第393話 第2ラウンド
「はあっ!」
「グヘッ」
俺の振った大鎌をグリフォンが羽毛のような重さを感じさせないかろやかな動きで後ろに跳んで避ける。
羽に傷が付いて飛べなくなったとしても、身軽な動き自体が出来なくなるわけでは無いか。
「ゲブゥゥゥ!!」
「っ!」
後ろに跳んだグリフォンはゲップのような汚い声で鳴く。するの、グリフォンの横に10以上の2m近い風の矢が生み出される。それの半分は俺、もう半分はルシエルとラウレーナに放たれた。
これは魔法ではなく、ただ能力で風を操ってるに過ぎないため、闇魔装を纏った大鎌で斬ってもきっと消せないだろう。まあ、人目の関係で闇魔装をできないから今は関係ないが。
「強力になれ!パワーエンチャント!」
「俊敏になれ!スピードエンチャント!」
グリフォンの風の矢を全て避けると、ラウレーナとルシエルは詠唱をして強化魔法を使った。
なんと、2人ともこのスタンピードの前に強化魔法を取得するのに成功したのだ。
職業から考えると、取得は簡単ではないと思われたが、普通に取得ができた。
ただ、俺はと言うと未だに取得ができていなかった。
「しっ!!」
身体強化に身体属性強化、さらには2つの強化魔法も加わり、かなりの強化がされた俺はグリフォンに再び迫る。
「はあっ!」
「グヘェェェ!!」
再び大鎌を下から振り上げると、グリフォンは前足の爪で迎え撃ってきた。
「ぐっ…」
「グベェェ……」
なんと、俺とグリフォンの力はほぼ同じで、拮抗した。俺としては大鎌の重さを加味したら勝っていると思っていた。
つまり、このグリフォンが普通のよりも強いのは風を操る能力だけでなく、身体能力も含まれているようだ
「う…ぅ…」
むしろ振った時の勢いが無くなり、大鎌の重さが力勝負に関係なくなると、体重を使って上から押せるグリフォンに力負けしてきた。
「ギペェェ!!」
「ちっ…」
そんな状態でグリフォンは風の矢を20本程作る。それらは俺に当てるべく向きが調整されている。本来なら今すぐグリフォンの爪を受け流して逃げるべきだが、俺はそれをしない。
だって俺は1人で戦っているわけじゃないからな。
「やあっ!」
「グウェェェ!!」
ルシエルの刀がグリフォンの体を斬った。グリフォンには空中に居た時よりも深い傷ができる。
「らあっ!!!」
斬られたことでグリフォンの前足の力が抜けたため、俺は一気に大鎌を押し返す。しかし、それをさせじと、作った風の矢が俺に向かって放たれる。
「任せて!」
しかし、その矢は俺の横にやってきたラウレーナが全て代わりに受けた。防御力の低い俺では致命傷になり得る攻撃も水魔装をしたラウレーナならほぼ無傷で耐えられる。
「どりゃあっ!!」
2人のサポートもあり、俺はグリフォンを弾き返すことに成功する。グリフォンは後ろ足だけで立っているような体勢となり、俺達から腹が見える。
「輝け!ライトランス!」
「キメェェェ!!!」
そんな隙だらけのグリフォンの腹にルシエルの魔法が放たれた。それはしっかりと刺さったが、致命傷と言えるほど深くは無い。腹であっても防御力は高いようだ。
「グウェ…」
「ちっ」
俺も追撃しようとしたタイミングでグリフォンは後ろに大きく跳んで離れる。これには思わず舌打ちが出てしまう。
「さて、次はどうする?」
俺が魔法を使えない状態でもグリフォンと戦えている。いや、むしろ勝っていると言ってもいい。
また、もうすぐラウレーナの巣も完成するため、さらに有利となるだろう。
そのため、俺達はこちらから攻めることなく、グリフォンの次の行動を待っていた。
「グヘッ!!」
そんな状況でグリフォンがしたのは翼を振っての風の斬撃を放つことだった。
もう手札が無いのなら、早いところグリフォンを片付けて苦戦している他のところへ行かなければならない。
俺達は再びグリフォンに攻撃を仕掛けた。
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