第376話 報酬

「完全復活!パーフェクトヌルヴィス様だぜ!」


起きてから13日が経過し、それから外で軽く狩などをした。そして、計15日経った今日、やっと2人から好きに行動して良いとの許可がでた。

一応ルシエルは俺の奴隷のはずだが、奴隷の意見に左右される主人とは傍から見ると変な話かもな。まあ、俺がルシエルを奴隷として見てないので、俺からしたら変な話でもないが。



「えっと、ギルドに来て欲しいって話だっけ?」


「そうだよ」

「そうじゃな」


ギルドからやってきた使いの者が今日の10時頃にギルドへ来て欲しいと言っていたのだ。

その約束を忘れずに俺達はギルドへと向かった。



「おっ!英雄達の登場だぜ!」

「待ってたぜ!」

「英雄のお通りだ!道を開けろ!」


「……何だこれは??」


俺達がギルドに入ると、昼前なのに人で溢れかえっていた。また、その人達は全員俺達を見て声を上げて盛り上がる。



「今回の彩化の一件を解決できたのはお前達不撓不屈の魂のおかげだからな」


「ギルド長…」


人の間から出てきたギルド長が俺達にそう言ってくる。だが、結局解決したのはSランクだ。

けど、こうやって盛り上がっているのに、わざわざ冷めさせることを言う必要は無いだろう。


「お前達の報酬を発表する!!」


ギルド長が声を張り上げてそう言うと、騒がしかったギルド内が静まりかえる。


「まず、最上位ポーション15つに大黒貨4枚!」


「っ!!!」


その豪華過ぎる報酬に俺は驚きのあまり、目を見開いてしまう。

最上位ポーションは1つ大金貨4枚からなので、今回のポーションだけでは金額的には黒貨6〜9枚程度の価値である。だが、最上位ポーションはそもそも手に入れるのが難しいのだ。大きな街でも数本しか売ってなく、数を揃えるのが難しい。それが15本も纏めて貰えるのは凄いことだ。



「次にエリクサー1本」


「はあっ!?」


これには思わず声を上げてしまった。エリクサーは欠損だろうが、どんな怪我や病気も生きてさえいれば完治させられる。金額では大黒貨数枚の価値はあるし、そもそも普通に売ってないから手に入れられない。


「そして、ヌルヴィス、ラウレーナ両名をAランクとし、ルシエルをBランクとする。それにより、不撓不屈の魂はAランクパーティとなる!」


「……」


奴隷であるルシエルにギルドカードを作ってくれるだけでなく、もうBランクへ上げてくれた。また、俺とラウレーナがAランクとなった。

さらに、それらによってパーティとしても俺達はAランクとなった。



「それにより、3名には二つ名を与える!」


「っ!!」


何と、Aランクパーティ以上には二つ名が与えられる場合があるそうだ。あのSランクが名乗っていた「電光石火」のような感じだ。

ちなみに、ザックスらにもあり、ザックスは「爆裂斧」であるそうだ。ステータスや武器、戦闘スタイルなどで決まることが多いらしい。


「まず、「夢幻の舞姫」ルシエル!」


これはルシエルの光魔装の効果で絶対に当たると思う攻撃を避けることから来たらしい。光りながらまるで夢や幻のように攻撃を避けるさまが舞っている姫のような美しさに見えるそうだ。


「次に「強靭金剛」ラウレーナ!」


この二つ名は軟らかいのに強固で強いラウレーナにはピッタリな二つ名だ。これを聞いただけで防御に秀でているとすぐに分かる。


「最後にヌルヴィスだが、これはSランク電光石火のアルガートが命名した」


「「「……っ!」」」


「げっ……」


ギルド長の発言でギルド内の誰もが固唾を呑む中、俺だけは嫌な声を出した。

あいつが名付ける二つ名が良いものであるはずがない。絶対にセンスが無いはずだ。



「最後に「至極の死神」ヌルヴィス!」


「「「おおっ…!」」」


「あ、意外とまともだ」


あいつが名付けたにしては普通に良い二つ名である。

俺の武器の名前も至極であるが、名前の由来は極地に達しているという意味である。だが、俺の二つ名の至極は極めて黒に近い深い赤紫の色のことだ。きっと闇魔装を見てそう名付けたのだろう。いつか色ではなく、俺の大鎌の至極と同じ意味になりたい。

また、死神はどんな敵だろうと自分の大鎌で絶対にトドメを刺すところから来ているらしい。いや、彩化にトドメを刺したのはお前が逃がしたからだからな?


「これにて、報酬の発表を終わりにする!」


「「「宴だっ!!」」」


報酬の発表が終わった瞬間からその場は宴に切り替わった。その盛り上がりは俺達を祝いに来たのか、飲み会をしに来たのか分からないレベルだ。

しかし、こうして平和な日が過ぎていった。

ただ、俺は冒険者の最上位である数人しかいないSランクから直々に二つ名を貰うということについて何も知らなかった。

あいつが善意や気まぐれでわざわざ二つ名を付けるわけがなかったのだ。

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