第356話 緊急依頼開始

「さて、2日後の半彩化討伐だけど、もちろん参加でいいよな?」


「うん!」

「ああ!」


いらない確認だとは思うが、一応確認してみた。もちろん、2人とも参加してくれるそうだ。


「それで、半彩化を仕留めるのは僕達になるんだっけ?」


「前はそう言ってたけど、今はどうだろうな」


前はギルド長もそう言っていたが、その時よりも事は大きくなった。もしかすると、俺達よりも実績のあるAランクパーティに任せるかもしれない。

でも、1番可能性が高いのは他のAランクパーティと共同になることだ。共同になるのは1番避けたい。共同になったら俺とルシエルは出せれる力に制限がかけられてしまう。


「できるだけ俺らだけでやりたいな。……最悪共同となった場合はザックス達じゃないと駄目だ」


100歩譲って、ザックス達なら信頼できるから魔力持ちを見せても問題は無いかもしれない。


「でもそれは魔物達の行動次第で全て変わるからその場の判断に任せるしかない」


「そうだね」


「そうじゃな」


それからは俺達3人で半彩化と戦うこととなった場合の作戦などを立ててその日を過ごした。




「ステータス」


2人が出て行って1人になった部屋の中で俺はそう唱えた。



【名前】  ヌルヴィス

【種族】  人族

【年齢】  16  

【職業】  不遇魔法剣士

【レベル】 47 (10UP)  


【生命力】 680/680  (150UP)

【闘力】  680/680  (150UP)

【魔力】  680/680  (150UP)


【物攻】  373  (80UP)

【魔攻】  373  (80UP)

【防御】  220  (50UP)

【敏捷】  327  (70UP)

【精神】  327  (70UP)


【物理スキル】

・大鎌術Lv.7・身体強化Lv.6

・無属性魔法Lv.5・体術Lv.5 ・大刀術Lv.4

・闘力操作Lv.3・闘装Lv.2


【魔法スキル】

・闇魔法Lv.7・雷魔法Lv.6(1UP)

・氷魔法Lv.6(1UP)・身体属性強化Lv.5(1UP)

・魔力操作Lv.4・付与魔法Lv.3・魔装Lv.2


【他スキル】

・隠蔽Lv.8・危険感知Lv.2・気配感知Lv.2

・多重行使Lv.2・解体Lv.1・反射神経強化Lv.1




「……これで勝てるのか?」


レベルを上げたので、ステータスも上昇した。しかし、これで半彩化に勝てるかと聞かれたら首を横に振る。


「いや…今度は独りじゃないんだ」


今回はラウレーナとルシエルも居る。3人で協力すればあの半彩化にも負けないと自信を持って言える。


「今度は絶対に逃がさない。殺ってやる…!」


俺はそう意気込みながら眠りについた。

そして、体を休めながら作戦会議や少しポーション類を買い足していると、すぐにその時がやってきた。



「では、出発するぞ!」


南門の前で集まった100人以上の冒険者らの先頭に立ったギルド長が声を張り上げる。


「その前に今回の現況の半彩化に関しては不撓不屈の魂以外のBランクパーティ以下の冒険者は戦うことを禁止する!ただ、死にたいのなら構わないぞ。もし死にたくないのなら、出会ったらすぐに逃げて俺の元まで報告に来い!

