第397話 勇者の取り巻き
「………っ」
寄生勇者は棒立ちで隙だらけに見えるのに俺は1歩も動けない。その理由は勇者の聖剣が放つ異様な雰囲気からだろうか。今の寄生勇者には容易に近寄れない圧を感じる。
また、他の全員も同じように思っているのか、全く動かない。
「来ないならこっちからいかせてもらうぜっ!」
寄生勇者がそう言うと、1人の元へと向かった。
「シア!守れ!」
「っ!!」
寄生勇者が向かった先はシアだった。シアはやってきた寄生勇者が聖剣を振り上げても動けない状態だったが、俺の声を聞いて反射的に聖剣を防ぐために剣を動かす。
その動きに安心したのも束の間だった。
聖剣はシアの剣をすり抜けたかと錯覚するほどすんなり切断してその先にいるシアを斬った。
「勇者の聖剣をそんなただの高級な程度の剣で防げるわけがねぇーだろ。そんなちゃちなものなら俺らも苦労しねぇーよ」
「かふっ…」
「シアっ!」
シアは聖剣の圧に負けて身体を後ろに傾かせていたお掛けで体が真っ二つになることは無かった。だが、それでも内臓が零れそうになるほど体には深い傷ができる。
「剣聖様!」
聖女が急いでシアに寄る。そうしなければシアが死んでしまうから仕方がない。……だが、そのすぐ目の前には寄生勇者がいるのだ。シアのためとはいえ、その行動はさすがに何も考えて無さすぎる。
「らあっ!」
「ん?虫が止まったかと思ったぞ」
聖女がやられたらその時点で勇者を生かした状態で寄生虫だけを殺すのは不可能になる。だから聖女だけは最優先で守る必要がある。
そのため、俺は寄生勇者に斬りかかったが、それは片手に持った聖剣で受け止められた。
「良い武器だが、使い手が雑魚だな!」
「がっほっ……」
聖剣で俺の大鎌を搦め、俺を大鎌と一緒に地面に叩き落とした。寄生勇者は片手の癖に大鎌の重さをものともしていない。
「ぐらあっ!」
すぐに立ち上がって大鎌を再度振るが、既にその場に寄生勇者は居なかった。だが、聖女の方に行っていない。向かった先はルシエルだった。
「すげぇ!これでも攻撃が当たらねぇ!」
「くぅ……うぅ…」
俺が目を向けるの、光魔装の自動回避を駆使して何とか寄生勇者の聖剣を避けているルシエルが居た。
「…ん?お前は魔族か!隠蔽されててすぐには分からなかったぞ!何で魔族がこいつらと…」
「だあっ!!」
興味深そうにルシエルを見ながら攻撃を仕掛けている寄生勇者の横から高速でラウレーナが向かっていった。
ラウレーナは寄生勇者をそのまま殴ろうとするが、寄生勇者は高速のラウレーナに反応して聖剣をラウレーナへと振り下ろす。
「ぐうっ…」
「うぐっ…」
その結果、両者の攻撃が両者に当たった。
ラウレーナは振り下ろされた聖剣が当たって地面に叩き付けられ、寄生勇者はラウレーナに殴られて横に滑るように少し吹っ飛ぶ。
「捨て身で攻撃してきたって思ったら…まさかあれを食らって生きてるとはな。まだ未熟で弱いと言えど勇者の本気の攻撃だぞ」
「ぐうう…」
ラウレーナの水魔装を持ってしても聖剣を完全に防ぐことは出来ず、聖剣が当たった左肩には血が滲んでいる。だが、その傷は致命傷と言えるほど深くはない。すぐに立ち上がれたのと、水魔装で止血ができてるのもあり、ポーションで回復したらまだ戦闘はできるだろう。
「それにしても……」
寄生勇者はそう言って周りを見渡す。
「謎の男とその取り巻き2人よりも勇者の取り巻きが弱いってどうなんだ?勇者の取り巻きは世界で勇者の次に強くないと駄目だろ。というか、勇者の次に強いから勇者の取り巻きになれるんだろ」
「「っ!」」
その言葉にシアを回復させてる聖女と後衛で寄生勇者が本気を出してから動けなかったルイが反応する。
「昔はただの剣士のくせに剣技では勇者が手も足も出ないくらい強いやつとか、魔王軍幹部と1人で殴り合えって勝つ拳士とかもいたぞ」
「お前は随分と長生きみたいだなっ!」
聖女とルイを見ながら話している寄生勇者に俺は話しかけながら大鎌を振り上げる。もちろん、それは簡単に防がれる。
「俺らは死んでも魔王様が目覚める時に蘇るからな。逆に生きていても魔王様が死ぬと死ぬけど」
「そうかい!」
俺は聖剣を弾いて距離をとる。
大事そうな話を聞いたが、それを考えるのはまた後でだ。
何度か攻撃を食らわしてダメージは入っているが、効いている様子は無い。致命傷と言えるほどのデカい一撃をどうにかして入れるしかない。
そのためにはどうしてもあの聖剣が邪魔だな。
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