第380話 積もる話と頼み

「一匹狼だったのに…」


「孤高を貫いてたのに……」


「……俺そんな感じだったか?」


((((こくっ))))


思わず漏れた俺の呟きに4人が頷く。

なんか、1年程度しか経っていないのに、過去の黒歴史を掘り返されているようで恥ずかしくなってきた。


「でも、それは何か分かるかも」


「想像がつくのじゃ」


「え!?」


俺の左右から思わぬ追撃が発生した。ラウレーナとルシエルにまでそう思われていたのか?


「ですよね!例えば……」


それから女達で昔にあったことをお互いに話し始めた。


「そこでどうしたと思いますか!そこで何と…」


「…今とそこは変わらんのじゃな!」


「カラゼス。ちょっと」


「あ、はいっ」


なんか、小っ恥ずかしくていたたまれなくなった俺はカラゼスを連れてギルドから一旦出る。

話を止めようかとも思ったが、お互いに楽しそうに話しているから止めるのは忍びなかった。

6人は出ていく俺を止めずに微笑んで見送ってくれた。



「ここまで何があったか聞かせてくれよ」


「いいですよっ!」


外に出て少しブラブラしながらカラゼスは俺と別れてからあったことを話した。中では俺の話ばかりで、カラゼス側の話を聞けなかったからな。

カラゼスも余程話したかったのか、常にテンションは高かった。




「半彩化を狩ったのか!」


「そうなんすよ!!」


そんな話の中でも1番驚いたのは半彩化をカラゼスらで狩ったことだ。

元の魔物はCランクだったらしいが、それでも半彩化ならBランク程にはなるはずだ。それを当時Cランクだったカラゼスらで狩るのは凄いことだ。

その功績もあってBランクに上がれたそうだ。


「それにしても彩化の魔物が多くないか?」


俺だけでも半彩化、彩化の魔物に3体あっている。その中の1体はカラゼスらと一緒に遭遇したやつだ。

さらに、カラゼスらも俺と別れてからで1体と出会っている。明らかに数が多過ぎる。


「何かの前兆じゃないといいっすね」


「…そうだな」


勇者が現れると魔王と呼ばれる者が現れるとも言われているし、何かの前兆の可能性は否定できない。

とはいえ、考えても分からないので警戒するくらいしかできない。



「あ、そうだ!兄貴に頼みがあるんすよ!」


「何だ?」


話が一段落すると、カラゼスがそう言ってきた。無茶な頼み以外は全然聞いてやる。

金を貸せとかだったら貸した上で少し叱るけどな。


「また俺達パーティと戦って欲しいんすよ」


「ほう……」


前回の時はまだお互い駆け出しだったため、子供の頃から両親から鍛えられていた俺がステータスでも経験でも圧倒していた。

だが、カラゼスらも経験を積んでその差は少なくなっただろう。


「それはいいな。森でやるぞ」


「っ!はいっ!!」


ギルドの特訓場ではなく、森でやると言った意味が分かったようで、カラゼスは嬉しそうに返事をした。

特訓場を使わないのは俺が魔力を使わないと勝負にすらならない可能性があるからだ。どうせやるなら俺も本気でやって勝ちに行きたい。


「いつやる?」


「明日はどうっすか?」


「なら明日だな」


やるのは明日に決まった。こんな楽しみは早い方がいい。


「審判と周りの警戒はラウレーナとルシエルに頼むとするか」


俺は今回1人で戦うつもりだ。正直、3対5とはいえ、AランクパーティとBランクパーティで戦ったらさすがに負けない。

それに昔は100回やっても俺が勝つと断言できたのが、今ではどうなっているのかが気になるしな。


「明日は朝6時に南門前に集合して行くからな」


「はい!」


あまり遅いと人も増えるので、できるだけ人のいない時間にやりたい。そのために明日は少し早くなる。



「そうと決まったら早く宿を決めて休まないとな」


一応10日間走り続け、その間は野宿していたので、万全な状態にするために休まないといけない。

俺はそれからギルドで2人を迎えに行き、カラゼスらにおすすめの宿を聞き、宿を取って休んだ。

ギルドに戻った時に6人がニヤニヤしていたが、それは無視した。

ただ、明日戦うとカラゼスが言ってからは4人の顔が真剣になった。4人もやる気なようでよかった。


そして、お互いに体調を万全に整えて次の日がやってきた。

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