第359話 死兵
「ちっ!」
新手のそいつらも2足歩行だが、半彩化よりもふた回り以上は大きく、竜種のような硬そうな鱗を持っている。片方は走り、片方は翼で飛んでいた。
半彩化を確実に仕留めるためにもう一撃入れたかったが、2体は突進するかのような勢いで向かってきている。あれを食らって無事でいれるかは怪しいため、俺は闇の斬撃を放って距離を取った。
「キガアッ!!」
飛んでいる方のやつがスピードを上げて闇の斬撃をその身を挺して半彩化を庇う。鱗は裂け、体からは緑色の血がつーっと流れる
「「グルゥゥ……」」
「ィ……」
だが、そつらはやってくるのが少し遅かった。
そいつらの後ろでは半彩化が息をするのもやっとといった状態になっている。
半彩化は前よりも動きは良くなっていた。だが、ステータスが上がっていたわけではない。そんな中で俺達3人に片腕のハンデを背負って勝つのは無理だ。
「キィエ……」
「「キィガァ!」」
半彩化が弱々しく鳴くと、新手の2人は半彩化へは少しも触れさせんとばかりに前に立ちはだかる。
「そんなことをしても……」
それを見てもう半彩化の命は何もせずとも散るから意味が無い行為だと思った。
だが、あの知能が高い半彩化がそんな無駄なことをするか?
よく見ると、半彩化は体を丸まるようにしてじっと蹲って動かない。何かここから回復する手立てがあるのか?
「早く半彩化にトドメを刺すぞ!」
「うん!」
「ああ!」
俺達3人は一斉に半彩化へと向かう。
半彩化が何をするかは分からないが、最悪な事態は避けないといけない。
「「キィゴ!!」」
「うおっ…!!」
だが、半彩化の前にいる2体が火を吹いてきた。これは別に2体が彩化している訳では無い。こいつらの体の中に火を作る火袋なる器官があるのだろう。
「こいつらはアースドレイクとワイバーンから生まれたやつだ!」
よく見ると、その2体にはそれぞれの特徴がある。羽のある方は虫の羽と言うよりもワイバーンのような羽だし、羽の無い方はガタイ良くて立派な角がある。
「しっ!」
火が収まったのを確認し、俺はワイバーン産の方に迫り、大鎌を振る。
「シィガッ!」
「っ!」
ワイバーン産は俺の大鎌を避けようとせず、俺に鋭く尖った爪を突き出してきた。このままだと俺の大鎌の方が先に当たるが、俺もその爪を完全に避けることはできない。
「くそっ…!」
俺は大鎌を当てることを断念して一旦距離をとる。少し隙を晒して避けたつもりだが、ワイバーン産に追う様子はない。
「…自分が死んでも俺達に大ダメージを与えるつもりかよ」
最後に鳴かれた時に何という指示があったかは知らないが、こいつらは自分の命を投げ打ってでも半彩化を守りたいようだ。
ちらっと横を見ると、もう1体も同じようでラウレーナとルシエルも四苦八苦している。
本来なら安全にちまちま攻撃すればいいのだが、今は半彩化を早く仕留めたい。
「多少の傷は覚悟で最短で殺るぞ!」
「わかった!」
「了解したのじゃ!」
俺達は急いで目の前の2体を殺しにかかる。
半彩化を狙うと必ず庇うから意外と楽にいけるかとも思ったが、その際は必ずこちらに攻撃もしてくる。だから自分達の重症を避けるために深手を負わせられない。
また、こいつらは半彩化がわざわざ呼ぶだけあってシンプルに強い。素のステータスでは元のアースドレイクやワイバーンをも上回っている。半彩化よりは弱いが、それでも2体揃えば半彩化とほぼ変わらないようなものだ。しかも、それが死兵と化してるため、かなり厄介だった。
「しぶといな……」
「「キィ……」」
もう10分ほど経つが、まだ2体を殺れていない。もう既に半彩化よりも重症の傷になっているが、それでも前の2体は倒れない。半彩化を庇っていながら、ここまで粘られるとは思っていなかった。
ビキビキッ!!
「「「っ!!」」」
焦りが募っていく中、半彩化の方から何かが割れるような変な音がした。2体の隙間から半彩化を見ると、体が白く濁っていて、ヒビ割れていた。
ベリベリ………
ヒビ割れた場所から這い出でるように半彩化が出てきた。
残念ながら間に合わなかったようだ。
「…脱皮か?」
その様子は脱皮をしているかのようだった。ゆっくり行っているそれを俺達は何故かただ見ているだけで動けなかった。
「キェエエ……」
完全に出てきた半彩化は傷が全て治っているだけでなく、無くなった右腕も生えており、前よりも一回り大きくなっていた。
そして、何よりも鉤爪の先まで完全な緑色に染まっていた。
「キィエ」
「「キィ!」」
半彩化…改めて彩化が鳴くと、死に絶え絶えな2体がふらふらとしながらも彩化の前に並ぶ。
ガブッ!
「ひっ…!」
彩化は自分のために死ぬ気で時間稼ぎをしてくれた2体を生きたまま食べ始めた。その光景には思わずルシエルが小さく悲鳴を上げる。
「キエエエ」
彩化は自分よりも少し大きい2体を丸呑みレベルに早く食べ終えると、口の周りの血を腕で拭う。
そして、待たせたなとばかりに鳴いて俺達を見詰めてきた。
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