第365話 緊急依頼終了
「ん…んーーー……!」
俺は身体を解すように伸びをしながら起きる。
テントの中から透ける外は常に暗くなっており、火の光りしかないからもう夜になったようだ。
「あ、主が起きたのじゃっ!」
「あ、ヌルヴィスおはよう。あ、時間的にはこんばんはかな?」
「起きたからおはようでいいんじゃないか?ルシエルとラウレーナもおはよう」
起きた俺の近くにいたのは前回のザックスではなく、ルシエルとラウレーナだった。ルシエルとラウレーナは俺よりも先に起きていたようだ。
「2人とももう起きてるんだな」
正直、2人もかなり血を流していて、重症だったからその日のうちに目が覚めるとは思ってなかった。
「そりゃあ2日も経ってれば起きるのじゃ」
「え!?2日も経ってるの!?」
「そうだよ。僕達も昨日に起きたんだ」
テントの中で目覚めたのもあって、まだ緊急依頼中であり、日が変わって居ないかと思っていた。しかし、実際は彩化討伐は2日前の出来事のようだ。
「今は巣の掃討作戦中だよ。巣は入り組んでて広いし、魔物は一体一体が強くて数も少し多いから結構かかってるみたい」
「でも予定じゃと明日には終わって、明明後日には帰れるぞ」
今回の緊急依頼は半彩化を含め、今回の魔物の全ての討伐だ。だから巣の中に生き残っている奴も根絶しないといけない。巣の掃討が3日間で終わると考えればむしろ早いのかもしれない
「しかし、それは眠り続けて悪かったな。明日からは俺もそれに参加しないとな」
「あ、それはできないのじゃ」
「え?」
せっかく意気込んだところでルシエルに却下されてしまった。
「僕達は圧倒的1番の戦功をたてたから、他の人の手柄を取るようなことは控えて大人しくしていてくれだってさ。もちろん、強力な魔物が出たら話は別だけど」
「あ、なるほどな」
ギルド長は討伐した魔物によって報酬も上がると言っていた。だから他の人の金稼ぎを邪魔するなということか。
あ、でもそう理由をつけて周りを納得させたからゆっくり休んでいいぞってことかもしれない。
「なら明日はゆっくり休んでいるか」
「起きたばっかりだし、ちゃんとそうしてね」
「余達も今日はずっと火の番をしていただけじゃ」
きっとまだ病み上がりのこの体は万全の調子では無さそうだし、ゆっくりして回復しよう。
「あ、起きたらザックス達とギルド長に来てくれって言われてたよ」
「まだ日が暮れたばかりじゃから、今から言っても問題ないと思うじゃよ」
「それなら今から行ってくるかな」
それから俺はザックスとギルド長の元に向かった。ギルド長もそうだが、特にザックス達は俺が起きたことに喜んでくれた。ただ、もう夜ということもあり、諸々な話は明日ということになった。
巣へは緊急依頼に参加している3つあるAランクパーティのうち2つが交代で入っているらしく、ちょうど明日はザックス達が巣に入らない日らしい。
次の日はザックスとギルド長により詳しい彩化についての説明が求められたので、ラウレーナとルシエルと共に説明をした。前回の俺の説明は手短に済ませたものだったしな。
「今日で巣の掃討は終了だ!だが、街まで無事に帰るまでが緊急依頼だからここで決して気は抜くなよ!だが、とりあえず今日までお疲れさんだ!」
次の日夜、ギルド長は全員を前にしてそう大声で話した。明日は彩化の巣や群れから逃げた魔物が居ないかを探しつつ、街への帰路につく。そして、もう1回夜営をし、明後日に街へと帰る予定である。
この次の日も特に逃げた魔物が見つかることなく、安全に過ごすことが出来た。
そして、その次の日……。
「街へと入るぞ!」
緊急依頼が始まる前と変わりない街へと俺達は帰ってきた。緊急依頼が成功したということもあり、街の人達は俺達の凱旋に声をかけて祝ってくれた。
また、最後に少し話があるということで、俺達はその足でギルドまで向かった。
「緊急依頼はこれにて終了だ。報酬についてはこちらで働きに応じて支払う。だから1週間後に受付に行って追加報酬を貰ってくれ。
その報酬額に不満があるなら俺が直接聞こう。ただ、大した働きもしてないのに偉そうに文句を言うのはやめてくれよ。それと、不撓不屈の魂は逆に不満を言われたら何も言い返せないからできるだけは出すから何も言わないでくれ」
「「「ははははっ!!」」」
ギルド長の後半の発言でウケた者が笑い出す。中にはお前は文句言うなよと仲間を小突いている者もいる。今回の依頼で俺達もギルドに少しは馴染めたようだ。
また、1番の戦功をあげた俺達に手柄を横取りしたとかで文句を言うものはいなかった。いや、俺達が眠っている間に言った者や言わないが思っていた者はいたらしい。だが、そんな者にはザックスや他のAランクパーティが彩化と戦った場所を見せに行ったそうだ。そうすると、その悲惨な現場を見て全員が何も言わなくなったらしい。
ここでも助けられてしまったようだ。
「最後に忘れずに参加報酬の大金貨3枚を受け取ってから帰れよ」
俺達は順番に大金貨3枚を受け取ってそれぞれ帰った。とはいえ、みんなに勧められて俺達が1番にギルド長から参加報酬を受け取ったので、他の者がちゃんと帰ったのか、飲み会へと移行したのかは分からない。
こうして今回の一連の騒動は終結したと思っていた。
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