そして、主に半彩化討伐に動くのは疾火気炎と不撓不屈の魂の2パーティだ!とはいえ、チャンスがあったらAランクパーティは攻撃しても良いとする」


やはり、半彩化に当たるのは合同になったな。ただ、合同とはいえ半彩化の担当に選ばれたことと、合同相手がザックスらなのは不幸中の幸いと言えるだろう。


「では行くぞ!!」


「「「おうっ!!」」」


その掛け声で俺達は巣へと向かおうとする。


「頑張れよ!」

「街をよろしく!」

「帰ってきたら酒場は無料にしてやるぞ!」


向かう前に街の中からはそんな声が聞こえてくる。さすがにこんな大掛かりな緊急依頼を隠すのは無理で、街の人にも半彩化の魔物が現れた程度のことは伝わっている。

俺は改めてその半彩化を逃がせられないと実感した。



「一旦今日はここで夜営とする!」


アリの巣へは2日間で向かう。距離的には1日でも行けるらしいが、疲れを残さず昼前から攻撃を仕掛けたいため、少し離れたところで夜営をするのだ。



「俺らと一緒になったな」


「そうだな」


その時に俺はザックスらとの近くにテントを張り、少し話していた。移動中はザックスらはギルド長のすぐ後ろで俺達とは少し距離があって話せなかった。


「正直あれに空を飛ばれたらヌルヴィス頼りになってしまうが、よろしくな」


「こちらこそ」


俺達はそれからも交流をするように話してからテントの中で眠った。ちなみに、俺達とザックスらとAランクパーティは見張りから免除されている。



「出発!!」


そして、次の日の早朝、俺達は巣へと向かって歩き出した。




「あ、あれが巣か……」


俺達は予定通りに昼前に巣へと到着した。

その巣は地面に大穴が空いているようにしか見えない。これは自力で見つけるのは無理だな。


「では、魔法の詠唱準備!」


まずは魔法職達で巣の中を魔法で攻撃してから討伐作戦はスタートする。魔法職らは杖を構えていつでも詠唱できるように準備をする。


「詠唱かい…」


「っ!待て!!周りから魔物が大量に向かってきている!」


「何!?」


恐らく、この中で1番気配感知のスキルレベルが高い奴がギルド長の言葉を遮って叫んだ。その後、少しして俺の気配感知にも反応が出てくる。


「……罠だったのか」


よく考えれば、気配を殺すのが上手い密偵すら誰ひとり戻って来ないのに、普通の冒険者が帰ってきたのは不自然だ。俺達はここに来るように仕向けられたのだ。

生き延びて情報をもたらしてくれた事が嬉しく、その辺を考えていなかった。……いや、罠と分かっていたとしても、情報がこれしかない俺達にはこうするしかないのかもしれない。もしかすると、ギルド長もそれを考慮してたかもな。


「「「キシャキシャ……」」」


俺達の周りを余裕で100は越えている二足歩行のアリのような魔物達が取り囲む。そのアリ達もよく見ると、それぞれ大きさや特徴が違ったりしている。


「………」


魔物達は俺達を取り囲んでも何もしない。

まるで何かを待ってい……


「っ!!?」


俺は危険感知が反応し、全力で身体強化を行って大鎌をその反応の場所へと向ける。


「キシャッ♪」


「ぐっ……!」


「ヌルヴィス?!」

「主?!」


俺は上空から急降下して向かってきた魔物によって掬い投げられ、囲んでいる魔物達の上を越えて遠くまで飛んでいく。



「くっつつ…」


空中で体勢を立て直して、さっきは間に合わなったその他の強化も行って俺は地面に着地する。

今ので俺を殺す気はなかったからか、腕が少し痺れた程度で特にダメージは受けていない。とはいえ、何もせずに食らっていたら俺の脇腹は裂けていた。


「キティキティ♪」


俺が立ち上がった頃、俺の前に上機嫌そうな半彩化が空から降りてくる。

半彩化は相変わらず右腕が無く、爪も前よりは緑色に染まっているが、爪の先まではまだ染まっていない。


「キシャ」


俺が警戒している中、半彩化は自分の無くなった右腕を指差す。その次は俺の事を指差す。そして、最後は自分の首を掻き切るような仕草をする。


「こいつ……」


こいつは右腕の借りを返すために俺を殺すとでも言いたいのか?それをジェスチャーで伝えられるなんて、どれだけ知能が高いんだよ…。

もしかすると、逃げる前に俺を指さしたのは、ロックオンしたとかそう意味だったのかもしれない。


「今度はお前の腕じゃなくて首を斬り落としてやるよ!」


「キシャキシャキシャッ♪♪」


半彩化はまるで俺の言葉の意味を理解して笑うようにそう鳴く。

魔物らに囲まれていたからラウレーナとルシエルはすぐにはここに来れないだろう。最低でも2人が来るまでは俺はこいつの相手を独りでするしかない。

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