第394話 最悪の結果
「これでトドメだ!」
「ギヴェ……!!」
グリフォンとの戦闘が開始してから1時間弱が経過した頃、ようやくグリフォンの首を斬り落とすことに成功した。
「はあ…ふぅ…。手強かったな」
グリフォンは耐久力も上がっていたのか、多少傷を付けようが、血を流させようがものともしていなかった。そのため、討伐まで時間がかかってしまった。
「お、触手が落ちたな」
グリフォンが死んだことで触手が萎んでポロッとグリフォンの頭から落ちる。
魔物が死ぬと、この触手が萎んで落ちるというのはスタンピードが始まってから聞いていた。
「さて、残りの魔物を片付けに行くぞ」
「そうだね」
「そうじゃな」
その後、俺達は残りの魔物を狩りに向かった。まだBランクも数体残っているため、俺達の仕事は残っている。
ただ、1つここで俺達は大きなミスを犯した。普通は萎んだ触手は薄紫色から少し黒っぽくなるのだが、グリフォンから離れた触手は萎むだけで色は変わっていなかった。
これまで1度もスタンピードの魔物を狩ってなかった弊害がここで出た。…いや、仮に狩っていたとしても狩りに集中するため、そこまで注意深く落ちた触手は見れていなかっただろう。なぜなら、魔物を狩っていた者達ですら、気付いている者は僅かかつ、そんな小さな変化は無視していた。そんなことを気にしている余裕がなかったのもある。だからそんな情報は広まってすらいなかった。
ただ、このミスは最悪な結果を招いてしまう。
「はあっ!」
「ギュエ!?」
俺は通り魔のように魔物を襲っていた。
俺達パーティの3人はより広範囲を担当するためにバラけていた。俺達なら単独でも強化されたBランクを狩れる。魔力無しの俺は少しキツいところはあるが、それでも何とかなっていた。
俺達の参加により、激的…とまではいかないが、かなりの変化は生まれた。追加の魔物がいないため、着実に数は減らしていった。
「これで最後だー!!」
カラゼスのその叫びが響く中、剣が魔物の体を貫く。それにより、魔物の頭の触手が地面に落ちる。
そして、この場に立って生きている魔物の姿は全て消えた。
「俺達の勝ちだーっ!!」
「「「うおぉぉぉぉ!!!!」」」
一瞬みんなが動きを止めて静まった中、リーダーが叫ぶと、全員が雄叫びを上げてお互いの生存を喜びあった。
最初の想定外の強さの関係もあり、少ないとは言えない死者と負傷者が出てしまったが、それでも街を守り抜き、生き残ったのだ。
「喜びを分かち合うのはいいが、まずは魔物の死体を片付けるぞ!このまま1晩放置は不味いからな!」
大量の魔物を放置していたら腐って変な病気が蔓延するだけでなく、匂いにつられて他の魔物がやってくる危険もある。だからその前に処理しないといけない。
リーダーのその声でほとんどの者は我に返り、魔物の死体を集め出す。それには補給係の戦闘要因以外も積極的に参加してくれた。
そんな中、俺達は仕留めた少し遠く置いてあるグリフォンを仕舞いに行った。大きい物をマジックポーチに入れるのは少し手間取るため放置していたのだ。
「あれ?」
「どうかしたか?」
グリフォンを仕舞っていると、ラウレーナが首を傾げた。そして、だんだん焦り出して周りをキョロキョロとし始めた。
「グリフォンの頭の触手がないっ!」
「なっ!」
どの魔物の触手も取れて萎むだけで消えることは無かった。俺は確実に触手を処理しなかった自分のミスを悔やんだ。……ちょうどその時だった。
「がァァァァァ!!!」
「っ!何だ!」
突然誰かの叫びが聞こえてきた。俺達はそっちの方へと走って向かう。
「うがっ…がァァァ…!!」
「勇者様!」
「大丈夫!?」
「どうしたの!?」
声の元へ辿り着くと、そこでは勇者が頭を押えて蹲って苦しんでいた。また、その叫び声も普段の凛とした声出なく、汚いものだった。
ここで俺は最悪を想像してしまう。
「勇…」
俺が1歩踏み出して勇者を呼ぼうとした時だった。
すんっ……しゅたっ
「っ!?」
あんなに苦しんでいた勇者が急に無言で立ち上がった。一見治ったかに見えるが、その勇者の顔が無表情なのを見れば普通では無いのが分かる。
「っ!」
突然危険感知が反応した俺は諸々の防御特化の強化をして大鎌を前に出す。警戒していたからこそギリギリできたことだ。
すると、突然大鎌に強い衝撃が襲ってきて、俺は吹っ飛ぶ。
「う…うぅ……」
吹っ飛ばされた先で俺は立ち上がる。障害物がなかったせいで100mは飛ばされた。
また、立った俺は手に痺れを通り越した痛みを感じて大鎌が手から落ちる。
そんな俺にゆっくりと頭から触手を出し、青白いオーラを出した勇者が歩いて向かってくる。
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