第410話 本戦の組み合わせ

「怪我はないよな?」


「全くないのじゃ」


ルシエルの予選が終わったため、俺達はルシエルと合流した。

ルシエルであってもあの魔法に巻き込まれたらダメージを受けていたが、それは舞台から降りた時に治ったようだ。


「何があったんだ?」


「……」


俺は1番気になっていることをルシエルに聞いた。ルシエルは少し考えてから話してくれた。


「おそらく、あの全身ローブの奴が無詠唱で魔法を放ったのじゃ」


「っ!なるほどな」


それならばあの速攻も納得がいく。


「じゃが、放った後のことは防御するのことで手一杯で分からなかったのじゃ」


「それは仕方ないな」


あれほどの威力の攻撃ならば、ルシエルが周りを気にする余裕が無いのは仕方ない。

でも、そうなると自分の魔法を回避したのか、何らかの手段で防御したのかは分からないのか。


「現実的に考えて魔法防御を高める魔導具を持っているか、そもそも【防御】が高いのかどっちかなのか?」


とはいえ、現実的に考えると、魔法職がその瞬間で回避するのは不可能だ。というか、物理職でも避けるのは無理だ。そのため、防御したことになるが、無詠唱の魔法と同時に防御手段を用意できるとは思えない。だから消去法的に魔法を食らって堪えたことになってしまう。


「本戦で戦うことになったら、魔法を掻い潜りながらあの防御力をどうやって突破するかになるな」


自爆を気にせず放ってくる無詠唱の魔法を回避しながら、高威力の魔法をものともしない防御力を上回る超高威力の攻撃をしないと勝てはしない。


「……無理じゃね?」


シュミレーションをした俺は思わずそう呟いてしまう。まず、間違いなく魔力を使わないと勝つことは不可能なのは確かだ。

また、魔力を使ったとしても勝てる可能性は少ない。


「余でも難しいのじゃ」


ルシエルは光魔装をすれば、魔法を掻い潜ることはできるだろう。だが、その後にダメージを与えるのが難しい。


「僕もダメージを与えるのは難しいかな。でも、場外に押し出すのならできるかも」


「そうか!」


何もダメージを与えて倒すだけが勝利条件では無い。場外に押し出しても勝ちになるのだ。それならば、ラウレーナとルシエルなら勝てる可能性がある。相手が魔法職である以上、近付けさえすれば可能性はある。


「問題はヌルヴィスがどうするかだね」


「そうじゃな」


「………」


薄々分かっていたことだが、魔力を隠して勝ち進むのは難しい。自分も強くなっているが、相手も強い者が多い。そんな中で半分の力で勝つというのは困難である。

そろそろ、能力をバラす覚悟も必要かもしれない。ただ、今の俺ではまだ誰に狙われても、それを跳ね除けれると豪語できるほどの力は無い。


「まあ、ヌルヴィスが当たる前に僕かルシエルが倒してあげるから」


「そうじゃ!」


「ありがとな」


俺が悩んでいるのを見て2人がそうフォローしてくれる。

ただ、そろそろ人目がある前でも魔力を使う覚悟は必要かもしれないな。



「さて、そろそろ次の試合が始まるよ」


「そうだな」


大破していた闘技場もすぐに直り、次の試合が始まろうとしていた。

その後の予選も全て見ていたが、あの謎の全身ローブみたいな飛び抜けた変な奴は居なかった。

ただ、高ランクの冒険者やどこかの騎士など頭1つ抜けて他よりも強い者は順当に本戦の出場を勝ち取っていた。

そして、予選が全て終わり、その次の日には本戦の組み合わせが発表された訳だが……。


「まさかこうなるとはな」


なんと、俺は決勝に上がるまでラウレーナ、ルシエルだけでなく、Sランクの女、全身ローブの奴とも戦わないのだ。どうやら、Sランクの女が対戦順まで決めるということは無かったようだ。


また、お互い勝ち進めばラウレーナは3回戦でSランクの女と、ルシエルは4回線で全身ローブの女と戦うことになり、それらの勝者同士が準決勝で戦うことになっている。

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