く、むしろ相性は良いと言ってもいい。ただ、昨日のような騎士の場合は逆に相性が悪い相手かもな。


「っ!」


「うおっ…?!」


危険感知に反応し、片手で軽く大鎌を振る。すると、何か硬いものが大鎌に当たった感触とともに、驚く声が聞こえてきた。さらに、大鎌に触れてから消えていた姿が捉えられるようになった。


「よおっと!」


男は吹っ飛びながらも体勢を立て直し、再び姿を消す。

俺の今回の対戦相手は盗賊系の職業のAランク冒険者だ。盗賊系の職業の者はこうした1対1の戦いを苦手としているはずだが、インビジブルという2つ名の通り、姿を消すことに長けているから特に苦手では無さそうだ。

だが、危険感知と反射神経強化を取得している俺にとってはそこまで警戒すべき相手では無い。


すっ…


「なっ…!」


危険感知の反応に従って体を横に向けると、そこにナイフを持った相手が通り過ぎる。いくら隠密で姿を消していても、攻撃する瞬間は殺気が出るから姿が見えるようになる。俺はそいつへ全力で大鎌を振る。


「うごっ!?」


2本のナイフをクロスして受けたが、不意に俺の大鎌を受けて踏ん張れるほどの力は無い。


『試合終了!』


そのまま場外まで吹っ飛んだことで俺が勝利した。今回は相性が良かったが、次回もこんな風に勝てるってことは無いだろうな。



「おつかれ」


「ナイスなのじゃ」


「おう」


観客席に行くと、2人が労ってくれる。


「それよりも2人とも明日は頑張れよ。特にラウレーナな」


「頑張るのじゃ」


「全力を尽くすよ」


俺は明日は試合が無いから応援に徹させてもらう。


「作戦とか一緒に考えるか?」


「いや、僕の全力をぶつけてみたいから大丈夫。ありがとうね」


俺の提案はラウレーナに断られてしまう。しかし、そういう理由なら仕方がない。俺が戦うわけでないのに緊張してしまう中、次の日がやってきた。




「この時を待ってたぜ。コレクションが増えるのは久しぶりだ」


「相手に負けた時は自分の職業をコレクションに入れるってのはどう?」


お互いファイティングポーズを取りながら煽り合う。


『試合開始!』


そんな中、ラウレーナとSランクの女の試合が始まった。

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