第381話 5人の成長
「準備はいいか??」
「ああ!」
「問題ない」
人の来ないであろう朝早くの林の奥で俺とカラゼスのパーティである刹那の息吹は向かい合っていた。
お互いに武器や装備は万全である。カラゼスらもBランクに相応しいしっかりとして装備を纏っている。
「始め!」
審判であるラウレーナが開始の宣言をした。
お互いにすぐには動かずに膠着状態となったが、それは少しの間だった。
「嘘だろ!?」
俺は素で驚く。目の前から盗賊であるナユが消えたのだ。隠密で気配を消せるのは予想していたから特に注意深く見てたし、気配感知もしていた。だか、それでも気付いたら消えていたのだ。消える瞬間すら気付けないとは。
「「しっ!」」
ナユが消えると、直剣を持ったカラゼスと長槍を持ったエルミーが弧を描いて挟み撃ちするように走ってくる。
また、その後ろでは火魔法使いのリリラが魔法を準備している。
「「はあっ!」」
「っと!」
身体強化をしたカラゼスとエルミーが同時に攻撃してきた。その攻撃を身体強化と闘装をした俺は下がって避ける。しかし、それは許さないとばかりにカラゼスが直剣を俺の背に回す。このまま下がったら斬られてしまう。
「よっ!」
だから俺は大鎌を背に持っていき、直剣を防ぐ。すると、横から長槍が向かってくる。直剣を弾いてすぐに大鎌を手元に戻してそれもガードする。
「っ!?」
そのタイミングで危険感知が反応する。慌てて仰け反るが、防具の隙間を狙ったナイフが掠る。普通にダメージを食らってしまったが、今はそれに驚いている場合では無い。
「今度は魔法かよ!」
ナユが攻撃した隙にカラゼスとエルミーは離れていたようで、俺の横からファイアランスが飛んでくる。ナユの攻撃で仰け反り、体勢の悪い俺は避けられない。
仕方なく、大鎌に闇魔装を纏い、魔法を斬り消し、大きく距離をとる。
「もう使うことになるのか…」
こんな初っ端の攻防で魔力を使うことになるとは思っていなかった。正直、魔力を使わないと今の魔法でそれなりの怪我をしていた。
厄介なのが主に3つある。
まず、カラゼスとエルミーの連携だ。俺はこんなにも息のあった連携をする相手と戦って経験があまりなく、対処が上手くいかない。俺の戦い方的には片方に集中するのだが、それをさせてくれないのだ。
でも実際2人を同時に意識しても戦えるが、それはナユがいなければだ。2つ目の厄介な点はナユの存在だ。全力回避してもナユの攻撃は避けきれなかった。つまり、危険感知すら遅らせるほどナユの隠密は優れているのだ。恐らく、シアの父の隠密よりもスキルレベルは高いだろう。
そして、ナユで隙を作らせてからの厄介3つ目のリリラの魔法である。ナユの攻撃のせいで避けられる状況ではなく、物理攻撃ではないから防具に当てて無理やり受けるというのも難しい。
「こりゃあ、本気で不味いな」
俺は闇身体強化と雷付与、それから魔法を消して解けた闇魔装を行う。
正直、これらをしないと気が付いたら詰んでいるという状況になりかねない。
また、俺が早々に魔力を使い出したのを見てカラゼスはニヤッと笑う。
正直、予想以上にカラゼスらは前とは比べ物にならないほど強くなっている。
「俊敏になれ!」
「…っ!」
そんな俺を見た回復魔法使いのルフエットが詠唱を始める。その詠唱は聞いたことがない。つまり、俺の知らない魔法である。
「スピードエンチャント!」
「っ!!」
詠唱が終わると、カラゼスとエルミーが薄緑色に光っていた。
「「しっ!!」」
そして、そんな2人が向かってくるが、明らかにさっきよりも動きが速い。今の魔法は他人のステータスを強化するものか!きっと素早さを上げたのだろう。
もしその魔法が自分にも可能だったら、俺にこれ程合う魔法は無い。いや、仮に自分に掛けられなくても俺ら3人のパーティならかなり役立つ。
とはいえ、今はそれは後回しだ。まだカラゼスとエルミーが強化されるのはまだいい。問題はナユも速くなっていた時だ。さっきですら避けるのがギリギリできなかったのに、それが更に早くなられたら…。
「雷身体強化」
身体属性強化を変えて俺も素早くなるようにし、向かってくる2人に迎え撃った。
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