第398話 作戦会議
「お?作戦会議でもするつもりか?」
俺がラウレーナとルシエルに近寄ったのを寄生勇者は見逃さずそう言ってくる。
「邪魔をしてもいいが……ここは待ってみるとしよう。俺は空気が読めるし、お前らが何をするのか気になるしな。
何よりも、作戦会議如きで勇者をどうにかできるなら俺らがとうにやっている」
「………」
かなりの上から目線に言い返したい気持ちが出てくるが、特に何も言わずに俺は2人に耳打ちする。
ここで下手に文句を言って邪魔されても嫌だからな。
(俺が何とかして寄生勇者から聖剣を奪う。
2人はそれを待って、それが出来次第、寄生勇者を仕留めてくれ)
(……分かったよ)
(……分かったのじゃ)
俺の作戦を2人は不承不承ではあるが、了承してくれた。
まあ、この作戦で一番危険なのは俺だからその態度も仕方なくはある。だが、寄生勇者が俺だけは殺さないと明言している以上、この作戦を行うのは俺以外には居ない。
「ん?作戦会議をしたのに1人で向かってくるのか?ああ、どうせ隙を作るからそこで致命傷を与えてくれって作戦だろ?」
「さあ、どうだろうな」
概ね間違っては無いな。唯一違うとすれば、その隙の作り方が聖剣を奪うことぐらいだ。
「「強力になれ!パワーエンチャント」」
「っ!」
後ろから強化魔法が飛んできた。
何も言っていないのに、強化魔法をしてくれるとはな。正直かなり助かる。
「「強力になれ!パワーエンチャント」」
「っ!!」
何て考えていると、さらに強化魔法がやってきた。もちろん、行ったのはラウレーナとルシエルではなく、ルイと聖女だ。いつの間にかルイが聖女の傍にいたから、ルイが聖女に指示を出してくれたのだろうな。
「おっ!違ったか!1番強いお前を強化して俺を殺るって考え方だったんだな」
寄生勇者は強化魔法が集まった俺を見てそう言う。実際にルイと聖女はそう思っているかもしれない。
「なるほどな。確かにそれが1番勝てる可能性が高い手段だ。よく考えたな」
「それはどうも」
寄生勇者が感心したように俺へそう言ってくる。
「量よりも質。これは魔王軍でも変わらない考えだ。だが、問題は……」
勇者はそこまで言うと、体と聖剣に纏っているオーラを少し濃く大きくする。
「質でお前がこの俺を上回れるかだがな。
勝てる可能性が1番あるだけで、その可能性が低いことに変わりはないぞ?」
「お前は俺がその勇者に無敗で連勝中だって知らないようだな」
俺はこの勇者と戦って負けたことがない。まあ、ちゃんと戦ったのはこの街に来ての騒動ぐらいだがな。
「だが、それは俺が中に居ない時だろ?」
「居ても居なくても一緒だ」
ニヤニヤしながら話す寄生勇者にそう返すと、お互いに向かい合いながら武器を構える。
その状態での膠着状態は一瞬にも感じるし、数分にも感じた。だが、奇しくも息を合わせたかのように同じタイミングで走り出す。
「おっら!」
「はあっ!」
寄生勇者の聖剣と俺の大鎌が激突する。
「おいおい!マジか!これは想定外だぜ!」
「くうっ……!」
寄生勇者が振った聖剣と俺の大鎌は競り合っていた。全力の攻撃よりの身体強化、さらに攻撃の強化魔法を4つ貰ってやっと俺は両手で振った聖剣と競り合える。
だが、それでも一方は話す余裕があり、もう一方はそんな余裕は無い。まだ差は存在している。
「ならこれはどうする?」
「っ!」
寄生勇者は急に力を抜くと、俺の大鎌を受け流し、前蹴りを放ってくる。俺は危険感知に反応して咄嗟に身体を傾けて回避する。
もちろん、傾けた方へ聖剣が振るわれるが、それも大鎌で防ぐ。そして…。
「暗がり、暗がれ!」
「嘘だろ!?接近戦中に魔法を使えるのかよ!」
俺が急に詠唱を初めると、流石の寄生勇者も大きく驚く。
「だーっぐぅ?!」
「だが、俺を相手にそこまでの余裕は難しいだろ?」
しかし、寄生勇者の猛攻に俺は詠唱を強制的に中断させられる。中断させられてもそれまでに練っていた魔力は無に帰す。
「さあ!次は何を魅せてくれるんだっ!」
「くっ……!」
寄生勇者は余裕そうだが、俺には余裕はあまりない。それに俺も他のみんなも魔力は有限だ。
それに対し、寄生勇者はまだまだ余裕そうである。これは早く作戦を遂行しないとどんどんこっちが不利になるな。
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