第392話 第1ラウンド

「ギュウエェェ!!」


「「「グ、グリフォンだあっ!」」」


近付いたグリフォンが再度鳴くと、その声を聞いた下で戦っている者達が騒ぎ出す。

それを見てグリフォンがまだ先の方にいる下の者達に狙いを定める。


「お前の相手は俺達だ!」


「ギブエ!?」


しかし、グリフォンは下に降りる前に上からやってきた俺達の方を向く。

俺が作った無属性魔法の足場を使って俺達は一直線でグリフォンまでやってきたのだ。


「おっら!」


「ギヴ!」


俺が上から振り下ろした大鎌をグリフォンはあっさり下がって避ける。


「ウォーターライン!」


「ギブエッ?」


しかし、それ自体に攻撃性がないラウレーナの水の線は避けることなく、後ろ足に巻き付く。


「さあっ!落ちようね!」


「ギヴェ!?!」


ラウレーナは落下しながら水の線を引っ張ってグリフォンを地上に落とそうとする。

しかし、グリフォンはその程度で飛べなくなるようなものでは無い。これがワイバーンなら落ちてくれたんだがな。

とはいえ、その機動力は低下してしまう。


「やあっ!」


「ヴォッ?!」


その結果、ルシエルの刀を避け切れなかった。胴体に薄い血が滲む線ができる。

俺もルシエルのように攻撃を仕掛けようとした時だった。


「っ!?避けろ!」


「ギバァァァ!!」


危険感知が反応し、叫ぶと、そのすぐ後にグリフォンも叫ぶ。すると、グリフォンの左右から風の竜巻のようなものが生まれる。

通常のグリフォンならその竜巻の大きさは精々2、3mだろう。しかし、目の前にある竜巻は10mに迫るほどの大きさがある。

これを見てしまうと、否応でもこのグリフォンもパワーアップしているのが分かってしまう。


「下がれ!」


「わかった!」


俺の言葉にルシエルは従って無属性魔法の盾を蹴って地上へと降りていく。

いくら息を合わせようとしても、地上のように動けるように無属性魔法の盾を配置することはできない。そうなると、どうしても空中で攻撃を避けるのは難しい。だからルシエルは地上に避難させた。


「ギバババ!!」


グリフォンはそう叫びながらも、自身を傷つけたルシエルを狙って竜巻を2つとも放つ。


「しっ…!」


ルシエルならその竜巻を避けれるだろうと考え、俺はグリフォンへと迫る。

もう空中にいるのは俺しか居ないのだからグリフォンを落とす役割は俺にしかできない。


「おっら!」


「ギエェ!」


闇身体強化も行った俺の大鎌の攻撃はグリフォンに避けられる。ラウレーナに妨害されていてもその機動力は侮れない。

だが、俺達には事前情報と時間があったのだ。グリフォンを地上に落とすための作戦はしっかり考えていた。

俺は空中でグリフォンの攻撃を避けながらその時を待った。




「ギブェバ!?」


グリフォンは突然汚い声で絶叫する。俺はその隙を待っていた。


「おっらっ!!!」


「ギエェ!」


痛みに気を取られていたグリフォンに攻撃を仕掛けることで、俺は今度こそグリフォンの羽に浅くない傷を付けることに成功する。

地上から引っ張られていることもあり、グリフォンは地上へと落ちていく。


「おまけだ!サイズ!」


「ブヘェェ…!!」


落ちていくグリフォンに上から無属性の大鎌で追撃をする。グリフォンはさらに加速しながら落ちていく。

それを追って俺も地上へと降りる。



「第1段階は成功だな。ナイスだ2人とも」


「でも本番はここからだよ」


「そうじゃな」


俺達はグリフォンを地上に落とすことに成功した。だが、まだグリフォンは普通に生きているから気は抜けない。


ちなみに、さっきグリフォンの動きが止まったのは地上のルシエルが水の線を通して光魔法をグリフォンに放ったからだ。

水が雷を通すのと同じようにルシエルの光魔法を水を通れるのだ。ただ、その際にはラウレーナにも魔法が通らないように細心の注意が必要なため、それこそ準備がちゃんとできる時しかできない芸当だ。


「ギブェェェ!!」


そして、地上に落とされて怒り狂った目の前のグリフォンとの第2ラウンドが始まる。

グリフォンの横に現れた4つの巨大な竜巻を見るに、これからの戦いは空中での戦いよりも厳しくなりそうだ。

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