第405話 移動

「どれくらいかかるんだ?」


「この速度なら1週間程度だと思うよ」


俺達は走って移動しながらそんなことを話していた。


「ただ、大会の締切は残り2週間だからのんびりしてたら遅れるからね。

本戦からの推薦状があっても大会申し込みは偽装防止のために本人が出さないといけないらしいから、それに遅れたら出れないよ」


「まあ、猶予は1週間もあるんだから大丈夫だろ」


実際今のペースで1週間ならもう1週間あるのならば余裕だ。



「おいっ!いい女連れてんな!俺らに寄越せよ!」

「走ってどこに行きたかったんだ?」

「見ろよ!1匹は奴隷だぜ!男を殺せば俺らのもんだぜ!」


「………思いどおりにはいかないもんだな」


俺達は森の中で盗賊?の集団に遭遇した。

まあ、人間の集団が居るというのはこいつらよりも先に気付いていたのだが、森の中にコソコソいる奴らなんてろくな訳がないと思って寄った結果がこれである。


「上玉が2つだからこれは高く売れそうだぞ」

「え!こんな上玉も売っちゃうんですか!?今居るのも生娘だからって味見もさせて貰えてないんすよ!俺らで楽しみましょうよ!」

「よく考えろ。こいつらは男連れなんだから生娘なわけじゃねえ。壊さない程度に使うのは構わないぞ」

「やったぜ!!」


「捕らえられてるのも居るのかー」


盗賊の話を適当に聞き流していたが、囚われている者がいるというのはわかった。盗賊に手を出されてなさそうなのは良かったが、少々面倒である。

なぜなら、盗賊を全員殺ったとして、囚われの者を放置できない。そのため、近くの村なり、故郷だったりに戻さないといけないのだ。冒険者としてそれらの行為は評価が上がる要因になるが、Aランクまでいったらその行為の評価もランクアップには微々たる差しかない。

一応俺達は急いでるが、さすがにこれは放置できない。


「怖くて声も出ないか?大人しくしてるなら目の前で楽しむところくらい見せた後にでも楽に殺してやるぜ」


「時間も無いし、さっさと殺るぞ」

「うん」

「分かったのじゃ」

「1人残すのを忘れるなよ」


それから俺達は1人を残して盗賊共を皆殺しにして行った。普通は相手が盗賊か判断するのも大変だが、自分達から公言してくれたから楽で良かった。

鏖殺中に言い訳や命乞いをされたが、耳は貸さなかった。

また、ラウレーナとルシエルが人を殺す様子を見るのは初めてだったが、相手が盗賊ということで特に躊躇っている様子はなかった。



「助けて頂き、ありがとうございました!」


「いえいえ」


その後、残した者にアジトの場所と残りの人数を聞き、それらを片付けて捕らえられていた者を救出した。救出したのは16くらいのそばかすがある女の子だった。

ちなみに、残した者と残りは他と同様に片付けた。


「街まで送ろうと思うけど、どこがいいとかある?」


「あ、でしたら……!」


幸い、近くの町で攫われたらしく、俺達が送っていくことにした。1週間以上かかるなら俺だけでも先に行こうと思っていたが、ここから徒歩で4日ほどらしいので大丈夫だった。

その子を無事送り届けて俺達はまた出発した。



「おい!死にたくなかったら大人しく女と金目のものを置いていけ!」


「またかよ!!」


しかし、俺達は残り2日というところでまた盗賊と遭遇した。

ちなみに、知らなかったが、闘技大会が有名な街ということで、怪我や実力不足、老いなどで大会で思うように勝てなかった者達が盗賊になることが多いそうだ。


幸い、今回の盗賊は囚われの者もおらず、アジトで集めた宝を奪うだけだった。

しかし、寄り道をしてしまったせいで大きな遅れとなった。




「な、何とか着いたぞ…」


「危なかったね…」


「焦ったのじゃ…」


その結果、俺達が街に着いたのは締切日の前日の朝になってしまった。

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