第341話 女王アリ
ドゴンッ!
「おっ、来たか」
遠くからでもミリーの魔法が恐らくアリ達に炸裂した音が聞こえてきた。これが俺の突入の合図である。
「入口はここだな」
蟻塚には巨大なアリ達が出入りできる穴がちゃんと空いている。今回はあくまで隠密行動なので、この蟻塚は破壊しない。
「よしっ!」
俺は意気込んで蟻塚の中、つまりアリ達の巣の中に入っていく。
「下を目指そう」
女王は大体1番下にいるらしいので、横に逸れずに真っ直ぐ下を目指す。巣は縦穴に対して、横にアリ達がいる部屋がある形なので、あまりアリに出会わずに進める。
今回は遠慮はいらないので、雷身体強化や闇魔装を行っている。
「ギッ…」
「しっ!」
とはいえ、途中で何度かアリとすれ違うことにはなるが、声を出させず斬り殺す。
「カシュカシュカシュ……」
「何だこの音?」
10分ほど下に降りると、変な音が聞こえてきた。気にする必要は無いかもしれないが、音のする部屋を一応中をそっと…覗いてみる。
「っ!?」
その部屋にいたのは大量のアリの幼虫だった。この部屋だけでも100はいる。また、他の部屋からもこの部屋と同じく音がしているので、この部屋が何部屋もあるのだろう。また、幼虫でもサイズは1m以上ある。もちろん、それを世話しているアリも数体中にはいる。
「……後にしよう」
この幼虫を殺せば成虫となるアリも減るが、この数を虐殺すれば必ずアリ達に気付かれる。そうなったら、俺は女王に辿り着く前に逃げることになるかもしれない。あくまで俺のターゲットは女王なのだ。
俺は大量の幼虫を無視して下へと進む。
「ここが最下層か」
ついに縦穴の一番下に到着した。そして、そこから人が腕を横に広げても余裕で10人は並べるような巨大な空間が奥まで伸びている。きっとこの先に女王がいるのだろう。俺は慎重に奥へと進む。
「っ!」
光るコケがあるおかげで薄暗い巣の最奥で、俺は女王アリと思われるアリを発見する。女王アリは10m近い巨体のアリで、腹部が異様に長い。そのため、歩き回るのはほぼ無理な体型であろう。
その周りには兵隊アリや普通のアリがうじゃうじゃいるが、問題はそこじゃない。
「……なんで女王アリが2体いるんだよ」
俺の視線の先には女王アリが2体いるのだ。2体いるなら前情報よりも数が多いのも納得だ。
「…ん?」
前にいる1体はポコポコと卵を産み続けている。だが、後ろにいるもう1体は前の女王アリよりも腹が圧倒的に膨らんでいるのに卵を産んでいない。それどころか全く動いてすらいない。その張り裂けそうな腹の中には何が入っているんだ。
「しっ!」
奥にいる女王アリに嫌な予感がした俺は全力で駆け出す。
「闇れ!」
そして、ストックしていた闇魔法のダークサイズを奥の女王アリに向けて放つ。
「キシャキシャ…」
「ちっ…!」
しかし、それは普通のアリや兵隊アリが重なり合ったアリの壁によって阻まれる。
「キィィィィ!!!」
「「「キシャッ!!」」」
前の女王が金切り声で叫ぶと、周りのアリ達が侵入者である俺を排除しようと一斉に向かってくる。
「邪魔だ!暗がれ!ダークサイズ!」
俺は向かってくるアリを魔法で一掃する。やはり、俺はこのアリの集団に対して相性がいい。正直、ミリーの魔法はアリに対してオーバーキルなのだ。
「シャペッ!」
前の女王から変な音がし、危険感知が反応するから距離をとる。俺が避けた場所に何か液体が落ちる。女王はこれを吐き出したのだろう。
シューーー……
その液体は白い煙を出しながら地面を溶かす。これは当たったら不味いな。
「暗がれ!ダークサイズ!」
俺はどんどん周りのアリ達から仕留めていく。もう既にアリ達の残りの数は半分を切っている。
「轟け!サンダーランス!」
俺は今なら狙えると確信し、奥にいる女王の腹に雷魔法を放つ。雷魔法は速い魔法なので、残り少ないアリ達が重なり合う時間は無く、防ぐことは無理だった。
ガキンッ!
「…はあ?」
しかし、その魔法は防がれた。前にいる女王アリによって。前の女王アリは胸を怪我してまで奥の女王アリ庇ったのだ。
「その腹に何を隠してるんだよ!」
より一層の奥の女王アリが恐ろしく感じる。産む時は卵のはずだが、それでも産む前に殺すべきだろう。
「暗がり、轟け!ダークサンダーランス!」
俺は複合魔法で女王の周りのアリ達をほぼ殲滅する。
「しっ!」
そして、奥の女王に向かって急いで駆け出す。しかし、それを遮るように前の女王アリが俺の前にのそっと移動する。
「シャペッ!」
女王アリが酸を吐き出してくるが、それを避ける。警戒していればその攻撃は対して脅威では無い。
「サイズ!」
「キィィィィ!!!?」
目の前の女王アリの腹を無属性魔法で裂く。
絶叫する女王アリに向かってジャンプをしながら、俺は闇身体強化と無属性付与を行う。
「はあっ!」
「キィィ……」
俺は大鎌で女王アリの頭を落とした。全力強化をしていたが、女王アリの首は硬く、斬るのに強い抵抗を感じた。この大鎌ではなかったら斬れなかったな。
後ろを気にして巨体を活かして暴れられない女王アリは大して強くなかったな。
「しっ!」
俺は倒れようとしている女王アリを蹴り、肝心の奥の女王アリへと向かう。奥の女王アリの頭の上を通過するが、女王アリはなんの反応もしなかった。
「らあっ!」
俺は奥の女王アリの異様に膨らんだ腹を斬ろうと大鎌を振り下ろした。
ガキンッ…
「……くそっ…遅かった…」
しかし、俺の大鎌は女王アリの腹を突き破って生えてきた鉤爪に防がれてしまった。
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