第375話 次の行先

「まずは近辺にどんな国があるか調べておくね」


「余も手伝うのじゃ」


「それは助かる」


俺が結論を出せないでいると、2人がそう言ってくれた。

正直、近辺にどんな国があるかもわからない状態では決められるわけがなかった。だからその提案は有難い。


そして、それから2日後、2人はどんな国が周りにあるかを調べたのを伝えてくれた。



「まず、ここから行けるであろう近くには4つの国があったよ」


「意外とあったな」


選択肢としては多い方が助からその数は嬉しい誤算だ。


「選択肢として悪い方から言うけど、1番無いと思うのが、魔物もほとんどでなくて、かなり裕福な国で富裕層の老後や別荘として人気な国だね。良い点をあげるとするなら高級な珍しい物はいっぱい集まるみたいだよ」


「うん。無いな」


金は余っているからその国でも充分に生活は出来ると思う。だが、そんな国にいても退屈なだけだ。それだったらこの街で魔物を狩っている方が何倍も良い。


「で、次はエルフの国だね。森で囲まれてるせいもあって、見たことないような魔物が多いらしいよ。ここよりも魔物は少し弱いくらい。

だけど、排他的で余所者はあまり歓迎はされないらしい。そのせいもあって冒険者ギルドもないみたい」


「それも無しだな」


行けるようだが、ほとんどの店でいい顔はされず、見て回るくらいしかまともにできないらしい。また、魔物を下手に狩っていると、誤射の振りをして撃たれるそうだ。

ルイの母はエルフだけど、そんな排他的では無いが、そういう者は森から出るから逆に排他的な者が集まったらしい。

また、エルフは長寿のため、昔から生きているエルフほど排他的の傾向は強いそうだ。


さすがにまともに活動できない国は嫌だ。



「その次は闘技会が盛んで、僕の国とは違って暗記や魔道具、目潰し、金的何でもありの勝てばいいって大会があるの。故意でなければ殺してもいいらしいよ」


「それは怖いが、ある意味楽しそうだな」


要すると、より実践向きで冒険者向きの戦いをして良いと言うことだ。冒険者の世界では卑怯な手を使われようが、言ってしまえば負けた方が悪いのだ。


「ちょうどもう少しで3年に1度の大規模な大会があるんだって」


「ほう!」


ほぼ毎日試合自体はやっているが、大規模な大会としてやるのは3年に1度だけらしい。その1度がもう少しであるそうだ。


「魔力が使えないのはきついが、ちょっと惹かれるな」


魔力が使えない以上、戦うのは少し大変だが、ちょっとその大会とやらは気になる。

何なら出場する者を見るだけでも戦い方の参考にはなる気がする。


「……ん?これが3番目?」


確かラウレーナは選択肢として悪い方から話すと言っていた。それなのに、ここまで優良そうなのが3番目なのか?


「この選択肢には致命的な欠点があるのじゃ」


「欠点?」


もしかして、周りに強い魔物が全く居ないのか?だとしたらちょっと微妙かもしれないが、メインが闘技会である以上、あまり問題は無いかもしれない。


「その大会に勇者が参加するって噂があるんじゃ。出処もどこかの貴族らしいからかなり有力な情報なんじゃよ」


「よし、その国にだけは何があっても絶対に行かんぞ」


今の情報だけで、俺の中では富裕層が多い国以上に行きたくなくなった。

どんなに良い要素が重なろうが、勇者が居るという時点で一気に行きたくなくなる。

関わらなければいいと思うが、絶対にどこかで出会って絡まれる気がする。そうならないためには近くに居ないことが大事である。

この情報を入手してくれたルシエルには感謝しないとな。


「それで最後の国なんだけど、特に変哲の無い普通の国だよ」


「え??」


最後にそんな国を持ってくるとは思わなかった。最後なんだからもう少し面白い要素があると思ってた。


「ただ、それは数年前の話なんだ。

ここ5~7年で国の周りの魔物がちょっとずつ強くなったそうなんだよ。元々は国の周りにはゴブリンくらいしかいなかったのに、今ではCランクが当たり前のようにいるらしい。それに最近ではBランクの姿も時々見えるそうだよ」


「それは変だな」


そんな数年でに魔物の分布が変わることなんてない。あってもそれは一時的か1回の急激変化である。少しずつ魔物が強くなっていくというのは聞いたことがない。


「そんなこともあって最近は命知らずな実力に自信がある冒険者はこの国に行ってるらしいよ。だから賑わってもいるみたい」


「なるほどな……」


魔物が強くなったせいで人が多く来て、街が賑わって発展するとは何ともおかしな話ではあるな。


「……よし、その国に行くか」


「僕もそれがいいと思ってたよ」


「余もじゃよ」


こうして、俺達の次の行先が決まった。

彩化に良いようにやられておいてまた危険そうな街に行くのかという話にはなるが、自由に生きれるのが冒険者のいい所だ。何かに怯えてそれができなかったら冒険者になった意味が無い。

とはいえ、死にに行くつもりでは無いので、魔物を殺ってレベルは上げるつもりだ。そして、どうすれば強くなれるのかについても探っていく。


何より、少し魔物の急変については気になるから調べてみたい。

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