第352話 合流

「2人とも!」


俺は振り返って2人の姿を見た瞬間に思わず2人に抱きついた。


「わっ!ど、どうしたの?」


「あ、主…?何かあったのか?」


「あ、ごめん…」


2人の声が耳元から聞こえたことでようやく冷静なり、2人に回した腕を離れさす。


「ちょっと困ったことになっててな。2人を待ってたよ」


「何?借金でもしたの?」


「してないわ!」


ラウレーナのその軽口すら精神的に追い詰められていた俺には嬉しいものだった。


「主…とりあえずこの場から離れんか?」


「ん?あっ……」


大通りで突然異性の2人に抱きついたため、俺達は通行人から多少の注目を浴びていた。種族柄あまり注目を集めたくないルシエルにとっては嫌な状況だろう。


「ごめん、とりあえず俺のいる宿に行こうか」


人目を避けるために俺達は俺の宿に移動することにした。



「それで短い1ヶ月ちょっとでどんな問題を起こしたの?」


「そんな人をトラブルメーカーみたいに言わなくても…」


その言い方だと俺は進んでわざとトラブルを起こしているように聞こえてしまう。


「でもヌルヴィスと一緒にいるとトラブルが絶えないよ?」


「それは置いておいて!何が起こってるか説明するよ!」


どの街でもトラブルが起こっているのは否定できないので、その話は避けることにした。2人も何が起こっているのか気になるのか、話をそらされてくれた。

俺はアリの巣での出来事、半彩化の魔物、行方不明者が現れ始めた、レベル上げの行き詰まりなどを順々に話した。




「……それはまずいのじゃ」


「正体不明の半彩化の魔物ってだけでもヤバいのに、それが増えるって最悪だね」


2人は俺の話したことの深刻さが分かってくれたようで、眉間に皺を寄せている。


「そう考えると、ヌルヴィスが片腕を取ったのはせめてもの救いかもね。彩化したとしても片腕が無いだけでかなりのアドバンテージだよ」


「それに攻撃手段や大体の能力のバランスが分かっておるのも良かったのじゃ」


「あ、ああ」


2人が俺を慰める気でその発言をした訳では無いのが真剣に考え込んでいる顔で分かる。


「高速で飛ぶ魔物が相手な以上、ヌルヴィスが強くなるのは必要じゃ」


「飛べないようにしないと他のみんなは戦えないわけだしさ」


もう俺のことを抜きにして2人で会話を始めている気がする。状況を分析しているだけだから俺を意図的に除外している訳では無いよな?

というか、2人の仲が前よりも深まっているように見える。魔道国では2人(ルイを入れたら3人)で過ごしていたからか?



「えっと、ワイバーン討伐をしてるんだっけ?明日からは僕達も一緒に行って手伝うよ!」


「とは言っても、余は魔法を放つくらいしか手伝えないがな」


「ありがとう。助かるよ」


地上に落とした奴を相手してくれるだけでもかなり助かる。2人がいるならワイバーンを2体同時でも相手にできる。最悪俺が空中で攻撃を食らって地面に落ちても2人がいるなら回復するまで守ってもらえる。


「僕達もそろそろレベル上げをしたいからね」


「余が1番レベルが低いからレベル上げは嬉しいのじゃ」


もしかすると、俺のレベル上げよりも2人のレベル上げになるかもしれないが、俺があの半彩化と戦う時には2人もいるのだからそれは好都合だ。

もし仮に俺のレベル上げにならなくても、2人のレベル上げになるなら、少し前のまでのように狩っている意味があるのか分からなくはならないから気持ち的にも楽だ。


「じゃあ、明日からよろしく!」


「うん!」

「じゃ!」


こうして明日からは2人と共にワイバーンを狩りに行くことになった。様子を見てだが、上手くいくのなら6日間くらいは狩りを続けようと思う。本当はもっと続けたいが、ギルドに半彩化の情報を確認しないといけない。


ちなみに、2人の宿も部屋が空いていたので俺と同じ宿にした。



「あーあ。せっかくヌルヴィスに勝てるように特訓したのにな」


「余も主を完封できるように特訓を頑張ったのに、この異常事態ではそれを試せんのじゃ」


「うえ!?」


夜にはそんな恐ろしいことを言われ、ほんの少しだけ半彩化に感謝してしまった。

そういえば、2人は強くなるためも主な目的だが、学校長に俺を倒せるような特訓もしてもらったんだよな…。その特訓の成果は俺に試す前にワイバーンや半彩化に是非試してもらいたい。そうすれば、どんな技なのかは見れるから少しは対策が……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る