第350話 ワイバーン狩りの成果と問題点
「ぐぅぅ……」
俺は激痛の走る脇腹を抑える。俺は脇腹にワイバーンの振った尻尾を食らって吹っ飛んだ。ワイバーンも既に重傷と言えるダメージを受けているが、立て上がれない俺に向かってきている。
「暗がり、轟け!」
俺は腕を何とか動かして回復ポーションを取り出しながらも、寝転んだまま詠唱を始める。
「ダークサンダーサイズ!」
俺の残りの魔力の大半を使った魔法は機敏な動きができないほど弱ったワイバーンの首に迫る。そして、魔法は大鎌で仕留め損なった時にできたワイバーンの首の傷を通ってスパッと首を落とす。
「……危なかった」
このワイバーンは今日3体目のワイバーンだった。ただ、このワイバーンは今までのワイバーンと違って一回り大きかった。その分力と耐久力強く、攻撃を食らってしまったのだ。まだ弱った時の攻撃だから魔法を放つ余裕があったが、地上に降りた瞬間に攻撃を食らっていたら意識を失っていたかもしれない。
「ごくっ…」
俺は取り出した回復ポーションを飲む。立つことができないことからあばら骨だけでなく、背骨も少し傷付いてそうだ。でも内臓が溢れ落ちてはないので、中級ポーションで何とか治りそうだ。でも背骨が完全に折れていたら上級ポーションじゃないと厳しいかもしれないが。
それと、新しい防具は斬撃や刺突には強いが、打撃系はあまりダメージを軽減してくれないな。まあ、軽装で斬撃と刺突を防いでくれるだけでもありがたいのだけど。
「奥に行けば行くほどワイバーンも強くなるな…」
ワイバーンも生存競争があるのか、奥に行けば行くほど大きく強い個体がいる気がする。浅い場所にいるのは奥の奴に負けて追いやられた個体なのだろう。
「…さすがに今日はこれで終わりだな」
移動に時間をかかったこともあり、もう夕方近い。それに今攻撃を食らったように集中力を切れかけている。今日はワイバーンとアースドレイクの中間地点の魔物があまりでない場所に行って夜営をしよう。
「……生活魔法が恋しい」
今日はかなり動いたし、吹っ飛ばされて転がったりもした。だから汗や砂や返り血などでそれなりに汚れている。でも俺に生活魔法が無いせいで身体を綺麗にできない。あるのか分からないが、生活魔法の魔導具を用意しておくべきだった。ラウレーナやルシエルが使えるからあの時は気にしていなかった。
「明後日には帰ろう」
本当はギルドに集合となる1週間はここに居るつもりだったが、さすがに体を綺麗にしたいから帰ろう。
「ドレイクを討伐する人に生活魔法を頼むのは…無しだな」
自分で言うのも何だが、こんな場所に若僧が1人で居て生活魔法をねだってくる状況はかなり不信だろう。余計なトラブルの種は起こさない方がいい。
ここは岩場なので、水もないし身体を洗えないが、我慢するしかない。
「はあっ!」
次の日、今日7匹目のワイバーンを狩った時だった。
「おっ!」
体に変化があってステータスを見てみる。
「よし!レベルが上がった!」
レベルが1つ上がっていた。約1レベルでワイバーン10体か。まあ、次のレベルは経験値がさらに必要になるからもっと狩らないといけなくなるだろうけど。
とはいえ、ワイバーンの動きにも慣れて怪我も少なく何体も狩れるようになった。
「今日はこの辺にして帰るか」
昨日と同じく今日はもう夕方近く、帰るなら暗くなる前にアースドレイクの場所は通り抜けたいからそろそろ帰り始めないと駄目だ。
「さて、帰ろう」
今さっき仕留めたワイバーンをマジックポーチにしまって俺は帰るために走り出した。
「…ちょっと狩りの仕方を考えないとまずいかもな」
走りながら俺はワイバーンの狩りについて考えていた。奥へ行くと、オスとメスのペアなのか、2体でいるワイバーンが多くなった。1体だと思っても、すぐにもう1体が来たことで、慌てて逃げることも数回あった。きっと数日経てば外側にぼっち個体も増えるだろうが、続けてワイバーンを討伐できる日は2日となってしまう。
移動往復1日弱かかるのを考えると、あまり効率は良くない。
「2体でも殺れる方法を考えるしかないか」
正直、ワイバーン相手に1対2で勝てるとは思えない。地上で飛べないワイバーン2体と戦うのも無理だ。ラウレーナとルシエルが居てくれたらそれも問題なくなるのにな。
「2人が来るまで待つか……」
2人が来るまでは今日のように2日続けてワイバーンの狩りをすることとしよう。
ちなみに、このまま帰っても夜遅くになりそうだったため、低ランクの魔物しか居ないような場所の木の上で眠り、次の朝に街へ帰った。そして、屋台で料理を多めに買うついでに屋台の人に生活魔法をやって貰った。その後は宿に帰ってぐっすりと再び眠った。
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