第399話 作戦遂行と…
「轟けっ!」
「だからそれはさせねぇよ」
俺が詠唱を始めると、寄生勇者はそれを阻止すべく猛攻をしてくる。そして、俺の詠唱は強制的に止められてしまう。
「くっそ……」
「おいおい、もうそれしかないのか??」
詠唱を始めると、どうしても俺の攻撃の数が少なくなる。その隙を寄生勇者は見逃してはくれない。
「なら……ふっ!」
俺は一息つくと、再び寄生勇者へと向かって行く。
「はあっ!」
そして、接近戦中に闇の斬撃を寄生勇者へ放った。いくら寄生勇者でもノーモーションのこれは避けられないはずだ。と思っていた。
いや、俺の予想は当たっていた。想定外だったのは……。
「そんな弱い攻撃が効くかよ!」
俺の斬撃が寄生勇者の腕で簡単に弾かれた。
大ダメージが与えられると自惚れていた訳ではない。だが、それでも少しの隙くらいはできると思っていた。
「気を抜いてる余裕があるのかっ!」
「かほっ…!」
結果的に俺が隙を作ってしまい、寄生勇者に聖剣の柄の先で腹を小突かれた。軽い攻撃なのに口から色々な物が出てしまいそうだった。
どうやら、寄生勇者から聖剣を奪うにはもう手段は選んでられないようだ。
「暗がり、暗がれ!」
「だから何度でも言ってるだろ!」
勇者が俺の詠唱を止めようと猛攻を仕掛けてくる。俺はそれを防御するが、聖剣の突きの攻撃だけは防がなかった。
「がほっ…ダーク…」
「こいつっ!」
痛みが来ると備えていたら詠唱を中断させずに済む。ここで俺が腹を貫く聖剣を掴んだまま魔法を放てば、寄生勇者にダメージを与えるか、聖剣を手放させるかの二択を迫れる。
……でもそれではダメだ。その程度でこの寄生勇者がどうにかできるとは到底思えない。だから俺は大鎌を持っていない左手で勇者の両手ごと聖剣の柄を掴み、右手の大鎌を振り上げる。
「離せっ!」
「ごぽっ…」
寄生勇者は左手を離させようと聖剣を上下前後に動かす。俺の力では完全には抑えられず、傷口が広がっていき、大量の血が流れ出る。だが、俺は左手を離さないし、振り上げた右手の力も抜かないし、詠唱も止めない。
「サイズ!」
「そこまでする奴だったとはな!」
俺のほぼ全魔力の魔法と全力で振り下ろした大鎌の2つが寄生勇者に激突した。
魔法は胸に、大鎌は首元に当たった寄生勇者は俺の左手の力が抜けたこともあり、地面を削りながら吹っ飛ぶ。
また、俺の腹には聖剣が刺さったままである。当初の予定通り寄生勇者から聖剣を手放させた。
「後は…」
「任せて!」
「任せるのじゃ!」
身体強化類を解除し、膝から崩れ落ちて座って項垂れた俺の左右をラウレーナとルシエルが寄生勇者を仕留めるべく通り過ぎる。
また、ルイと聖女も俺を一瞥してから寄生勇者へと向き直る。
「今のはかなり効いたぞ!」
寄生勇者は首元と胸から血をだらだら流しながら立ち上がって向かってくるラウレーナとルシエルを迎え撃った。また、ルイや聖女から飛んでくる魔法は避けたり、ガードしたりしている。
「なるほどっ!俺から聖剣を取りたかったのか!だが、聖剣を取ったぐらいで俺に勝てると思うなよっ!」
「ぐっ…」
「かふっ…」
傷つき、聖剣を無くしても寄生勇者は強かった。4人がかりでも勝つのは厳しそうなのは丸わかりだ。
「お…れも…」
俺は聖剣を抜き、回復、魔力、闘力ポーションを飲む。傷は治ったが、血を流し過ぎたためか、フラフラで聖剣と大鎌を杖代わりにして立つのが精一杯だった。また、頭もよく回らず、魔力を練って魔法を使うのも難しい。
「ん…?」
そんな状況下なのに、ポーションで回復した魔力と闘力がどんどん減っていくのを感じる。減っている原因は今の俺でもすぐに分かった。それは左手に持っている聖剣が原因だ。
だが、不思議と悪い感じはしない。無くなった魔力と闘力は聖剣に吸収されていると言うよりも、蓄えられているという印象だ。
キィーーーン!!!
やがて、聖剣は甲高い音を鳴らしながら眩く光り輝き始めた。
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